
「今週当店がリリースするのは「DESTROYER」です」…そう言えば大抵のマニアの方には、それが何を意味するのかを瞬時に理解してもらえることでしょう。それくらい、このタイトルはZEPライブ音源の中においても、タイトルだけで内容や年代が浮かんでしまう超ポピュラーなライブ・レコーディング。1977年ツアーの典型的サウンドボード音源の古典中の古典と呼べるもの。それどころかZEPマニアでなくとも、ロックのレア音源をコレクトされている方であれば「DESTROYER」と聞いただけで、それがZEPを指すものであることを、これまた理解されるはず。ZEPのライブ音源リリースにおいて、大阪929という金字塔があります。よって「DESTROYER」がZEPライブの流出サウンドボード音源リリース第一号という訳ではありません。こと日本においてはなおさらというもの。しかし、それ以前からラジオ音源の恩恵を受けて広まっていた71年BBCや929以来のサウンドボード音源であり、なおかつ(929と違い)ZEP側が記録用にミキシング卓から録音していたサウンドボード録音が登場したという点において、この「DESTROYER」は非常に画期的なリリースでした。特にアナログLPの時代、この音源がリリースされた衝撃はあまりにも大きかった。完全収録とまでは行かなくとも、1977年ツアーの全貌を収めてみせたサウンドボード音源がリリースされるだなんて…世界中のZEPマニアを感嘆させ、瞬く間に定番の座へと君臨したのです。マニアの間ではよく知られているところですが、まず「ヨーロピアン・デストロイヤー」というボックス入りアイテムが登場し、その後はアメリカ方面からコピー盤が数多く輩出されたものです。日本のZEPマニアからすると、オリジナルの「ヨーロピアン」よりも、その後にアメリカからリリースされた「SWEET JERRY ROLL」や白黒写真を使った三枚組ピクチャー盤セットといった、それのコピー盤の方に、むしろ馴染みがあるかもしれません。意外なことに、CD盤「DESTROYER」リリースに関しては、長いこと決定版が現れなかったことも今となっては懐かしい思い出として映ります。リリース当初はLP時代の音質を大きく上回るとして話題を呼んだスコルピオ盤は曲間のカットが激しいに及ばず、ボンゾの「Over The Top」ドラム・ソロを未収録という状態でした。それからしばらくしてドラム・ソロを音質が劣る音源から収録したアイテムなども、これまた懐かしいものですが、結局のところ「DESTROYER」CDにおける最初の決定版と呼べたコブラ盤が登場したのは世紀末が近づいた頃。これほどの定番音源だったことを考えると、やはり意外な状況だったと言えるでしょう。21世紀に入ると、音源の全貌や素性が明らかとなったことで、次世代「DESTROYER」リリースのポイントは音質のナチュラルさやジェネレーションの低さへと注がれます。この頃までに多数の公演が発掘されたZEPライブのミキシング卓からのサウンドボード音源が証明していたように、あくまでリリースを前提とせず、記録やスタッフのミキシング・チェック用に録音されたこの手の音源、欠損部がどこかしらにあるのが当たり前だったからです。つまり「DESTROYER」音源における「The Song Remains The Same」や「Rock And Roll」前半の欠損部分というのは録音が元から残されていない。そうなると音源の純度にこだわったリリースへと視点が切り替わるしかない訳です。そんな中で当店が十年ほど前にリリースした白黒ジャケ「DESTROYER」はナチュラルな状態、しかも音源流通時に加わったような細部のカットも最小限に留まった音源を元にしていたことから、マニアの間で大きな話題を呼びました。しかし、21世紀最初の十年が終わると、今度は「1st generation」という状態でよりナチュラルかつ、音質が向上した文字通りのロウジェネ・バージョンが登場、それが今回のリリースの元になった音源なのです。ZEPマニアならば一度ならずとも聞いたであろう、77年ツアーのサウンドボード音源、究極のバージョンと呼ぶにふさわしい!さすがに「1st generation」だけのことはあり、今回のバージョンのナチュラルでウォーミーな味わいは本当に素晴らしいものがあります。今でこそ77年ツアーのサウンドボード音源は多数アイテムがリリースされている恵まれた状況ではありますが、それらと比べて楽器のバランスが自然な状態に近く、過度にペラペラな質感でないことも、定番でありながら現在再評価されるポイントでしょう。録音の性質上、基本的にクセのあるバランスがこの手のサウンドボード音源の傾向なのですが、それにしても「DESTROYER」の聴きやすさは今なお際立ったものがあります。それがロウジェネ状態によってなおさら引き立つ。それが今回のリリースなのです。そもそも、何故「DESTROYER」ZEPライブ音源史における、最初期の流出サウンドボード音源となり得たのでしょうか?LPの時代には、ZEP側が所有するであろう、ライブ音源アーカイブの中から奇跡的に流出した音源であるかのように思われていたものです。