映像版の方で触れたウイングス1975年メルボルン公演のラジオ放送ですが、こちらに関してもCDの音盤として今回は同時にリリースします。オーストラリアの放送局は人気の絶頂にあったウイングスを逃すまいと、テレビとラジオの両方から収録（どちらもモノラル音声）していました。そこから放送された素材が後にポール側を経由して日本に渡り、来日公演のお詫び放送を実現させています。しかもラジオ放送に関しては音質が非常に良いことから海外と日本でそれぞれにブートレグまで作られました。海外製LPは今回の同じタイトルを冠した「FLY SOUTH」、日本製は「ROCK SHOW ‘75」でした。しかし音質面に関しては日本製が圧勝だったことは、我々からすると誇らしい気がします。75年当時は「PAUL McCARTNEY & WINGS : IN CONCERT」と題してオーストラリアで放送されたこのラジオ音源ですが、それを身近に思い出させてくれるアイテムと言えば、「HIGHLIGHTS DOWNUNDER」ではないでしょうか。CDで75年メルボルンを最高音質で聞かせてくれた名盤。とはいっても放送がディスク一枚に収まる長さでなかったことから、アンコール2曲が「BIG MAC’S LIVE TRACK」というライブ音源コンピレーションの最後に収録されたのは正直言って不便でしたが。今回は何と「HIGHLIGHTS DOWNUNDER」よりもさらに音質の良いマスターを入手、最近は映像に押され気味だった75年メルボルンのラジオ音源を最高の状態で収録。まず音質自体がより自然でしかも抜けが良く、はっきりアッパー版であることを確信させてくれます。しかしそれだけではありません。「HIGHLIGHTS～」で生じていたいくつかの不安定要素も一切払拭されたベスト・バージョンなのです。同タイトルは「Maybe I’m Amazed」の前で右チャンネルに派手なドロップアウトが生じていましたが、そうした問題がまったく起きない安定感抜群のマスター。それでいてライブ後半が他のアイテムに収録されるようなこともなく、あらゆる意味でストレスなく聞き込める最高の状態な文句なしのアッパー版でのリリースとなります。卓直結サウンドボードの荒々しさ全開だった映像の音声も迫力がありますが、ラジオ音源の整理された完成度の高い音声はやはり格別。全体を通して非常にスマートな仕上がりである一方、ポールのベースの存在感が大きいのも魅力。特にライブ終盤からはブイブイ鳴っているほど。さらにいくつかの曲ではボーカルにエコーが加えられており、モノラルながらも1975年ウイングスのライブアルバムとしては申し分ない仕上がり。 惜しむらくは75年ツアーの目玉だった「Little Woman Love / C Moon」と「Junior's Farm」が放送からは省かれてしまったことでしょう。それでもなお、映像の音声とはまるで違う音の仕上がり具合は聞いていて非常に楽しめるもの。逆に映像も流出版と違ってテレビ放送時にもラジオ音声が被せられていたのだから、いかに優れた音源であるかが分かると同時に、いかにも放送局らしい賢明な措置が施されていたのですね。公共の放送ビデオにあった卓直結サウンドボード音声を流すのは厳しかったのでしょう。
実際にラジオ音源のクオリティは本当に素晴らしい。これほどのクリアネスを誇るのだから、75年ウイングスの仮想ライブアルバムとして楽しむのに何の問題もないレベル。これだけ優等生な音質であれば、マニアでなくともじっくり楽しめる最高のライブ録音だと断言いたします。そうなれば音からだけでも、76年ツアーとはまったく違うオーストラリアらしい大らかな雰囲気の演奏がはっきりと伝わってくる。なおかつそれを楽しんでいるメンバーの様子がまた克明に。ライブビデオとしての完成度が高い高画質の映像版、そしてこちらの最高にクリアーな極上音源、是非セットにて75年のウイングスをお楽しみください！
Live at Myer Music Bowl, Melbourne, Australia 13th November 1975 SBD
Disc 1 (45:40)
1. Venus And Mars / Rock Show 2. Jet 3. Let Me Roll It 4. Maybe I'm Amazed 5. Live And Let Die 6. Bluebird 7. I've Just Seen A Face 8. Blackbird 9. Waltzing Matilda / Yesterday 10. You Gave Me The Answer 11. Magneto And Titanium Man 12. Go Now
Disc 2 (36:56)
1. Call Me Back Again 2. My Love 3. Listen To What The Man Said 4. Letting Go 5. Medicine Jar 6. Band On The Run 7. Hi, Hi, Hi 8. Soily
