ZEP最初の卓直結サウンドボード天国である1973年アメリカ・ツアー。二回の行程に分けて行われたツアーの前半は特に音源に恵まれていまして、ちょうど一年前にもデンバーやケザー・スタジアムなどの卓直結音源のベスト・バージョンがリリースされたのは記憶に新しいところ。よって当店でもかなりの73年アメリカ・サウンドボードを取り扱ってまいりましたが、その中において抜け落ちた穴の如き存在となっていたのが5月13日のモービル公演のサウンドボード・アルバム。CD黎明期にダラスとシカゴから封切られた73年アメリカの卓直結音源ラッシュですが、このモービルに関してはカセット・ブートという大変珍しい、そしてカセットが人気を取り戻した今なら見直されるであろうフォーマットにて登場しました。それと前後してトレーダー間に大量の73年ツアーの卓直結サウンドボードが流通。このバブルに乗ってゴースト・ミュージックというレーベルがカセット・トレード音源を乱発。それらの中の一つとして「UPWARDLY MOBILE」と「MOBILE DICK」の二つに分かれた形でリリースされています。当時ゴーストから大量にリリースされたアイテムはカセット・トレードの時代ということもあってジェネ落ち大会&ピッチの狂いなどもおざなりでCD化されていたのですが、トレードに縁のないマニアには、CDで大量の初登場音源が聞けるという点で重宝しました。意外にもそれら二タイトルを超えるものがすぐには登場しなかったのですが、MIDAS TOUCHレーベルの「GOIN' MOBILE」にてベスト・バージョンが登場。それが21世紀に入るとEMPRESS VALLEYからリリースされた「ALABAMA GETAWAY」に取って代わられて今に至ります。モービルの卓直結サウンドボード、その大きな魅力はこの時期に存在する数多いサウンドボードの中でも飛び抜けた鮮度とクリアネスに長けていたことでしょう。それが「ALABAMA GETAWAY」にて極められた感がありました。その後何度も登場したのが「MOBLIE 1973」。大幅というレベルではないものの、少なからずアップグレードしていたことでマニアの間では好評となったCD。ところが最近になってそれら既発アイテムを一掃する衝撃のアップグレード・バージョンがネット上に登場。これが今回のリリースの元になったのですが、新たなバージョンを作り上げたのはおなじみdadgad。リマスターに際して入手した音源は「ジェネレーション不明」とのことでしたが、これがびっくり、過去のバージョンよりも根本的に音質が向上していたのです。リマスターされる以前から状態の良い音源を使用しているのは明らかで、もしかしたら故意にジェネを明らかにしてないのでは?と勘繰りたくなるほど圧巻なアッパー感。今回のバージョンと比べて、あれほど聞きやすく感じた過去のアイテムが大なり小なりノイズリダクションによってこじんまりとしていたことを思い知らされます。あまりに別次元、これこそ真にアップグレードと呼べる素晴らしいもの。とは言ってもリマスターに手間をかける一方、ピッチの狂いをおざなりにしがちなのが海外のマニア(苦笑)。「スピードも調整済」と言っておきながら直っていない箇所があったのです。特に「The Rain Song」辺りで顕著なピッチの下降をアジャスト。驚異のアップグレードを遂げた音源に最後の仕上げを施しました。何しろ素晴らしい音源です、今回のリリースに当たっては他にも気になった箇所の微調整を加えています。それらについては別項を参照ください。最初に述べたようにモービルの卓直結音源は数多い73年アメリカのサウンドボードの中においても抜群な録音バランスの良さとクリアネスで定評がありましたが、何と言ってもジョンジーのベースが絶妙なバランスで捉えられているのが大きな魅力。そのせいで彼が「Rock And Roll」から「Celebration Day」にかけてのつなぎで大ボケをかましてしまった様子までバッチリ聞けてしまうのは愛嬌として(メンバーの中で一番冷静な彼にしては本当に珍しいミス)、他の73卓直結サウンドボードでは弱くなりがちだった彼のベースプレイの凄みが随所で感じられる秀逸音源なのです。「The Song Remains The Same」や「Dazed And Confused」でもジョンジーによる壮絶なベースプレイが捉えられており、いかに彼がZEPサウンドの要を担っていたかを再認識させてくれる貴重な資料とも呼べるでしょう。それでいて全体を通して「73年アメリカにおいて丁寧な演奏をするZEP」が最高音質で捉えられているという点もモービル音源の貴重なところ。ジミーもボンゾも驚くほど丁寧に演奏しており、「Stairway To Heaven」ソロでの見事な広がりを見せるジミーのフレーズなどは73年アメリカの中でもベスト3に入るのでは。この時点では彼がまだアクション指向へと傾き切る前で、なおかつLA以降のちやほやと快楽(笑)に溺れる前だからなのでしょうか。それを支えるボンゾのプレイがまた素晴らしく、なおかつリアルな音色で捉えられているのが絶品。プラントも「Over The Hills And Far Away」以外では力を抜いた歌い方が板に付いてきて安心して聞ける状態へと進化。そして前半に丁寧な演奏をしつつ、メンバーが待ってましたとばかりに炸裂する「Dazed And Confused」では20分あたり、それこそ73ヨーロッパを彷彿とさせるハイパー・プレイがリズム隊を中心に繰り広げられます。ヨーロッパの卓直結サウンドボードではジョンジーがおざなりになりがちなバランスでしたが、何度も触れているようにモービルは彼の存在感が大きいので余計にプレイの凄まじさが伝わってくる。1973年アメリカ・ツアーの中でも卓直結サウンドボードの発掘が密集する5月中旬ですが、それらの中でもずば抜けたクリアネスを誇ったモービルが2019年まさかのアップグレード。もちろん録音されていない「Heartbreaker」以降のショー終盤は未収録なままですが、それすら忘れさせるほどの驚異のアップグレードぶりが本当に凄い。これほどまでのクオリティ向上が実現しリリースに際してピッチをアジャストした結果、ZEPマニアはもちろん、ロックファンにも自身すすめられる極上アイテムへと進化を遂げました。もはや誰もが安心して聞ける卓直結サウンドボード・アルバムの登場です。意外なほど丁寧な演奏と解りやすいほどクリアーな音質…文句なし。(リマスターメモ)★既発と比較し、圧倒的に音が良い。今回盤の特徴としては、高音の抜けが良く、逆にざらついて聞こえる個所もある。特にディスク1。
★既発に劣る点は、イントロが5秒程度短い。アウトロが0.3秒程度短い。アウトロについては不要と判断し補填無し。イントロは重要なので補填しましたが、既発はノイズリダクションがキツメに掛かっており、今回盤と同じ音質にはならないので、なるべく調整して補填しましたがこの程度です。
★右チャンネルが左に比べて、ハイ落ちしてるので調整。左右バランスが改善されました。★ピッチ調整 ディスク1は終盤にかけて半音の20%強遅くなるピッチを修正。 ディスク2は合ってる。
Live at Municipal Auditorium, Mobile, Alabama, USA 13th May 1973 SBD(UPGRADE)
Disc 1 (60:04)
1. Introduction 2. Rock And Roll 3. Celebration Day 4. Black Dog 5. Over The Hills And Far Away 6. Misty Mountain Hop 7. Since I've Been Loving You 8. No Quarter 9. The Song Remains The Same 10. The Rain Song
Disc 2 (55:58)
1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Moby Dick
SOUNDBOARD RECORDING