バンドが活動停止してから4年が過ぎ去ったU.K.。ホールズワースとウェットンも世を去って2年が過ぎ去り、ジョブソンもライブ活動の引退を表明した事で事実上U.K.は音楽界から消滅した訳ですが、そんな彼らが最後に本物の輝きを見せたのはジョブソン、ウェットン、ボジオによる第2期U.K.のリユニオンが実現した2012年でしょう。" NIGHT AFTER NIGHT 2012 "と銘打って5月1日からスタートしたツアーでは6月にここ日本にもその勇姿を見せた訳ですが、それももう7年前の話です。しかし今年2019年の夏、未だバンド消滅を惜しむ世界中のU.K.ファンを狂喜と驚嘆の渦に巻き込んだウルトラ級の超・高音質ステレオ・サウンドボード音源が突如ネット上にアップロードされた事を御存知でしょうか。それはリユニオン第2期U.K.が再始動してから僅か7日目の2012年5月7日に行われたウィルミントン公演、これを超高音質の完璧なステレオ・サウンドボードで完全収録した録音が出てきたのです。オフィシャルでもリリースされなかったこの時期のボード録音が出てきただけでも驚き(※ 恐らく史上初でしょう)なのですが、このソースがまた強烈で、何と当日収録されたステレオ・サウンドボード・マスターからDAT直に劣化ゼロでデジタル・クローンされているという、やや異常とも言えるウルトラ級の高音質ソースだったのです。これはまさに世界中のプログレ・ファンにとって今夏一番となる現在も進行中の" 事件 "であり、これを世界最速でプレス音盤化したものがこの最新作『WILMINGTON 2012』なのです!!ディスクスタートするといきなり浮上してくる低音...当然「Alaska」の導入部である訳ですが、ここで開始3秒もしないうちにこれが10年に1枚の超高音質盤である事が実感出来る筈です。左右チャンネルに振られる低音が次第にステレオ感を増し、アンサンブルが始まるとドラム、ベース、キーボードの3つのサウンド・レイヤーが圧倒的な解像度で重なる音像は近年稀に見る興奮を伴うでしょう。「Night After Night」でウエットンのボーカルが入ってくるとその伸びと艶が全方位に広がり、粒立ちの良いキーボード・サウンドがそれを包み込む。ボーカルに部分的なエコーが掛けられる箇所も素晴らしい音の拡散があって、どこでそのスイッチングをしているかまで手に取る様に分かるのです。「Thirty Years」では" こんなところにこんな音を入れていたのか! "というテリーの細かな仕事が随所で確認出来るのもトピックですし、アンサンブルが動き出す3:53からも奥行きと空間性が感じられるキーボードの海の中、ゴリゴリしたベースと超絶技巧のドラムが眼前で、しかもステレオ・サウンドで対話するのですからもうここで卒倒者続出でしょう。「Rendezvous 6:02」は前年にジョブソンとウェットンがアンコールの必殺チューンとしてピアノとボーカルのデュオで聴かせていましたが、ここではやはりテリーが主役である事を再認識されると思います。通常のAUD録音や凡庸なボード録音では録り切れないであろうかなり微細な打音まで明瞭に拾っており、ベースもウェットンの歌声を潰さない最良の按配でゴリゴリ響くのです。そして圧巻なのは「Carrying No Cross」。導入部の歌声の艶と伸び、全体を包み込むシンセの音色、3人が放つ全ての音色がパーフェクトなバランスで進行するのですが、特にドラムはタムが中央に、ハイハット類が右側、フロアタムやクラッシュシンバルが左側という感じで少なくとも3方向から立体的に音を録っていた事が伺え、単に記録用の録音とは考え難い音の構築をお感じになるでしょう。トラック(7)はジョブソンが自身のソロ・アルバム『THEME OF SECRETS』の中から「Inner Secrets」及び「Memories Of Vienna」でお馴染みの跳ねる硬質な球体のSEをバックにインプロヴァイズする様子がどこまでも澄み切った音色で駆け抜け、そのサウンド・シネマがステレオで徐々に形を成してゆく様子に知の好奇心が揺り動かされると思います。テリーのドラム・ソロも音程の異なるタムが右から左へ、また中央から右へと移動する様子が驚異的な至近距離で飛び出してきます。 「Danger Money」ではミキサー卓で取り込まれた原音の色彩が劣化ゼロで鮮やかに解き放たれ、そのサウンドの威力は響きと音色の軌跡まで見えるほど高解像で鋭く輝きます。