ドラッグの不法所持によって一時は終身刑すら危ぶまれたキース・リチャーズのトロントでの逮捕劇は結果として温情判決を受けました。その中の一つが目の不自由な人の組織CNIB(Canadian National Institute For The Blind)の為のチャリティ・コンサートを開くというもの。コンサートが実行に移されたのは1979年4月22日にカナダのオシャワ。これによってキースに課せられた判決に応えたのはもちろん、この日はストーンズのライブ史にとって非常に特殊な一日にもなったのです。そもそも1979年はミックの提案によってストーンズのツアーは行われず、代わりにアルバム「EMOTIONAL RESCUE」の制作へと注がれた年。一方でロニー・ウッドは自身にとって三枚目のソロアルバムである「GIMME SOME NECK」を完成させたところであり、当然ながらレコード会社からはプロモーション活動を求められていた。そんなタイミングでしたので、ストーンズがツアーをやらないならば代わりに…と思い立ったのがニュー・バーバリアンズだったのです。ちなみに「GIMME SOME NECK」がリリースされたのはCNIBコンサートの二日前であり、タイミングとしては同イベントがグループのデビュー・ギグとして申し分のないもの。こうした状況が重なり、オシャワでのチャリティ・コンサートはバーバリアンズとストーンズが半々ずつショーを行うという変則的かつ画期的なイベントとなりました。当然キースとロニーはバンドを掛け持ち、それでいて実質的にストーンズの前座を務めるという珍しい構成。それが新しいバンドのデビュー・ギグとして格好の晴れ舞台となるのはもちろん、ツアーを行わないと決めたストーンズにとっては数少ないライブ活動の一環になりました。そんなレアな一日のチャリティ・コンサートは都合二回のショーが行われています。マニアにとって圧倒的に親近感が湧くのは音源やアイテムに恵まれたセカンド・ショーでしょう。そちらに対してファースト・ショーは極端に知名度が低かった。元々アイテムの少ないショーであっただけでなく、ストーンズの1981年から82年におけるツアーのタイミングにかこつけて出された「PLACE AUX DAMES : SHADES 'N' CANES」というLPはリリースのタイミング自体が微妙だった(コンサートの開催か三年後のリリース)だった上、ストーンズのパートしか収録されていなかったのです。とどめは非常に音質の悪いオーディエンス録音であったということ。実際にセカンド・ショーは現在に至るまで多くのアイテムが生み出され続けてきましたが、ファースト・ショーは同LP以外にアイテムが存在せず、よほどのコア・マニアでない限り聞いたことがないという位置づけにありました。しかし不幸中の幸いと言うべきか、ファースト・ショーに関しては他に二種類のモノラル・オーディエンス録音が存在していたのです。もっとも、二種類の音源それぞれも高音質というレベルではないのですが、さすがに「PLACE AUX DAMES : SHADES 'N' CANES」と比べるとはるかに聞くに耐えるクオリティでした。そこで今回はLPを含めた現存する三種類のオーディエンス録音の中でもっとも良好な音源をメイン・フィーチャーした上で他の二つも補填要員として使用した最長バージョンでのリリースとなるのです。そのメインに使われた音源は距離感のある音像、さらにニュー・バーバリアンズのパートでは団子状な音質となっていますが、マニアなら余裕で楽しめるでしょう。全体を通してアナログブートのテイストが強い質感の録音です。 今回のリリースによってファースト・ショーにおけるニュー・バーバリアンズのデビュー・ステージが明らかとなった訳ですが、こうして聞いてみれば意外なほどタイトに演奏している様に驚かされます。彼らの定番ライブ音源かつ映像であった5月のラーゴが証明していたように、基本ニュー・バーバリアンズの演奏はラフとルーズさの極み。ところが彼らがここで聞かせてくれる演奏はイメージを覆してくれそうなほどタイト…というかステージ・デビューということから懸命に演奏した結果なのでしょう。この回の模様は客席から撮影されたビデオが残されていますが、そこには何と譜面台で歌詞を見ながら歌うロニーの文字通り賢明な姿が映し出されていました。おまけにセカンド・ショーと比べてセットリストの構成が随分と違っているという事実がまた面白い。彼らからすれば、既にブッキングされていたツアーの前にウォーミングアップを兼ね、この日のショーで用意していたレパートリーを片っ端から披露してしまいたいといった算段だったのではないでしょうか。