衝撃の新発掘アルバム『DEFINITIVE OSAKA 1973: UNRELEASED MASTER』の登場により、俄然注目を集めているYES伝説の初来日。その頂点作が最高峰を更新して復刻です。そんな本作に収められているのは3公演「1973年3月8日:東京厚生年金会館」「同3月9日:渋谷公会堂」「同3月10日:神田共立講堂」。そう、各公演の頂点マスターを集成した一大超大作『CLOSE TO THE EAST』のブラッシュアップ・アルバムです。この大名盤は、まさに伝説の頂点。その内容に入る前に、まずは衝撃作『DEFINITIVE OSAKA 1973』とも併せ、初来日を振り返ってみましょう。
・3月8日:東京厚生年金会館 【本作Disc 1-2】・3月9日:渋谷公会堂 【本作Disc 3-4】・3月10日:神田共立講堂 【本作Disc 5-6】・3月11日:名古屋市公会堂・3月12日:大阪厚生年金会館『DEFINITIVE OSAKA 1973』・3月14日:京都会館
以上、全6公演。4都市を巡ってはいますが、その半数は東京。本作はその3公演を丸ごと収録した極上オーディエンス・セットなのです。そして何より、本作を頂点たらしめているのはサウンド・クオリティ。伝説的な初来日だけに数々の既発が生まれてきましたが、本作こそが最高峰。もちろん、70年代らしいヴィンテージ感覚を漂わせているものの、そのクリアさは当時の規格外。しかも大元となるオリジナル・カセットからダイレクトにデジタル化された鮮度は究極的なのです。何しろ、各音源が登場した際には当時の専門誌でも「前代未聞の発掘音源(初日)」「殆どPAの前に陣取っていたらしく、音が妙にデッドに録音されている(初日)」「これだけクリアに録れているのは驚きである(2日目)」「座席の位置もかなり前らしく、ダイレクトに録れているので、一瞬PAアウトの音源かと聴き違える程(2日目)」「30年経ってもこのクオリティとは素晴らしい(3日目)」と三者三様に絶賛の嵐。本作の要は初来日の真実にあるわけですが、世界的に見ても70年代YESの最高傑作候補となる文化遺産録音ばかり。特に初日(3月8日:ディスク1-2)は「これだけデッドに録れているのであれば、マスタリングを施せばオフィシャル・ブートとしても十分」とまで言われたほどでした。そして本作はそんな専門誌の言葉通り、最新マスタリングで甦らせたもの。初日(ディスク1)の「Siberian Khatru」からしてもう、至高としか言いようがない。『CLOSE TO THE EAST』では最大の特色であるサウンドボード的なエッジの鋭さや芯の力強さが印象的でしたが、今回は微細な鳴りにも細心の配慮が行き届いている。芯はダイレクトでオンなまま、そこから立ち上る鳴りはどこまでも美しい。これを喩えるなら卓直結サウンドボードと、磨き込まれたオフィシャル作品のような違いです。鳴りや空気感が曇りではなく、丸出しの芯に気品を与えている。しかも、その鳴りの成分はエフェクトの加工ではなく、1973年の東京で現実に振動していた大気であり、一発録りだけのリアリティは微塵も損なわれていない。ドキュメント感を保ったまま、美しさだけがグッと引き立っている。念のために繰り返しますが、原音が持つ鋭いディテール、オンな手応えは一切落ちていませんし、実のところ「まるで別物」とは言えません(せっかくの奇跡を別物にしてしまったら台無しです)。ただ、専門誌が指摘した「オフィシャル・ブートとしても十分」という言葉通りの品格サウンドを目指し、実現させているのです。初日だけで長くなってしまいましたが、2日目(ディスク3-4)、3日目(ディスク5-6)についても同様です。元々、初日(ディスク1-2)よりも鳴りが厚めの録音のために違いが分かりにくいかも知れませんが、それぞれ各音域ごとに精査。微妙なざらつきを滑らかに整え、微細なノイズも丁寧にトリートメント。各日の“極み”を追究いたしました。さらに言えば、3公演を通して聴くための完成度も追究。サウンドの統一感はもちろんですが、3日間の全長形にも注力。原音は2日目・3日目に録音漏れパートがありました(2日目は「And You and I」終盤の約30秒やアンコールの「Yours Is No Disgrace」「Starship Trooper」。3日目は「Firebird Suite」中盤から「Siberian Khatru」冒頭の2分間と、「Close To The Edge」5分台の約30秒)が、別録音を用いて最大限に復刻。2日目は同レベルの同日録音で、3日目は初日テイクで補完しました。サウンド面でもショウの全景という面でも、6枚組で聴き通す作品感を備えているのです。そんなサウンドで描かれる伝説の現場こそが圧倒的。複雑なフレージングが乱舞して精緻なシンフォニック・タペストリーが描かれるだけなく、その一声一声が若々しく、旋律の一筋一筋がシャープなのです。