そうは言っても、そう簡単に音源が盗まれたりするものではありません。実のところ「DESTROYER」は77年ツアーのプロショット映像として現在はポピュラーな存在となった7月のシアトル、キングドームでの映像収録が決まった際、撮影班に向けて資料として供えられたものだったのです。確かに、ステージングが長い77年ツアーを知ってもらうには、こうした音源が最適だったのだと推測されます。つまり、そうしてアーカイブから外部の人間に渡された音源が人づてに流出した結果でした。こうして広まった音源が現在に至るまで無数のアイテムを生み出してきた訳ですが、とりわけLPやCD初期は77年ツアーのまともなアイテムが限られてしまっていたことから、音はいいけれど演奏が精彩を欠いた「DESTROYER」、というイメージを生むこととなってしまいました。それは一重に、その頃の「DESTROYER」以外のリリースが6月21日と23日のLA公演くらいしかなかった状況のせいだったのです。つまりツアー前半の「DESTROYER」と(結果的に)ツアー後半となったLA公演からの「エディ」と「バッジホルダー」という両極端な状況。そこから生まれた誤解と言えたでしょう。幸いにも、それも現在の大量なサウンドボード音源の発掘によって「DESTROYER」のイメージや音源の立ち位置は正しく評価されるようになって来ています。つまり、6月の公演は誘惑の多いLAらしくコカインで飛びまくったZEP(特にボンゾ)の姿を捉えたものであり、77年ツアーが当初目指していたもの、あるいは77年ツアーの通常営業ぶりが「DESTROYER」だったということ。その後発掘されて現在に至るランドーバーやMSGのサウンドボード音源が「無理のないエンジン全開感」だった。かく言う私も昔は「エディ」のキレキレ・パフォーマンスにばかり気が行っていたものですが、今はツアー前半ならではの落ち着きと自然な盛り上がりで聴かせてくれる「DESTROYER」をとても愛聴しています。中でもこの日のボンゾはLAのような「薬臭さ」がなく、聴いていて気持ちがいいほどにシャープなドラミングをナチュラルなグルーブ感と共にビシバシと決めてくれています。確かに「エディ」を始めとしたLAのボンゾは強烈だったけれども、ドラムが目立ちすぎるライブというのは、音楽のバランスとしては決して褒められたものではない。むしろ77年ツアーが目指した、どっしりとしたグルーブ感を鮮明に伝えてくれるのは「DESTROYER」でしょう。一方でこのツアーからはプレイの粗さが表面化し始めたペイジですが、それでもこの日の「Stairway To Heaven」や「Rock And Roll」におけるムラの激しいフレーズはギター接続関連のトラブルに起因しているものであり、ミスというよりはハプニングであることがサウンドボード音源ならではのクリアネスを通して伝わってきます。それを裏付けるように、ラストの「Trampled Underfoot」では彼の奮起した見事なプレイが聴かれました。そして近年において数多く発掘されたサウンドボード音源と違い、バランスの不自然さが気になるのがそれらの二曲だけであり、全体的には非常に聴きやすい状態である、ということも「DESTROYER」サウンドボードならではの大きな魅力。そして今回のロウジェネという状態も合わさって、数多い77年ツアーのライブ音源の中において群を抜いて「安心して聴き通せる」名音源を最高の状態で収録しています。とどめにライブ終盤において散見されたピッチの変化までしっかりとアジャストしてみせたとなれば、なおさら。そうそう、あまりに「DESTROYER」というだけで通じてしまうZEPライブの超定番音源ですので、肝心なことを言い忘れていました。このライブが収録されたのは1977年4月27日のクリーブランドです!
Richfield Coliseum, Cleveland, Ohio, USA 27th April 1977
Disc 1 (59:26)
1. The Song Remains The Same 2. Sick Again 3. Nobody's Fault But Mine 4. In My Time Of Dying 5. Since I've Been Loving You 6. No Quarter
Disc 2 (44:36)
1. Ten Years Gone 2. The Battle Of Evermore 3. Going To California 4. Black Country Woman 5. Born-Y-Aur Stomp 6. White Summer 7. Black Mountain Side 8. Kashmir
Disc 3 (61:30)
1. Over The Top 2. Guitar Solo 3. Achilles Last Stand 4. Stairway To Heaven 5. Rock And Roll 6. Trampled Underfoot