意欲作『PATINA』を引っさげ、4年ぶりの来日を果たしたジェイク・E・リーのRED DRAGON CARTEL。その超絶オリジナル録音が登場です。本作に収められているのは「2019年4月18日:梅田クラブクアトロ」公演。その超・極上オーディエンス録音です。まずは、記録の意味でも今回の日程でショウのポジションを確かめておきましょう。・4月17日:渋谷クラブクアトロ・4月18日:梅田クラブクアトロ 【本作】・4月19日:名古屋クラブクアトロ以上、全3公演。2014年の初来日や2015年の再来日と同じく、東名阪のクアトロを巡るツアーでした。本作は、その大阪編を完全収録したライヴアルバムです。そんな本作は「超」を何十個も並べたくなる異様なハイクオリティ・サウンドにド肝を抜かれる。当店ではお馴染み“西日本最強テーパー”氏の最新作なのですが、本作は彼のコレクションでもズバ抜けている。いつも「まるでサウンドボード」となる名録音をモノにしているわけですが、本作は「サウンドボードにしか聞こえない」。それも、卓直結のやつにしか。ヴォーカルは脳内侵入レベルですし、ベースもド密着。ギターに至ってはピッキング・ニュアンスどころか、振動する弦が目の前に見えるかのよう。皮の振動が肌感覚のドラム・ソロのなんとカッコイイことか(ちなみにドラムのフィル・ヴァローンは、この来日公演をもってドラマーから引退するそう。なんて勿体ない……)。しかも、完成が異様に遠い。いかに演奏音の方が大きいとは言え、遙か彼方に微かに聞こえる程度の声援は、それこそ卓直結サウンドボードとしか思えない。録音家本人から譲られたマスターだけに、確実にオーディエンス録音なのですが、そうと分かっていても現実の音とのギャップに脳が混乱する。むしろ「実は極上IEMs」とでも言ってくれた方がスッキリするのに……というくらいに曇りゼロ・空気感ゼロ・オーディエンス感覚ゼロ。いかに機材の進歩した2019年と言えど、ちょっと聴いた事のない超絶すぎる音。それこそ「卓直結オーディエンス」などと、現実にはあり得ない形容をしたくなるサウンドなのです。その超絶クオリティで描かれるのは、現在進行形のジェイク・E・リー。5年前に復活した際にはオジー・オズボーン時代も視野に入れたサウンドに目の醒める思いでしたが、本作にはさらに進化に進化を重ねた彼がいる。セットは海外公演と同じく新作『PATINA』の大盤振る舞い。事前のインタビューでは「全曲やるかも」と息巻いておりましたが、さすがにそこまではいかないもののアルバム全11曲中8曲を採用。BADLANDS時代が甦ったようなブルース・ロックがたっぷりと披露してくれるのです。しかも、ギターが灼熱。ブルースというとヘタウマ上等なイメージもありますが、ジェイクは違う。ジェイク特有の引っ掻くようなピッキングが独特なグルーヴを生み出し、その切れ味こそが“間”を際立たせる。達人ジェイクでしか描けないブルースが滴り落ちるのです。もちろん山盛りの新曲だけでなく、散りばめられたクラシックスも美味しい。オープニングとラストに前作の「Wasted」「Feeder」で挟み込み、要所にBADLANDSの「3 Day Funk」「Highwire」を配置する。「3 Day Funk」というセレクトからして激シブですが、さらに驚くのがオジー時代のナンバー。「Bark At The Moon」でも「Shot In The Dark」でもなく、なんと「Spiders In The Night」。『月に吠える』の欧州盤オンリーだった激レア曲であり、「マニア向けのジョーク?」と思うほど極めつけのシブ選曲。ところが、実際にショウの中で聴いてみると『PATINA』との相性がすこぶる良い。ダレン・スミスはオジーを意識した歌い方ですが、むしろ普通に歌った方がシリアスで良かったかも知れません。ジェイクがこの曲を選んだのはジョークでもユーモアでもない……何よりも音楽自体がそう語っているのです(それにしても、この曲で唱和できる観客って凄いです)。また、本作には本生ライヴだからこその生きた躍動感も美味しい。一番顕著なのは2曲目の「Havana」。中盤で「さぁ、ギターソロ!」というタイミングでトラブルが発生。ジェイクがエフェクターを踏むと、突然ギターの音が出なくなり、ソロがグダグダになってしまうのです。普通であれば苦笑いのシーンになるところですが、本作は違う。このトラブルが逆に会場の一体感を生み、その後の盛り上がりに繋がっていってしまうから凄い。「ライヴは生き物」「観客もショウの一部」……そんな当たり前の事に改めて気づかされるライヴアルバム!!!BADLANDSを進化させたような『PATINA』で“今のジェイク”を強烈にアピールしたRED DRAGON CARTEL。そのブルース・ロックはステージでこそさらに熱く、さらに芳醇に生まれ変わる。本作は、その音の証拠品。しかも、超絶極上の。2019年祭先端のオーディエンス常識を大幅に塗り替える奇跡のライヴアルバム。
Live at Umeda Club Quattro, Osaka, Japan 18th April 2019 ULTIMATE SOUND(from Original Masterrs)
Disc 1 (41:35)
1. Intro 2. Wasted 3. Havana 4. Punchclown 5. Speedbag 6. Bitter 7. Chasing Ghosts 8. 3 Day Funk
Disc 2 (51:02)
1. MC 2. The Luxury of Breathing 3. Drum Solo 4. Crooked Man 5. Spiders in the Night 6. Ink & Water 7. High Wire 8. Feeder
Jake E. Lee - Guitar Darren Smith - Vocals Anthony Esposito - Bass Phil Varone - Drums