独り立ちを果たし、ギター革命で世界を席巻した1985年のイングヴェイ・マルムスティーン。その衝撃がヨーロッパに渡った歴史的瞬間を伝える極上ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1985年6月3日ロンドン公演」。伝説の“マーキー・クラブ”で記録された極上オーディエンス録音です。1985年と言えば、衝撃のソロ初来日が公式プロショットとしても残されておりますが、本作はその約半年後。まずは、当時のスケジュールでショウのポジションを確かめてみましょう。
・1月7日-11日:北米#1(3公演)・1月22日-27日:日本(5公演)《2月-3月『RISING FORCE』発売(欧米)》・5月10日-18日:北米#2(6公演)・5月23日-6月3日:欧州(8公演)←★ココ★・6月7日-7月19日:北米#3(26公演)
《8月1日『MARCHING OUT』発売(日本)》《ジェフ離脱→マーク・ボールズ参加》・8月31日-11月24日:北米#4(60公演)・12月28日-31日:北米#5(3公演)
これがイングヴェイの1985年。彼の履歴には曖昧な点も多いので公演数まで厳密ではありませんが、おおよその流れはイメージしていただけるでしょう。ALCATRAZZを脱退したイングヴェイは、RISING FORCEを結成。1984年内にもいくつかショウケース的なギグを行いつつも、初めて“ツアー”と呼べる日程だったのは実はソロ初来日。その後も北米を軸にサーキットし、100公演以上をこなした。ALCATRAZZの衝撃から35年が経ちますが、彼のキャリアで最も多忙だったと言われる1年でした。その中で本作のロンドン公演は「欧州」レッグの最終日にあたります。また、イングヴェイはALCATRAZZで欧州ツアーを行っておらず、この時がプロ初のヨーロッパ。しかも、英国はこの1公演のみで次回はジョー・リン・ターナー時代になる。事故前のイングヴェイが真価をブチかました唯一無二のイギリス公演なのです。そんな歴史的なショウを記録した本作は、絶品にもほどがある。サウンドボードと間違えるほど密着してはいませんが、空気感はクリスタル・クリアに透き通り、速射フレーズの1音1音まで超美麗。千変万化するアーミングのニュアンスやちょっとしたチョーキングまで克明なのです。もちろん、ギターだけではない。舞い踊るイェンス・ヨハンソンのキーボードもアンダースのタイトなドラミングもくっきり。1985年という時代柄、ヴォーカルにディレイ系のエフェクトがかかることもありますが、それでも歌詞の1語1語まではっきりとしています。そのサウンドで描かれるのは、ギタリストとして全盛を究めた凄まじいショウ。内容は初来日の『CHASING YNGIWE』に酷似しているわけですが、そこでは聴けなかった「Little Savage」も披露している。これがまた絶品。あの触れれば壊れそうな切ない美旋律が舞うだけで感動しますが、その後、突如として民謡的なメロディに転換。その世界観もフレキシブルなムードもリッチー・ブラックモアの後継者に相応しい。当時はとかく黒い衣装やストラトが話題となりましたが、この自在なインプロヴァイズと幅広く欧州的なメロディの引き出しこそ、リッチーと比較されるべきだったのかも知れません。また、ちょっと面白いのが「On The Run Again」。イントロで弾き出すのは、BLACK SABBATHの「Symptom Of The Universe」なのです。歌入りする前に「On The Run Again」へと変わってしまうものの、ちゃんとバンドも入ってくる。イギリス向けのサービスだと思いますが、DEEP PURPLEでもRAINBOWでも『HEAVEN AND HELL』でもなく、オジー時代のサバスというのがちょっと意外です。それ以上に日本と違うのは、狭いマーキーの密室感。熱気がパンパンに詰まり詰まり、それをシャープで正確な光速ギターが切り刻みまくる。しかも、スラッシュ系とは異なりアグレッションをまとったメロディはキラキラと輝き、いくらヘヴィに迫っても美しさが微動だにしない。初対面にして究めているネオクラシカル・ロックの権化。ALCATRAZZを体験していないこともあってか、さすがのロンドン野郎共も呆気にとられ、曲間になって息を吹き返したように盛り上がっている。そんな空間をリアルに実体験できるのです。事故前イングヴェイの世紀のギターを目の当たりにしたロンドン・ドキュメント。音楽作品としても極上ライヴアルバムであり、ネオクラシカルのギター革命がいかに衝撃だったかを肌感覚で感じられる1枚。
Live at Marquee Club, London, UK 3rd June 1985 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
1. Intro 2. I'll See The Light Tonight 3. As Above, So Below 4. Far Beyond The Sun 5. Icarus' Dream Suit Opus 4 6. I Am A Viking 7. On The Run Again 8. Little Savage 9. Keyboard Solo 10. Kree Nakoorie 11. Guitar Solo 12. Band Introduction
13. Anguish And Fear 14. Drum Solo 15. Anguish And Fear 16. Disciples Of Hell 17. Black Star 18. Hiroshima Mon Amour
Yngwie Malmsteen - Guitar Jeff Scott Soto - Vocal Jens Johansson - Keyboards Marcel Jacob - Bass Anders Johansson - Drums