2ヶ月の充電を経て、再び動き出した初期PINK FLOYD復刻プロジェクトNICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その第一報となる傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「2019年7月3日ウルム公演(ドイツ)」。今まさに進行中のツアー初日のコンサートを記録した傑作オーディエンス録音です。当店では、2018年のプロジェクト起動から常にリアルタイムで音のレポートをお届けしましたが、2019年のツアーは春先の北米/英国レッグで一段落。7月から仕切り直しの大陸ヨーロッパ編へと移りました。まずはこれまで通り、彼らの歩み全体の中でショウのポジションを確認しておきましょう。
●2018年・5月20日-24日:英国#1(4公演)・9月2日-21日:欧州#1(15公演)・9月23日-29日:英国#2(6公演)●2019年・3月12日-4月22日:北米(28公演)・4月29日-5月4日:英国#3(5公演)・7月3日-27日:欧州#2(15公演)←★ココ★
これが現在までに公表されているスケジュール。彼らの本格始動は「欧州#1」から始まったわけですが、今年も大陸ヨーロッパへ帰還。「欧州#2」の15公演をもって2019年を締めくくる予定です。そんな初日を記録した本作は、気品溢れる見事なオーディエンス録音。開演前シーンを12分以上もリアルに収録し、オープニングSEをフルで聴けるのも非常に貴重&個性的ですが、さらに素晴らしいのはサウンド。最近では彼らのライヴアルバムを大きく「クリア・タイプ」「ダイナミック・タイプ」「ムード・タイプ」の3種に分類してご紹介しておりますが、それに沿うなら本作のサウンドは「ダイナミック・タイプ」の典型です。骨太な芯がグイグイと迫るダイレクト感を誇っておりますが、その芯から発せられる鳴りも肉厚。PAから発せられる丸出しの芯を艶やかにするだけでなく、演奏にずっしりとした手応えや重量感まで与えている。実のところ、この「ダイナミック・タイプ」が一番人気でもある。エッジに特化した「クリア・タイプ」よりも中音域のパンチが効いていて、重低音も腹に来る。もちろん、鳴りが輪郭を曇らせては本末転倒ですが、本作にその心配はない。肉厚であっても透明感があり、鳴りが迫力に転化。文字どおり“ロックのダイナミズム”を体現しているのです。そのサウンドで描かれる「欧州#2」の初日は、2ヶ月のブランクを感じさせない素晴らしさ。初日と言えばセットが気になるところですが、結論から言いますと「北米・英国#3」と同一。その内容を整理しておきましょう。
●60年代シングル(3曲)・Arnold Layne、See Emily Play、Point Me At The Sky●『夜明けの口笛吹き(4曲)』・Interstellar Overdrive、Astronomy Domine、Lucifer Sam、Bike
●『神秘(5曲)』・Let There Be More Light、Set The Controls For The Heart Of The Sun、A Saucerful Of Secrets、Remember A Day(北米から)、Vegetable Man(アウトテイク)●『モア(2曲)』・The Nile Song、Green Is The Colour
●『原子心母(2曲)』・If、Atom Heart Mother●『おせっかい(2曲)』・Fearless、One Of These Days●『雲の影(3曲)』・Obscured By Clouds、When You're In、Childhood's End(北米から)
……と、このようになっています。これまでのレパートリーを網羅した最大セットであり、曲順まで「北米・英国#3」同じ。北米ツアー序盤で微調整を重ねた末に完成された“2019年の結論”とでも言えるセットをここでも誇示しているのです。そして、そのセットを紡ぐ演奏ぶりも素晴らしい。初日だけにやや堅めな気もしますが、それも不慣れと言うよりは堅実感。ビシッとしていながら再開の意欲も滲ませるパワーも感じるのです。再び動きだしたNICK MASON'S SAUCERFUL OF SECRETS。その初日を極上のダイナミック・サウンドで体験できるライヴアルバムです。彼らの始動は故郷ロンドンなわけですが、快進撃が始まったのは大陸ヨーロッパだった。その「欧州#1」でも主戦場だったドイツでの再開1発目。
Live at Klosterhof Wiblingen, Ulm, Germany 3rd July 2019 PERFECT SOUND
Disc 1(61:44)
1. Intro 2. Interstellar Overdrive 3. Astronomy Domine 4. Nick Mason Introduction 5. Lucifer Sam 6. Fearless 7. Obscured By Clouds 8. When You're In 9. Remember A Day 10. Arnold Layne 11. Vegetable Man12. Nick Mason Speaking 13. If 14. Atom Heart Mother 15. If (reprise)
Disc 2(59:06)
1. The Nile Song 2. Guy Pratt Speaking 3. Green Is The Colour 4. Gary Kemp Speaking 5. Let There Be More Light 6. Childhood's End 7. Nick Mason Speaking 8. Set The Controls For The Heart Of The Sun 9. See Emily Play 10. Bike 11. One Of These Days
12. A Saucerful Of Secrets 13. Point Me At The Sky
Nick Mason - drums Guy Pratt - bass & vocals Gary Kemp - guitar & vocals Dom Beken - keyboards Lee Harris - guitar & vocals