モービル・フィデリティ・サウンド・ラボから「Ultradisc ?」のブランド名でリリースされていたCDの名盤シリーズより、エリック・クラプトンが自分の代名詞的ニックネームを冠してリリースし、全米アルバムチャート第2位の大ヒット作となった1977年リリースの名盤「Slowhand」をラインナップしました!本CDは、これまでご紹介してきた「Layla And Other Assorted Love Songs」や「461 Ocean Boulevard」に先立ち、1991年10月にリリースされました。それら同様、当時のポリグラム・レコード(現在のユニバーサル)からアメリカ盤の2トラック・オリジナルマスターテープを借り受けて限定生産されたものですが、サウンド的には、通常CDが高音域・低音域を強調し、中音域が貧弱なため、よく言われる「ドンシャリ」的な印象になっていたのに対し、本CDは他のCD同様、すべての音域がバランス良く調和している印象となっています。特に初めて世に出た「コンパクトディスク」と言うメディアのサウンドは、高音部が尖っていて、耳に刺さるように響いたために、かつては「クリアだ」と誤解されたものです。それに比べ、本CDでは楽器一つ一つ、ボーカルの繊細な響きそのもののクリアネスが際立っています。つまりこれが本来のアナログマスターを忠実に再現した結果だったというわけです。このアルバムは、クラプトンファンなら、あるいはこれからクラプトンを聴こうという方なら避けては通れない、文字どおりの代表作に挙げられます。なぜなら現在もコンサートの定番に位置するCocaine、Wonderful Tonight、Lay Down Sallyといった名曲がまとめて収録されていたこと、9曲中、半数以上の5曲がクラプトンのオリジナルナンバーであったことで彼のソングライターとしての成長を示した作品であったこと、中でもThe Coreでのギターソロは、クリーム時代の栄光の煌きを一瞬垣間見せてくれる「スローハンド奏法」全開のプレイであること、表ジャケットにクラプトンの生の姿ではなく、トグルスイッチをリアピックアップとセンターピックアップの中間にセットしたブラッキー・ストラトの写真をメインに据えてアイデンティティを表現した秀逸なコンセプトであったこと、などが挙げられます。本作もある意味「BLIND FAITH」同様、ギター、ベース、ドラム、キーボードという、ロックバンドの最少編成によるサウンドだったため、オリジナルアナログマスターのサウンドに忠実に「磨き上げる」甲斐があるアルバムだったと言えます。そのため本作は以降もCD、LPの両方において、クラプトンのカタログにおける高音質化競争の中心を成す作品に位置づけられてきました。ほとんどの曲がスタジオでライブ録音されており、その空気感を伝えるのは楽音の生々しさと静寂部分の「無音のクリアさ」な訳ですが、本CDではそのあたりのメリハリを十分に味わっていただけると思います。本盤を聴くと、初回盤通常CDはもう聴けないでしょう。一方、本盤で使用されたマスターも、元々は1977年にRSOレコードの配給元である米ポリドール・レコードが本作を製作した際に使用したオリジナルUS盤のマスターテープだったわけですが、これまでに申しましたとおり、ユニバーサル社で2008年に起こった大火事により、ほとんどのアーティストのアメリカ盤オリジナルマスターテープが焼失してしまい、この「Slowhand」のアメリカ盤アナログマスターテープも焼失しましたので、もはや本盤以上の高音質でUSマスターをリマスターすることは不可能な状況になっています。そう考えますと、本盤のサウンドは一度は味わってみられてもいいのではないかと思います。
Taken from the original US Mobile Fidelity Sound Lab (UDCD 553) from Mobile Fidelity Sound Lab "Original Master Recording" Collection
1. Cocaine 2. Wonderful Tonight 3. Lay Down Sally 4. Next Time You See Her 5. We're All The Way 6. The Core 7. May You Never 8. Mean Old Frisco 9. Peaches And Diesel