お蔵入りとなってしまったDCCリマスター版「ALL THINGS MUST PASS」ですが、こちらは大胆にもLP三枚組アルバムの三枚目に属した「APPLE JAM」サイドをオミットしてCD一枚にアルバムを収めていた(それがお蔵入りした原因かもしれません)のです。そこでCDの前半にはこの「APPLE JAM」サイドを収録しています。その収録に当たっては、懐かしの「昭和リマスター」を採用。今となってはほとんど振り返られることのなくなったバージョンですが、こちらも中々にナチュラルなサウンドであり、しかもアルバム本編と違ってウォール・オブ・サウンド指数の低いパートですので、この時代のCDにありがちな薄っぺらい仕上がりではなく、意外といい線いっていて楽しめます。このCDにおいて「APPLE JAM」サイドの後に収録されているのはレコーディング・セッションからのアウトテイク。これらはすべて「ジョン・バレット音源」としてマニアにおなじみだったもので、ビートルズの各種スタジオ音源と同時に発掘されたもの。よって様々なアイテムがリリースされてきましたが、今回はマニアMasterjediがネット上に発表したバレット音源コンピレーションの「BARE IT ALL VOL.5」に収録されていたベスト・リマスター・バージョンを採用。どれもアルバム収録曲に比べるとラフな演奏ばかりですが、ビートルズの解散確定後、セッションの合間に演奏したジョージの歌う「Get Back」には誰もが驚かされたものですし、「Going Down To Golders Green」ではリンゴにクラウス・フォアマンといった面子とジョージが三人だけで演奏したナンバー。これは参加ミュージシャンがまったく一緒な「ジョンの魂」に雰囲気がそっくりで、そのジョージ版、つまり「ジョージの魂」とでも呼びたくなるようなサウンドが面白い。そして「Pete Drake's Talking Steel Guitar」ペダル・スティール奏者のピート・ドレイクが「Wah-Wah」のオーバーダビング作業時にトーキング・モジュレーターの効果をジョージやフィル・スペクターに披露してみせた場面です。このように前半はDCCリマスター未収録パートを収録してアルバムの内容を補完し、後半はレアなアウトテイクという大変に充実した内容のCDとなっています。(51:52)
-Apple Jam-1. Out Of The Blue 2. It's Johnny's Birthday 3. Plug Me In 4. I Remember Jeep 5. Thanks For The Pepperoni
-All Things Must Pass Outtakes-6. I Live For You 7. Dehradun 8. Gopala Krishna 9. Going Down To Golders Green10. Get Back 11. Pete Drake's Talking Steel Guitar
トラック1~5はDCC盤の欠落曲のためリマスター前の廃盤初期CDより収録。トラック6~11はMasterjedi「Bare It All Vol.5」より収録。