
数あるBLACK SABBATHのコレクターズ音源中でも屈指の問題音源がまさかの登場です。SABBATHは「HEAVEN AND HELL」リリース後の7月から10月にかけて約3ヶ月のアメリカツアーを行い、全米の各都市でクオリティの高いショウを披露してきました。本作はその後半にあたる10月9日のウィスコンシン州・ミルウォーキー公演を、ステージから若干の距離感はあるものの、クリアネス・会場の空気感ともに絶好のコンディションで収録しています。このミルウォーキー公演は当初何事もなくスタートしたのですが、2曲目の「Neon Knights」が終了したあたりで、ギーザー バトラーが客席から投げ込まれたボトルによって負傷し、演奏は中断。結局そのままショウはキャンセルになってしまいました。これに腹を立てた観客が暴徒と化して会場を破壊し、街全体を巻き込んだパニックに発展したという、いわく付きのショウです。この録音は海外で流通していたSABBATHのレア音源集「Chaos Seeds」に問題の暴動シーンのみが収められていたそうですが、今回登場した本作は暴動が発生する以前の「Supertzar」から収録された初の完全版で、約25分間のみではありますが、当日の演奏全てと暴動の一部始終、そして会場の外における騒然とした雰囲気を丸ごと捉えた、歴史的に大変貴重な音源です。バンドにとってはこのショウが大変な出来事になるなど考えもしなかったでしょうが、録音者にしてみても自分の録音がライヴではなく重大な事件の証拠になるなど、予想だにしなかった事でしょう。オープニングの Supertzarから War Pigs、そして Neon Knights までは普段のSABBATHらしい活気に溢れた演奏を繰り広げています。会場のファンもロニーへ熱烈な声援を贈っており、このまま無事にショウが進行すれば、この音源はツアー中を代表する優良なオーディエンス録音として位置づけられたかも知れません。その事態が一変するのは Neon Knightsの終了後です。ロニーが「N.I.B.」の曲名をコールした直後、ステージ上で何かが倒れる音を確認できますが、ギーザーが負傷したのはまさにこの時なのかも知れません。ギーザーの回想によれば、彼が「N.I.B.」のイントロを始めようとした時、頭を打たれたような衝撃を感じ、さらに出血しているのに気づき、ステージから楽屋へ連れて行かれたそうです。異変に気付いたロニーが「明りをつけてくれ」とMC。その後、今度は観客に対し、怒りながらも冷静な口調で「ステージはゴミ箱じゃないんだ」と抗議します。最後に"Tough shit"と言う強めの言葉を使いながらも、この状況で、冷静なムードで対応するロニーは、やはり流石の人格者と言えるでしょう。バンドがステージから去った後、ツアーマネージャーが観客へ「ギーザーが負傷して演奏が不能になった」と言ってショウの終了を告げますが、結果として、これが暴動の引き金になってしまいます。ここから発生する暴動の凄まじさは、なまじ録音が優れているだけに、生々しいサウンドで聴く者に迫ってきます。イスが飛び交い床にたたき付けられる様子、何かが砕ける雑音に絹を裂くような女性の悲鳴、そして非常ベルとパトカーのものものしいサイレン…。騒動の真っただ中にいるテーパーにとっても、これは何の誇張もなく命がけの録音だったのではないでしょうか。バンドの歴史を語る上でも重要な1枚と言えるリアルなドキュメント・タイトル。これは必聴です!
Live at Mecca Arena, Milwaukee, WI. USA 9th October 1980 AMAZING SOUND
1. Supertzar 2. War Pigs 3. Neon Knights 4. Ronnie Speaks 5. Sabbath Tour Manager Speaks~Show End 6. Riot #1 7. Riot #2
Tony Iommi - Guitars Ronnie James Dio - Vocals Geezer Butler - Bass Vinny Appice - Drums Geoff Nicholls – Keyboards