
バンド・オブ・ジプシーズが二日間で四回行ったフィルモア・イーストでのショーの内、バンド最初のステージである1969年12月31日のファースト・ショーだけが過去にリリース済の曲を一切省いた「攻め」のセットリストで敢行されました。単にジミの新バンドお披露目というだけでなく、彼のキャリアの中でも極めて珍しい構成のセットリストだったという訳です。このように彼のライブ史の中においても非常に歴史的なステージも今やオフィシャル「MACHINE GUN: LIVE AT THE FILLMORE EAST 12/31/1969 (FIRST SHOW)」がリリースされ、完璧なステレオ・サウンドボード録音にて聞かれるようになりました。それまでこのショーは流出サウンドボード録音が有名であった一方、冒頭の三曲においてジミのボーカルがオフ気味という欠点があった。そこでマニアにとって思わぬ貴重なドキュメントになったのが同じショーを捉えたオーディエンス録音。おかげで当日の会場では冒頭三曲でもジミの声がしっかり響き渡っていたことが実証されたのです。おまけにサウンドボードからは伝わらない、ジミの新バンドを前に固唾を飲んで見守るオーディエンスの臨場感も当然の如く捉えられていました。ところが「MACHINE GUN」という強力なオフィシャルが登場してしまったことにより、これらアンダーグラウンド音源は見事に一掃されてしまいました。それは仕方ないにしても、問題は「客席からのドキュメント」としての価値が残されていたオーディエンス録音がネット上やトレーダー間にも出回らなくなってしまい、存在が抹殺されたに等しい状況となってしまったことでしょう。確かにオフィシャルが決定打となったのは当然なのですが、この貴重なオーディエンス・ドキュメントが埋もれてしまうのはあまりにも悲しい。そこでジミの研究家から是非ギフトにと提供されたのがこのオーディエンス録音なのです。もちろんオフィシャルのサウンドボードには到底及ばないクオリティですが、それでも1969年のモノラル・オーディエンス録音としては非常に聞きやすいもの。それだけに「POWER OF SOUL」というアイテムが過去にリリースされた実績がありましたが、今回はファースト・ジェネレーションのコピーを使用、なおかつピッチもアジャストしてそれとは比べ物にならないアッパー版へと仕上がっています。確かにオープニングの「Power Of Soul」では演奏が始まったところでテーパーが慌ててボリュームを調整したが故の音落ちがあり、さらにはジミが歌い始める直前での音切れが生じてしまっている点はいかにもビンテージ・オーディエンスにありがちな欠点。ところが以降は非常に安定した状態で録音が続きますし、オフィシャルと違ってオープニングでジミとバンドが紹介される前の、彼がステージに現れて後の「In From The Storm」的なリフを鳴らしてみせる場面が捉えられているだけでも十分に貴重でしょう。そして実質的にすべて新曲だけで構成されたステージでしたので、観客が戸惑うまではいかなくとも、ライブが終盤を迎えても熱狂的な盛り上がりにまで至ることなくライブが終わってしまった様子もはっきり伝わってくる。その後にジミ自身、あるいはバディ・マイルス、果てはビル・グレアムの提案なのか釈然としませんが、残りの三ステージでエクスペリエンス・ナンバーが導入されたのはやむなしといったところかと。こうした内容面の貴重さはもちろんですが、文字通り見過ごされたバンド・オブ・ジプシーズのオーディエンス録音をベストの状態にて収録しておりクオリティの高い仕上がりはきっとマニアを満足させるものだと自負しています。
Fillmore East, New York City, NY, USA 31st December 1969(1st Show)(72:27)
1. Intro 2. Power Of Soul 3. Lover Man 4. Hear My Train 5. Changes 6. Izabella 7. Machine Gun 8. Stop 9. Ezy Ryder 10. Bleeding Heart 11. Earth Blues 12. Burning Desire
Jimi Hendrix - guitar, vocals Buddy Miles - drums, vocals Billy Cox - bass, backing vocals