「Lost And Lonely」はこの回のみで演奏されたレパートリーですし、その出来もなかなかのもの。さらにセカンド・ショーと違って「Am I Grooving You」ではロニーのハーモニカ・ソロが登場せず、スタンリー・クラークのベース・ソロだけが盛り込まれた短めのアレンジとなっているのも貴重かと。いっぽうセカンド・ショーではあれだけ波乱万丈なステージを披露したストーンズが、こちらでは俄然スマートで安定した演奏を聞かせてくれたという事実を伝えてくれるのも驚き。例の「PLACE AUX DAMES : SHADES 'N' CANES」では演奏のディティールを聞き取るのも厳しいといったレベルでしたので、多くのマニアにとって驚きの音源がリリースされたことになるのでは。まだ前年のツアーの感覚が残っていたのか、ファースト・ショーらしかぬ力強い演奏は非常に聞き応えがあります。中でもセカンド・ショーでは一番のハプニングとなった「Star Star」がサラリと演奏されているのが新鮮に映ります。
今まで圧倒的にセカンド・ショーのアイテムばかりだった1979年のCNIBコンサートから、遂にマニア感涙のファースト・ショーの完全収録アイテムが限定のプレスCDにて登場。そのリリースに当たっては他のソースも駆使して欠損部などを補うだけでなく、リスニング上における大きな問題であった不安定なピッチも徹底的にアジャストして俄然聞き込める仕上がりとなっています。マニアには定番セカンド・ショー以上に新鮮な気持ちで楽しめるストーンズのビンテージ・ライブ音源のリリース。ぜひ同時リリースのセカンド・ショーと聞き比べをお楽しみください!
★1st Showはアナログで出ていただけ。★オーディエンス2種存在する。音の良い方のソースをメインに2nd Source, LP Source で欠落個所を補填 ★ピッチは、LPソースはほぼ合ってるので未調整で使用。(演奏部を使わない為) ソース1/ソ-ス2はランダムに狂っているので、調整済み。
"Canadian National Institute for the Blind Benefit" Oshawa Stadium, Toronto, Canada 22nd April 1979 (1st Show)
Disc 1 (44:43) THE NEW BARBARIANS
1. Intro ★全部 2ndソースイコラ補填 2. Breathe On Me ★0:00 - 0:03 2ndソースイコラ補填 3. Come To Realise 4. Infekshun 5. Lost And Lonely 6. Am I Grooving You 7. Bass/Drum Jam 8. Seven Days ★ 4:58 - 5:04 2ndソースイコラ補填 9. Before They Make Me Run
Disc 2 (51:39) THE ROLLING STONES
1. Intro 2. Prodigal Son 3. Let It Rock 4. Respectable 5. Star Star 6. Beast Of Burden 7. Just My Imagination 8. When The Whip Comes Down 9. Shattered 10. Miss You ★5:42 - 6:05 / 7:45 - 8:23 2ndソースイコラ補填
11. Jumping Jack Flash ★6:53 - 最後までLPソースイコラ補填 12. Outro.★全部LPソースイコラ補填
THE NEW BARBARIANS Ron Wood - Guitar, Harmonica, Pedal Steel, Guitar, Vocals Keith Richards - Guitar, Piano, Vocals Stanley Clarke - Bass Ian McLagan - Piano, Organ, Backing Vocals Bobby Keys - Saxophone Joseph Modeliste - Drums
THE ROLLING STONES Mick Jagger - Vocals Keith Richards - Guitar, Vocals Charlie Watts - Drums Ron Wood - Guitar Bill Wyman - Bass Ian McLagan - Piano, Organ, Backing Vocals Bobby Keys - Saxophone