
先日、DOWNLOAD JAPANでメタル者を涙させたSLAYER。その直前となるオセアニア・ツアーを代表する大傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「2019年3月9日シドニー公演」。その極上オーディエンス録音です。このオセアニア・ツアーは波乱でもありました。ショウのほとんどは問題なく行われたものの、その終盤となる3月15日には、クライストチャーチで世界を震撼させた銃乱射テロ事件が発生。当日のオークランド公演は1000km離れていたこともあって無事に開催されたものの、2日後の3月17日はテロの現場となったクライストチャーチ。警察や市議会からのアドバイスもあり、「人々の安全を最優先するため」として公演が中止になりました。まずは、その辺の事情を整理する意味でも、ツアー日程でショウのポジションを確かめてみましょう。
・3月7日:ブリスベン・3月9日:シドニー【本作】・3月11日:メルボルン・3月13日:アデレード《3月15日(13:45):銃乱射テロ発生》・3月15日(19:00):オークランド・3月17日:クライストチャーチ(中止)・3月21日:DOWNLOAD JAPAN・3月23日:フィリピン
・5月2日-25日:北米(16公演)・6月4日-7月13日:欧州(20公演)・7月27日:HEAVY MONTREAL・8月1日+3日:ドイツ(2公演)・10月4日:ROCK IN RIO
これが現在までに公表されている2019年のスケジュール。今年の幕開けに設定されていたオセアニア/アジア・ツアーのみ、詳しく記載しました。本作のシドニー公演は、その2公演目にあたるコンサート。オーストラリア版DOWNLOADフェスティバルでした。そんなショウを記録した本作は、まさに極上。現場に渦巻く熱狂も吸い込んだオーディエンス録音には違いないものの、演奏音には距離感など微塵も感じられず、ダイレクト感たっぷりの芯が轟き、ディテールまで超詳細なまま耳元に飛び込んでくる。オーディエンス録音ではウィークポイントになりがちな重低音も腹に響くド迫力でありながら、オーバーピークになることのない安定感が絶品。ポール・ボスタフの超人連打も1打1打クッキリとしたまま五臓六腑を蹴り上げてくれる。それこそFM放送のように均整が取れながら生々しいサウンドボード級の名録音なのです。このサウンドの要は(恐らく)録音の環境。現場となったパラマタ・パークは、本家DOWNLOADのドニントンと同じく開けた野外公演。そのため、音を反射する壁も天井もなく、PAの出力音をクリアなまま吸い込んでいるのです。もちろん野外録音=極上というほど単純なものではなく、それなりの技術も必要。PAから距離があってはスカスカになりますし、あまり前方ではモッシュにまみれてグチャグチャになるのがオチ。しかし、本作はそのどちらでもない。これまた推測ですが、恐らくは会場の各所に設置されたPA塔のすぐ側で録音したのでしょう。ステージから離れているために狂乱に巻き込まれることなく、遠くの熱狂がスケール感を演出。それでいて出力音を間近からダイレクトに拾える……。そんな野外の必勝方程式としか思えない極上ぶりなのです。そんなサウンドで描かれるのは、最新“FAREWELL TOUR”の粋。世界各地で「これが最後」を告げているわけですが、それだけにセットはキャリアを賭けたような超ベスト。良い機会ですので、彼らがどのようにキャリアを総括しているのかちょっと整理してみましょう。
・1st『SHOW NO MERCY』(1曲)・EP『HAUNTING THE CHAPEL』(1曲)・2nd『HELL AWAITS』(1曲)・3rd『REIGN IN BLOOD』(3曲)・4th『SOUTH OF HEAVEN』(2曲)・5th『SEASONS IN THE ABYSS』(5曲)・6th&7th:なし
・8th『GOD HATES US ALL』(2曲)・9th『CHRIST ILLUSION』(1曲)・10th『WORLD PAINTED BLOOD』(1曲)・11th『REPENTLESS』(2曲)
……と、このようになっています。『SHOW NO MERCY』から『REPENTLESS』まで満遍なく演奏しつつ、2大名盤『REIGN IN BLOOD』『SEASONS IN THE ABYSS』が重用されている。実は2018年編からわずかに変更されており、『DIVINE INTERVENTION』の「Dittohead」が落ち、代わって「Born of Fire」がセットイン。元々『SEASONS IN THE ABYSS』の曲が一番多かったのですが、この変更により更に比重が高まり、5thアルバムの半分が披露されることになったわけです。恐らく隠れた意図などなく、シンプルにライヴの流れや客のノリだけで決めた変更でしょうが、だからこそ常にライヴの要であり続けた『SEASONS IN THE ABYSS』の重要さが浮き彫りになった。本作はそんな「SLAYERの最終回答」を超極上サウンドで味わえる生演奏のベスト・アルバムでもあるのです。DOWNLOAD JAPANが渦巻く最中に到着した極上のライヴアルバム。日本公演の予習には間に合いませんでしたが、余韻を噛みしめる復習にはぴったりの1本。“FAREWELL TOUR”でも屈指の名録音にして、オセアニア・ツアーを代表する超極上の1本
Download Festival, Parramatta Park, Sydney, Australia 9th March 2019 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1(42:08)
1. Intro: Delusions of Saviour 2. Repentless 3. Blood Red 4. Disciple 5. Mandatory Suicide 6. Hate Worldwide 7. War Ensemble 8. Jihad 9. When the Stillness Comes 10. Postmortem 11. Black Magic
Disc 2(49:30)
1. Payback 2. Seasons in the Abyss 3. Born of Fire 4. Dead Skin Mask 5. Hell Awaits 6. South of Heaven 7. Raining Blood 8. Chemical Warfare 9. Angel of Death
Tom Araya - vocals, bass Kerry King - guitar Gary Holt - guitar Paul Bostaph - drums