その素晴らしさは先日リリースされた『DEFINITIVE OSAKA 1973: UNRELEASED MASTER』でも楽しめましたが、本作はさらにドキュメント感が鮮烈。何しろ、本作は初来日。彼らにとって初めてのアジアであり、生まれて初めて黒髪の波を目の当たりにした現場なのです。初日にはどんな反応が返ってくるのかも未知な緊張が感じられ、それが1曲、1日と時間が過ぎるほどに安堵と自信に変わっていく。3日目にはファンサービスまで用意する余裕が生まれ、「さくらさくら」を披露する。「昨晩覚えた日本のフォークソングを歌います」というMCもドキュメントですが、内容も実に素晴らしい。後年の童謡のように「ちょっと歌ってみました」的なものではなく、ハーモニーも含めて非常にしっかりと演奏。初めて触れる日本のメロディや言葉が新鮮で、真剣に取り組む若きジョン・アンダーソンの姿が垣間見えるのです。ただし、良い事ばかりでもない。この3日目は緊張感がほぐれたせいか、逆に「Heart Of The Sunrise」でキメがボロボロになりかけたり、リズムが狂ったり、さらにはジョンが歌詞を忘れるという失態も演じてしまう。しかし、これもまた日本とシンフォニック・ロックが出会った現場の真実。本作は、そんな一部始終を手に取る様に感じ取れるライヴアルバムでもあるのです。PINK FLOYDの箱根から1年7ヶ月、EL&Pの大暴動から8ヶ月。華麗で精緻なシンフォニック・ロックが日本に初上陸した。そんな刹那を極上サウンドで永久保存したロックの文化遺産です。『DEFINITIVE OSAKA 1973: UNRELEASED MASTER』の衝撃が覚めやらぬ今だからこそ、今一度味わいたい“頂点の記録”。
Koseinenkin Kaikan, Tokyo, Japan 8th March 1973 PERFECT SOUND(from Original Masters)*Upgrade Shibuya Kokaido, Tokyo, Japan 9th March 1973 PERFECT SOUND(from Original Masters)*Upgrade
Kanda Kyoritsu Kodo, Tokyo, Japan 10th March 1973 PERFECT SOUND(from Original Masters)*Upgrade
Live at Koseinenkin Kaikan, Tokyo, Japan 8th March 1973
Disc 1 (67:56)
1. Firebird Suite 2. Siberian Khatru 3. I've Seen All Good People 4. Heart Of The Sunrise 5. Mood For A Day 6. Clap 7. And You And I 8. Close To The Edge
Disc 2 (43:28)
1. Rick Wakeman Solo 2. Roundabout 3. Yours Is No Disgrace 4. Starship Trooper
Live at Shibuya Kokaido, Tokyo, Japan 9th March 1973
Disc 3 (48:33)
1. Firebird Suite 2. Siberian Khatru 3. I've Seen All Good People 4. Heart Of The Sunrise 5. Mood For A Day 6. The Clap 7. Colours Of The Rainbow 8. And You and I
Disc 4 (62:44)
1. MC 2. Close To The Edge 3. Rick Wakeman Solo 4. Roundabout 5. Yours Is No Disgrace 6. Starship Trooper
Live at Kanda Kyoritsu Kodo, Tokyo, Japan 10th March 1973
Disc 5 (51:01)
1. Firebird Suite 2. Siberian Khatru 3. I've Seen All Good People 4. Sakura Sakura 5. Mood For A Day 6. Clap 7. Heart Of The Sunrise 8. And You And I
Disc 6 (66:58)
1. Close To The Edge 2. Rick Wakeman Solo 3. Roundabout 4. Yours Is No Disgrace 5. Starship Trooper
Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitar, Vocal Chris Squire - Bass, Vocal Rick Wakeman - Keyboards Alan White - Drums