これもあまりに音質が極上過ぎるため、ほぼ100%の方が非公式音源である事を忘れてしまうのではないでしょうか。「In the Dead of Night」は「Presto Vivace and Reprise」から雪崩れ込む短縮形の展開ですが(※ 御存知の通り5月1日の初日公演では「By The Light Of Day」も含むフル・バージョンで演奏していたものを、2日目以降はそれを省いた短縮形にしていました)、各楽器のシャープな粒立ちの良さとウェットンの歌声の直撃感はここでもたまらないものがあり、3人が個々でどの様に動いてどの様にこの演奏が形成されていたのかという情報量が凄まじく多い事に仰天される筈です。中盤に入るシンセサイザーのソロ(= ホールズワースによるギター・ソロの代行)にしても主旋律の音色とその周囲に充満させている別の音色とでハッキリと出音の差が確認出来ますし、その驚異的な音色の陶酔は全てのファンが初体験する過去からの贈り物と言えそうです。「Caesar's Palace Blues」も音色の表情が耳元でダイナミックに変わってゆく姿が完璧過ぎるサウンドで記録されており、ピチカートで入れるヴァイオリンの生々しい感触、炸裂感満点なドラムの躍動(※ 使い分けているバスドラのアタック感も凄いです)、そして勿論ブリブリ・ゴリゴリと唸りまくるウエットンならではのベースが一丸となってコーダのキメをパーフェクトに迎えてゆく姿が至高の絶品音質で報告されます。クリムゾンの「Fallen Angel」も2人がその音楽的な煌きを丁寧に綴り、描いてゆく姿が圧倒的な音像で登場しますし、「The Only Thing She Needs」も冒頭のドラムがリアル・ステレオで入ってくる至福の恍惚に眩暈を覚えると思います。更にここは伸びやかに冴え渡る高域感度の良さもトピックで、3:51から突入してゆく中盤から終曲に掛けての怒涛の演奏は各楽器の表情を完璧に捉え切りながら音色を微塵も濁さないという見事なボリューム感で収録されており、その演奏力だけでなく当日のエンジニアが残した音響芸術の技巧にも驚くばかりです。当然ながら既発盤などありません。史上初登場の第2期トリオU.K.リユニオンによる衝撃のオリジナル録音ソース、しかもそうして見事にミックスされた完璧なステレオ・サウンドボードで開演から終演までノーカット完全収録となれば、これが" 事件 "でなくて何でしょう。ステレオ・サウンドボード・マスターからDAT変換したものだけに優れた音質なのは当たり前ですが、これはもうブートレッグという枠を軽く凌駕したプロフェッショナル・レコーディングそのものですし、このまま業務用にも使用可能な驚異的解像度のサウンドとその仕上がりは、完成度の高い音を望むミュージシャン達が残した非公式な音源記録としては孤高にして無上のものでしょう。言い換えればこれは、その役目を終えて時の彼方へ旅立ったU.K.が2012年に遺していた不滅の記録であり、最後の地上の記憶です。★ 通常の家庭用コンポでも充分に愉しめますが、可能ならヘッドフォンでこれをお聴きになる事を強く推奨致します。あまりにパーフェクトなステレオ・サウンドに仰天すること間違い無しです!!
Live at World Cafe Live at the Queen, Wilmington, DE, USA 7th May 2012 STEREO SBD
Disc 1(61:50)
1. Alaska 2. Night After Night 3. Thirty Years 4. Rendezvous 6:02 5. Carrying No Cross 6. Keyboard / Violin Solo 7. Drum Solo
Disc 2(39:57)
1. Eddie Jobson MC 2. Danger Money 3. Presto Vivace and Reprise 4. In the Dead of Night 5. Caesar's Palace Blues Encore: 6. Fallen Angel 7. The Only Thing She Needs
STEREO SOUNDBOARD RECORDING
John Wetton - Bass, Vocal Eddie Jobson - Keyboards, Electric Violin, Vocal Terry Bozzio - Drums, Percussion