スケール・アップして母国に凱旋したNICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その最新UKツアーのライヴアルバムが3作同時リリース決定です。作は、その第1弾。UKツアー初日となる「2019年4月29日カーディフ公演」の傑作オーディエンス録音です。最近まで北米ツアーをリアルタイム・レポートしてきましたが、舞台が移った事もありますので改めて彼らの活動全容から始めましょう。
●2018年・5月20日-24日:英国#1(4公演)・9月2日-21日:欧州#1(15公演)・9月23日-29日:英国#2(6公演)●2019年・3月12日-4月22日:北米(28公演)・4月29日-5月4日:英国#3(5公演)←★ココ★・7月3日-27日:欧州#2(15公演)
これが現在までに公表されているスケジュール。ニックは75歳になるわけですが、北米ツアーはそれが信じられないほどのペースで駆け抜けました。そこから1週間の間を空け、5公演のミニ・ツアーを実施。現在はそれも完遂したところです。本作はその幕開けとなるライヴアルバムです。そんな本作は、実に味わい深いオーディエンス録音。「まるでサウンドボード」と呼ぶようなタイプではないものの、その芯は骨太で感触も肉厚。そして、不思議なのが空間感覚。鳴りにはオーディエンス録音らしいリアルな暖かみがあるものの、PAからマイクまで音が伝わるタイムラグはほとんど感じられない。ヴィンテージ録音ばりのセピアな音色なのに、空間の存在が妙に希薄。SAUCERFUL OF SECRETSの存在を間近に感じる親密感のあるサウンドなのです。その感覚を一層強くするのがオーディエンス・ノイズ。これまでの北米ツアーは各地で盛大な盛り上がりが起こり、演奏中でも声援や口笛が飛ぶショウがほとんど。それに対し、本作のカーディフ公演はえらく静まり返っている。もちろん、当店でご紹介するような傑作録音はオーディエンス・ノイズが抑えられたものばかりで、北米ツアーとは言っても邪魔ではありませんでした。しかし、本作はその次元ではない。観客の姿勢そのものが違い、初期FLOYDの名曲にじっくりと耳を傾け、1音1音を噛みしめるように静寂を守っている。もちろん、曲間には会場も沸き立つものの、それも熱狂とは一線を画すクールなムードが漂う。SAUCERFUL OF SECRETSの日本公演が実現するか否かは神のみぞ知るところですが、もし実現したら、その現場はこんな雰囲気になるんじゃないか……そんな集中力とリスペクトのショウなのです。そんなサウンドで描かれるのは、北米を経てスケール・アップしたショウ。上記のように英国ツアーは3回目になるものの、過去最大の曲数を誇っている。仕切り直しの1発目でもありますので、ここでセット内容を再掲しておきましょう。
●60年代シングル(3曲)・Arnold Layne、See Emily Play、Point Me At The Sky●『夜明けの口笛吹き(4曲)』・Interstellar Overdrive、Astronomy Domine、Lucifer Sam、Bike
●『神秘(5曲)』・Let There Be More Light、Set The Controls For The Heart Of The Sun、A Saucerful Of Secrets、Remember A Day(北米から)、Vegetable Man(アウトテイク)●『モア(2曲)』・The Nile Song、Green Is The Colour
●『原子心母(2曲)』・If、Atom Heart Mother●『おせっかい(2曲)』・Fearless、One Of These Days●『雲の影(3曲)』・Obscured By Clouds、When You're In、Childhood's End(北米から)
と、このようになっています。昨年の英国ショウよりも「Remember A Day」「Childhood's End」が増加しており、曲順も北米ツアーと同一。凱旋と共に変化も期待されたものの、むしろ北米ツアーの成功をそのまま持ち帰るスタイルのショウでした。母国のファンに過去最大級の名曲群をたっぷりと届けたSAUCERFUL OF SECRETS。その初日を素晴らしいサウンドで描いたライヴアルバムの第1弾。世界中の膨大な録音コレクションをコンプリートするのは難しい方もいらっしゃると思いますが、英国だけでもその進化ぶりは味わえる。「英国#1」はプロジェクト始動期ですし、「英国#2」はツアー活動を開始した発展期。そして、本作の「英国#3」は過去最大規模のセットも熟練した充実期にあたる。そんな英国コレクションに欠かせない1本。
St David's Hall, Cardiff, Wales, UK 29th April 2019 TRULY AMAZING SOUND
Disc 1(56:18)
1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man 12. Nick Mason Introduction
13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise)
Disc 2(58:24)
1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play
10. Bike 11. One Of These Days 12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky