昨年、GONGと共に来日して健在ぶりを見せつけたスティーヴ・ヒレッジ。10年ぶりに行われているソロ・ツアーの最新オリジナル録音が登場です。そんな本作に収められているのは2公演。「2019年6月6日ケンブリッジ公演」と「同6月8日ロンドン公演」のオーディエンス録音セットです。ヒレッジは2015年・2017年にもソロ・ライヴを行ってはいますが、いずれも単発公演やフェス参加。移動とショウを繰り返すツアーは2009年以来となります。そんな彼の近況を知る意味でも、まずは2019年のスケジュールからショウのポジションを確かめてみましょう。
・6月6日-8日:英国#1(3公演) ←★ココ★・7月21日:NIGHT OF THE PROG FESTIVAL・11月14日-24日:英国#2(10公演)
これが現在までに公表されている日程。実際にツアーとなるのは11月の「英国#2」ですが、本作はその前振りとも言える「英国#1」。その初日と最終日のフル録音をディスク2枚ずつに配した4枚組です。そんな2公演を記録した本作は、実に、実に素晴らしいオーディエンス録音。80年代からロンドン近郊で記録を続けている名手の作で、当店では“英国の巨匠”でお馴染み。DAT録音ならではのリアルな空気感と現代的なクリアさを両立する個性は本作にも脈々と息づいておりますが、本作はいつにも増して端正にして美しい。会場も異なる2公演だけにサウンドは微妙に異なり、ケンブリッジ公演(ディスク1-2)は超タイト。サウンドスケープがスペーシーなオーディエンス録音ではあるものの、その中を貫く芯がえらくオンでグイグイ目の前に突きつけられる。もちろん、力強い芯は機微まで見事に伝えきっており、それこそサウンドボード的な直球感。現場となった“ケンブリッジ・ジャンクション”は850名規模の会場なのですが、むしろ小さなクラブのような密着感なのです。代わってのロンドン公演(ディスク3-4)は、またひと味違った極上ぶり。逞しくダイレクトな芯は共通しているものの、そこから立ち上るオーラのようなホール鳴りがゴージャス。もちろん、ディテールを隠してしまっては台無しですが、そうではない。こちらの現場“シェパーズ・ブッシュ・エンパイア”は120年近い歴史を持つ伝統劇場なのですが、そのホール鳴りは極めて美しく、ビビッド感が損なわない。ただひたすら芯に艶を与え、厚みがスケール感を醸す。鳴りがあるからこそ中低音にずっしりとした手応えがあり、その中で高音のメロディがキラキラと輝いている。まさに“オーディエンスだからこその美”に満ち溢れた華麗な美録音なのです。そんなサウンドで描かれるショウは、素晴らしき70年代の復刻。バックを務めるのは現行GONGの面々で、先日の来日公演と同一。そこに長年のパートナー、ミケット・ジローディを加えた7人編成です。メンツはGONGとほぼ同じなものの、今回はあくまでもヒレッジのショウ。GONGナンバーはラストの「Not Fade Away」に「I Never Glid Before」がインクルードされる程度で、他はすべてヒレッジのソロ・アルバムからのレパートリー。曲順は特に時系列ではないものの、デビュー作『FISH RISING』から『GREEN』まで3-4曲ずつ綺麗に押さえられ、そこに「Talking To The Sun」「The Fire Inside」がまぶされる。もっとも「Talking To The Sun」はCD化の際に『OPEN』に移されたので「70年代の全作から2-4曲ずつ」と言った方が良いかもしれません。その中でも『GREEN』の「Sea Nature」は今回初めてセット入り。特にケンブリッジ公演(ディスク1)は全世界初演になります。そんな黄金の名曲集を演じるパフォーマンスも絶品。何しろ、バックは名手揃いの現行GONG。そのタイトな切れ味は現役感満点で、クラシックスの輝きをさらに引き上げるようなシャープな演奏が素晴らしい。そして、御大ヒレッジも先日の日本公演で証明した通りの……いえ、それ以上の健在ぶりで、ジローディが描く音世界の中で舞い、時にその美意識を鋭いフレーズで切り裂く。おおよそ10年ぶりとは思えない見事なショウを聴かせてくれるのです。何はともあれ、極上の美音でヒレッジの再始動を体験できる本作だけのオリジナル録音です。来月のNIGHT OF THE PROG FESTIVAL、そして11月のツアー本編も待ちきれなくなる素晴らしきライヴ・セット。
Cambridge Junction, Cambridge, UK 6th June 2019 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Shepherds Bush Empire, London, UK 8th June 2019 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Live at Cambridge Junction, Cambridge, UK 6th June 2019
Disc 1(52:47)
1. Pre-Show Ambient Soundscape 2. Intro. 3. Talking To The Sun 4. It's All Too Much 5. The Golden Vibe 6. The Salmon Song 7. Steve Hillage Introduction 8. Sea Nature 9. Ether Ships 10. Lunar Musick Suite 11. Palm Trees (Love Guitar)
Disc 2(56:37)
1. Band Member Introductions 2. The Fire Inside 3. Motivation 4. Solar Musick Suite 5. Hurdy Gurdy Man 6. Light In The Sky 7. The Glorious Om Riff 8. Not Fade Away/I Never Glid Before
Shepherds Bush Empire, London, UK 8th June 2019
Disc 3(49:02)
1. Pre-Show Ambient Soundscape 2. Intro. 3. Talking To The Sun 4. It’s All Too Much 5. The Golden Vibe 6. The Salmon Song 7. Steve Hillage Introduction 8. Sea Nature 9. Ether Ship 10. Lunar Musick Suite 11. Palm Trees (Love Guitar)
Disc 4(55:50)
1. Band Member Introductions 2. The Fire Inside 3. Motivation 4. Solar Musick Suite part two: Canterbury Sunrise 5. Solar Musick Suite part three: Hiram Afterglid Meets The Dervish 6. Hurdy Gurdy Man 7. Light In The Sky 8. The Glorious Om Riff 9. Not Fade Away/I Never Glid Before
Steve Hillage - Lead Guitar, Lead Vocals Miquette Giraudy - Keyboards, Voices Gong: Kavus Torabi - Lead Guitar, Lead & Backing Vocals Fabio Golfetti - Glissando Guitar David Sturt - Bass Guitar, Backing Vocals Ian East - Sax & Flute Cheb Nettles - Drums