
「Your Mother Wouldn't Like It!」(キミのお母さんがいい顔しないかもよ!)というアナウンスから始まるのがレッド・ツェッペリン1975年5月24日、アールズ・コートの印象的な場面。そもそもZEPのアールズ・コートと言えば一番最初にアイテムがリリースされたこともあり、5月24日の印象はとても強い。多くのZEPマニアにとって、アールズ・コートと言えばこの日を浮かべる方がほとんどかと思われます。ペイジが黒いドラゴン・スーツをまとい、ライブの終盤では「LED ZEPPELIN」という文字が大きく掲げられた、アールズ・コートならではの雰囲気。それが味わえるようになったのは21世紀を迎えてからの事で、以前から存在していることが明らかになっていた24日のライブ映像が今ではすっかり知れ渡り、それまで写真でしか見られなかったアールズ・コートの全貌がすっかり明らかになってしまいました。振り返ってみれば、その映像の音声がアールズ・コートのサウンドボード録音として登場した時の衝撃は本当に大きかった。懐かしのコンドルCDを皮切りとして、以降24日のショーはサウンドボード録音が当たり前となりました。さらに映像の登場と共に、21世紀に入ると24日のサウンドボード録音はクオリティが飛躍的な向上を遂げます。それはもう、75年のビデオ音声サウンドボードとしては最高級と言っても過言でないほどのクリアネス。それに鮮度も素晴らしかった。それに釣られたかのごとく、25日の音源と映像までもが発掘された上に映像の方まで一気にアップグレードして現在に至ります。元々75年ZEPライブのスタンダードであったアールズ・コート24日ですが、そのサウンドボード録音は世界中のマニアの間で揺るぎない定番と化しました。元がモノラルのビデオ音声サウンドボードですので、もちろんオフィシャル「LED ZEPPELIN DVD」の域には及びません。しかし、同じ75年のZEPライブでも、1月から3月のアメリカ・ツアーとはまったく違う雰囲気の演奏を聴かせた5月のアールズ・コート・ショー、そのステージの全貌がここまでの音質で楽しめるという魅力、それはあまりにも大きい。むしろ、ここで聴かれるZEPのじっくりと演奏を聴かせるステージングと、その見事なクリアネスを誇るモノラル音声がぴったりとマッチしているようにすら思える。当店がリリースしたばかりの「MADISON SQUARE GARDEN 1st NIGHT」リリース時に述べたように、アメリカ・ツアーは長期に及んだ上、しかもプラントやペイジの体調不良を押してのツアー決行という、波乱含みな要素が強かった。その結果が起伏に富んだインプロビゼーションの駆け引きや、いい意味でムラのある演奏に現れたのでしょう。全体的にアメリカ・ツアーの演奏は仕掛けが多いインプロや派手目な展開がエスカレートした結果とも言えるのですが、その点アールズ・コートでのZEPはびっくりするくらい、じっくりと演奏しているのです。一番顕著なのはボンゾで、ショーを通して仕掛けの多いドラミングを聞かせているのですが、それでいて所謂「暴走」と言う展開にならない、ここがポイント。つまり、テンションが低いということは決してはなく、仕掛けや遊びを随所に盛り込みつつも、LA辺りで見られたようなアンサンブルを乱しかねないような展開にならないということ。これをクリアネス抜群なサウンドボード録音で聴いていると、本当に気持ちがいい。アメリカ・ツアー終盤においては、何と40分にまでエスカレートしていた「Dazed And Confused」も30分以内という範疇に収まり、75年らしいグルーブ指向のインプロビゼーションの駆け引きをスカッとするような気持ちよさで繰り広げていたのがアールズ・コート後半のショーにおける魅力でしょう。移動だけでなくステージ以外の問題や誘惑(ドラッグなど)大なり小なりストレスを免れられないアメリカ・ツアーと違い、母国イギリスでの小規模なスケジュールで、じっくりステージに打ち込める環境が二か月でこれほどまでにZEPの演奏を豹変させたのです。 そんな24日のステージを捉えたビデオ音声のモノラル・サウンドボード録音のベスト・クオリティが登場してから早十年以上が経過しました。音質的には頂点を極めた感がある音源ですが、この日に関して言えば「Going To California」を中心としたアコースティック・パートの欠損、さらには「Stairway To Heaven」の途中で音質が劣化する問題は未だに解決されていません。特に「Going To California」に関しては、ビデオ・テープの交換に当たって録画されなかった公算が高いように思われます。何しろ長丁場なアールズ・コート・ショーを完全収録するのは容易なことではありません。それ以上に、この日の完全収録ライブ・ビデオを出そうなどと言う考えもなかったのでしょうから。その反面ボンゾのドラミングが冴えまくり、しかも彼に支えられるかの如くペイジのギター・ソロも映える「Stairway To~」の音質変化は惜しまれるところ。正にアールズ・コートならではのスカッとした演奏の典型がそこにあったのです。今回のリリースにおいても、それらの欠点は変わらず、過去のアイテムと同様のアジャスト(「Going To California」はオーディエンス録音)に留まっていますので、その点においては物足りないかもしれません。しかし今回のリリースにおいては、海外のファンが改めてリマスターしたバージョンを収録。元がモノラルのビデオ音声ゆえに感じられる平坦さを程よく解消、さらにビデオ音声だからこそ入ってしまうノイズなどを徹底的に削除し、元々のクリアーな音質に磨きをかけたものです。もちろん純然たるアッパー版とは趣が異なる音源ですので、マニアからすれば物足りない感は否めないでしょう。しかしデストロイヤーや929と並ぶ定番サウンドボード録音のアールズ・コート24日がさらに聴きやすくなったバージョンという点において、すべてのファンに自信を持っておすすめできる状態に進化しています。それは嫌味なイコライズではなく、ナチュラルに明るく広がりを増した音質。特にスピーカーから鳴らすとこの仕上がりの良さが実感できます。
Live at Earl's Court Arena, London, UK 24th May 1975 SBD
Disc 1(57:38)
1. Introduction 2. Rock And Roll 3. Sick Again 4. Over The Hills And Far Away 5. In My Time Of Dying 6. The Song Remains The Same 7. The Rain Song 8. Kashmir
Disc 2(61:57)
1. MC Intro 2. No Quarter 3. Tangerine 4. Going To California 5. That's The Way 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. Trampled Underfoot
Disc 3(63:50)
1. MC Intro 2. Moby Dick 3. Dazed And Confused
Disc 4(33:58)
1. MC Intro 2. Stairway To Heaven 3. Whole Lotta Love 4. Black Dog