
前回はZEPライブの鮮度が抜群だった時期、1970年の音源二種のリリースで好評いただきましたが、今回は1972年上半期ZEPのレア・ライブ音源をリリースいたします。72年と言えば、それまで気の赴くままワイルドに歌っていたロバート・プラントの声が本格的に衰え始めた一年となってしまったのですが、それ故にまだまだバンドの演奏力が若々しい瞬発力を保っていた時代と、プラントの変調という現実が折り重なった状況がサウンドに反映され、一年を通しても変化に富んだ一年として、非常に面白いものです。当然ながら、この一年の中でもっとも輝かしい時期は夏のアメリカ・ツアーでしょう。当店からも名演中の名演となったLAフォーラムを始め、ナッソー・コロシアム二日目、さらには伝説のシアトル・マラソン・ショウなどをリリースしてまいりました。結果としてこのツアーはプラントが従来通りのスクリームをプラントが披露できた最後のツアーとなってしまった訳ですが、このツアーを開始する前、ZEPは渡米前のウォームアップ・ギグを行っています。まず72年のZEPは2月にオーストラリア・ツアーを行っていますが、その時でもプラントの調子に陰りが見え始めています。その後はアルバム「HOUSES OF THE HOLLY」のレコーディングが本格的に始動し、6月からのアメリカ・ツアーを前に行われたウォームアップ・ギグとなった今回リリースの二公演は久々のライブ・ステージということになります。それと同時に、これら二公演の音源はどちらも演奏内容、音質共になかなか優秀な音源でありながら、すっかり見過ごされた二日間であると言えるでしょう。 やはり72年は6月のアメリカ・ツアーの印象が鮮烈で、しかもウォームアップ・ギグという性質、つまり本番前の肩慣らし的なライブという位置づけがそれに拍車をかけているのかもしれません。確かにここで聴かれる5月27日のアムステルダム、28日のブリュッセルは共にオープニングの「Immigrant Song」でプラントの声がどうにも伸びないのです。そこから数曲で彼の声が苦しそうな場面が散見されるのも同様でした。本人からすればこの時点では「久しぶりのライブだから声が出ないのか」くらいに感じていたのではないでしょうか。特にブリュッセルでは前日以上に声のエンジンのかかりが遅く、「Black Dog」まではメロディをかなり下げて歌っているほどです。しかし、そこから復調すると途端にプラントの若々しいスクリームが響き渡るのもこの時期ならでは。アムステルダムでは「Celebration Day」でもプラントの声が苦しそうなだけでなく、彼が構成を派手に間違えそうになるというハプニングまで起きていますが、そこをプラントが踏みとどまってくれて収まっただけでなく、ペイジの流麗なプレイに舌を巻く思いです。しかしプラントの調子を反映して後のアメリカでも当店がリリースしたシャーロットでしか取り上げられなかったのかもしれません。そこでもやはり、プラントが苦しそうに歌っていました。 このことからも解るように、プラント以外の三人の演奏グルーブは71年の発展形といった瞬発力があり、ヘビーなリズム指向への変化が始まる73年とはまったく違います。中でもペイジのプレイのスムーズな展開は71年の側に属するものだと言えるでしょう。だからこそ、アムステルダムでは「Stairway To Heaven」がこれから演奏の盛り上がるところで録音が途切れてしまうのが何とも惜しいところですが。 両日を通して「Dazed And Confused」の展開はこれぞ過度期というもので、既にこの時点でボンゾが「The Crunge」のリズムを叩いているにもかかわらず、ペイジはそれをスルーしてしまいます(笑)。これがアメリカ・ツアーとの大きな違いでしょう。それでも両日でのペイジのなめらかなフレーズや余裕に溢れたプレイには素晴らしいものがあります。特にブリュッセルでは「Since I've Been Loving You」の前で空いてしまった間に対し、手拍子でせかそうとする観客をマーチ調のフレーズで手玉に取ってみせたり、あるいは「Heartbreaker」のソロが終わるところ、ほんの一瞬ではありますがクラプトン風に「Steppin’ Out」のフレーズを弾こうとするほどの余裕を覗かせてくれたのです。それにアムステルダムで演奏された「Moby Dick」をブリュッセルでは省き、反対にそこではアコースティック・チューンが増量といった構成の違いがはっきりしているところも楽しいもの。特にアコースティック・コーナーではプラントが観客の騒がしさに対してナーバスになりつつも、完全に復調して非常に伸びやかな歌を聴かせてくれます。さらにこれら両日の音源の存在だけでなく、共に意外なほど聴きやすい音質であることを見過ごされている方も多いのではないでしょうか。アムステルダムはかなりオンな音像と、ビンテージなアナログ・サウンドが魅力です。その点ブリュッセルはややディスタントな音像ですが、クリアネスや鮮度においてアムステルダムを上回り、ライブ終盤の「Whole Lotta Love」メドレーのプレスリー大会などがこれまた驚くほどのクリアネス(演奏が後半に差し掛かったところでカットされてしまうのが残念ですが、ここでもペイジのプレイが絶品です!)を持って堪能できるでしょう。もちろん古くからリリースされてきた音源ではありますが、今回はどちらもマスター・カセットから収録されたバージョンを元にして音源を丁寧にレストア。どちらもピッチを正確にアジャストしただけでなく、極めてナチュラルな状態での収録ともなっています。そして今までありそうでなかった、両日をカップリングしたセットという点も今回の大きなリリース・ポイントとなっています。アムステルダムの生々しい音質、ブリュッセルのクリアネスを最高の状態でカップリングしたCDセット。まだまだフットワークが軽い時期の演奏と、序盤の不調から立ち直ったプラントのスクリームが冴えるウォームアップ・ギグの決定版です! Oude Rai, Amsterdam, The Netherlands 27th May 1972
Oude Rai, Amsterdam, The Netherlands 27th May 1972 Forest National, Brussels, Belgium 28th May 1972Oude Rai, Amsterdam, The Netherlands 27th May 1972
Disc 1 (44:15)
1. Intro 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Black Dog 5. Since I've Been Loving You 6. Celebration Day 7. Stairway To Heaven 8. Bron-Y-Aur Stomp
Disc 2 (75:44)
1. Dazed And Confused 2. What Is And What Should Never Be 3. Moby Dick 4. Whole Lotta Love 5. Rock And Roll 6. Communication Breakdown
Forest National, Brussels, Belgium 28th May 1972
Disc 3 (62:17)
1. Intro 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Black Dog 5. Since I've Been Loving You 6. Stairway To Heaven 7. Going To California 8. That's The Way 9. Bron-Yr-Aur Stomp
Disc 4 (54:15)
1. Dazed And Confused 2. What Is And What Should Never Be 3. Whole Lotta Love Medley (incl. Boogie Chillen', Hello Mary Lou, Running Bear, Lawdy Miss Clawdy, Heartbreak Hotel, That's All Right Mama, Don't Be Cruel, Going Down Slow)