50周年を祝うグレイテストヒッツ・ツアー“THE WHO HITS 50!”。昨年7月に一段落を付いたかと思われましたが、2016年になってほぼ丸7ヶ月ぶりに再開しました。現在、5月いっぱいまでの日程が発表されていますが、そのほとんどは北米で、唯一の例外が第2レッグのキックオフ公演であるロンドン。本作は、その第一夜を収めたライヴアルバムです。
そんな本作に収められているのは「2016年2月13日SSEアリーナ公演」。“SSEアリーナ”は、「エンパイアプール」「ウェンブリー・アリーナ」の名でも世界に知られる伝統会場です。1万2,000人規模の現場の大気を吸ってきた本作は、そのスケールが信じられないほどにビビッドな楽音が素晴らしい名録音。芯の太さはもちろんのこと、エッジの鋭さが鮮明。「まるでサウンドボード」と呼ぶには巨大な空間に轟く空気感もありはするのですが、その響きが透き通っており、その中を鋭利な楽音の芯がズバッと突き抜けてくるのです。間違いなく名録音ではありますが、あえて明瞭の“明”録音と呼びたいサウンドです。実際、この録音がネットに登場するや、肝心要の“再開初日”の話題さえも吹っ飛ばし、そのサウンドの素晴らしさに注目が集まっている。本作では、その明録音の旨みを最大限に活かすマスタリングで仕上げました。そんなクリア・サウンドで飛び出すヒット・パレード“THE WHO HITS 50!”の世界は、まさに豪華絢爛。歴史に名を残す有名曲たちが次から次へと披露されていく。それはもはや、1バンドの域を超え、“英国の代表曲集”にさえ感じられるほど。昨年のライヴと大筋で変化はありませんが、あえて言うなら「The Rock」でしょうか。「四重人格」の名曲が3年ぶりに復活し、ヒット・パレードの一員に参加しています。 ……とまぁ、有り体にご紹介して参りましたが、本作はただ音が良く、ただ有名曲が羅列されているわけでもありません。もちろん、それこそが大前提なわけですが、それ以上に本作ならではの輝きを放っているのは、実は歓声。繰り返しクリアな楽音の凄さを語ってきたものの、彼らを見つめる1万2,000人の息吹もまた非常にクリアなのです。もちろん、THE WHOの本国公演ですから年齢層も高いのか、無闇やたらと騒ぐ若者は見受けられませんが、バンドに贈られる喝采、英国ユーモアたっぷりのMCで巻き起こる笑い声、そしてヒット曲を唱和する合唱も透明感たっぷりに大会場中に広がる。このスケール感、現場感覚がたまらなく美味いのです。いかにも楽しく、バンドへの想いが溢れかえる空気の中に身を置き、母国ならではの気の置けない雰囲気に全身が包まれる。そう、これ。これなのです。この現場感があるからこそ、オーディエンス録音は止められない。しかも、ここは母国。確実に伝説のバンド、確実にその最終盤に立ち会っていながら、その重みをさらっと受け止め、自分の人生に重ね合わせるように歌う大観衆。THE WHOの存在と共に呼吸し、生きてきた人々が集うからこそ薫る英国臭は、他のいかなる国とも違うのです。52年前にTHE WHOが誕生したロンドンの地から再開した“THE WHO HITS 50!”。その最新ライヴアルバムは、母国だからこその風、故郷だからこその匂いを届けてくれる大傑作となりました。スピーカーごしに薫る英国の空気を胸いっぱいに吸うも良し、数々のヒット曲に自身の思い出を噛みしめるも良し、頭を真っ白にして共に歌っても最高なロックアルバムです。再び歩み出したTHE WHOのヒット・パレード。ぜひ、あなたも祝祭の行進に参列してみませんか。
Disc 1(71:13)
1. Intro 2. Who Are You 3. The Seeker 4. MC 5. The Kids Are Alright 6. MC 7. I Can See For Miles 8. MC 9. My Generation 10. Pictures of Lily 11. Behind Blue Eyes 12. MC 13. Bargain 14. MC 15. Join Together 16. You Better You Bet 17. MC 18. I'm One 19. The Rock 20. Love, Reign O'er Me
Disc 2(44:33)
1. MC 2. Eminence Front 3. Amazing Journey 4. Sparks 5. Pinball Wizard 6. See Me, Feel Me / Listening To You 7. Baba O'Riley 8. Won't Get Fooled Again 9. Band Introduction
Roger Daltrey - vocals, guitar, harmonica, percussion Pete Townshend - guitar, vocals Zak Starkey - drums, percussion Simon Townshend - guitar, backing vocals Pino Palladino - bass guitar John Corey - keyboards, backing vocals Loren Gold - keyboards, backing vocals Frank Simes - keyboards, backing vocals, musical