“1977年の洋楽シーン”が吹き出す超極上ラジオアルバム・シリーズ“HARD ROCK WEEK 1977”。その最終夜がリリース決定です。いきなり「シリーズ」と言われても「?」かも知れません。本作に収められているのは1977年に放送されたFMラジオ番組『狂気のプログラム:ハード・ロックの7日間』。これは人気番組“ヤング・ジョッキー”の季節特番で、1週間に渡って毎日ハードロックのリクエストに応え続けていくというものでした。番組は1時間枠×7日間あったわけですが、その前半4日間を収めた4枚組『HARD ROCK WEEK 1977 DAY 1-4』が通常リリース。それに対し、本作は7日目となる最終日「1977年4月3日」放送分を収録しています。気になるクオリティは、まさに絶品。当店ではコアな記録マニアによるオリジナル・マスターで数々の音楽番組をアーカイヴしておりますが、本作もその1つ。当時のハイエンド機材を使っているだけでなく、電波状況や保存環境にも万全が尽くした徹底ぶり。そのオリジナル・マスターから流れ出るのは、まさに当時の放送電波が時空を超えて飛んできたよう。内容が内容だけに相応しくない表現かも知れませんが、いわゆる完全オフィシャル級サウンドボードというヤツなのです。さて、本題。4枚組『HARD ROCK WEEK 1977 DAY 1-4』の解説でも触れましたが、本作最大のポイントは1977年の時代感。日本の洋楽シーンで知らぬ者のいない超有名DJがリクエスト葉書を読みながら曲をかけていく。超大物な定番バンドは前半に出尽くした感もあり、本作ではランキングでもやや下位の10組が紹介されています。ここで、そのラインナップを見てみましょう。
13位/139票:MONTROSE 16位/86票:BLACK SABBATH 24位/54票:TED NUGENT 30位/43票:MOUNTAIN 32位/39票:DEREK & THE DOMINOS 36位/35票:REX 49位/22票:FRANK MARINO & MAHOGANY RUSH 56位/18票:STATUS QUO 58位/17票:10cc 69位/13票:J. GEILS BAND
……と、このような感じ。番組は7日間で人気バンドが集中しないようにランダムにしているので、順位も歯抜けになっています。「7日間で100曲」を努力目標にしていたものの、結果としては77曲で終了。順位を見ても最終日がわりと下位だった事が分かります。中身を見てもDEREK & THE DOMINOSや10ccが「ハードロック」として紹介されている辺りに70年代らしさが漂いますし、まさかのREXがかかるのも1977年しかあり得ない時代感です。そして、そんな名曲群の合間に披露されるトークこそが面白い。来日したエリック・クラプトンやジェフ・ベックが日本のギタリストにサインを求めた秘話を明かし、10ccを「最近解散した……というか2つに分裂した」と紹介する。その「Silly Love」では「こまわり君(がきデカ?)はこの曲からアイデアをもらったみたいです」と語るのですが、「こまわり君」がどんな曲かも思い出せない……。そんな中で最終日の目玉として温存されていた(?)のがBLACK SABBATH。「ブリティッシュHRの御三家SABBATH/ZEPPELIN/PURPLEを戦わせて欲しいのです。ぜひぜひ」という熱いハガキを読み上げつつ、「得票数で戦わせますと、無残なくらいBLACK SABBATHが負けちゃう」とぶっちゃけしまい、70年代日本の現実を見せつける。また、「彼らは変わらないところが良いところで、トニー・アイオミなんてのはいつも同じようなギターを弾いてます」と評するのですが、当時はサウンドが変わった『TECHNICAL ECSTASY』じゃあ……。さらに「最近フィルムなんかを見たら、相変わらずって感じで頑張っていました」とも語るのですが、70年代のフィルム映像というとブリュッセル70(当時はパリ70と思われていました)か、「Sabbath Bloody Sabbath」「It’s Alright」のクリップか。いずれにせよ、それって「相変わらず」?と思わなくもない。ともあれ、発掘の進んだ現代視点とちょっと違う感じが心くすぐられるのです。また、この日は最終回とあって某DJの「ハードロック観」丸出しの総括も語る。「こうやってハードロックばかり聴いていると、みんな同じだなあという感じもしないではないわけですね。ハードロックってのは同じ事を意識的にやっているようなロックでありまして、常にロックシーンの主流にあり続ける音だなあという感じがするわけです。意識的にハードであろうとするのはロックであり続ける意志ですから、それはそれで良いと思うわけです」。ツッコミたい気持ちも湧きつつ、的外れでもない考察が実に興味深いのです。そして、極めつけがラスト・ナンバー。「実は得票ゼロ」「もっともナウなハードロック」と言って紹介するのがCHEAP TRICKの「Hot Love」。CHEAP TRICKほどの大物が得票ゼロなのに驚きつつ、よく考えてみると彼らのデビューは1977年2月。まだまだ知名度がなく、DJが熱心にプッシュしていた時代だったのです。「ハードロック」の言葉が持つ意味が広く、未だCHEAP TRICKが市民権を得ていなかった1977年の4月。そんな時代の洋楽シーンがスピーカーから吹き出してくる絶品のラジオ・アルバムです。
Broadcast Date : 3rd April 1977 (64:09)
1. Time Signal 2. DJ Intro 3. Mountain - Mississippi Queen (Live) 4. DJ Talk 5. Status Quo - Drifting Away 6. Rex - Trouble 7. DJ Talk 8. Montrose - Starliner 9. Frank Marino & Mahogany Rush - The Answer 10. DJ Talk 11. Derek & The Dominos - Bottle Of Red Wine (Live)
12. DJ Talk 13. 10cc - Silly Love 14. DJ Talk 15. J. Geils Band - Detroit Breakdown 16. DJ Talk 17. Black Sabbath - Sabbath Bloody Sabbath 18. DJ Talk 面白い 19. Ted Nugent - Hammerdown 20. DJ Talk 面白い 最後にニューバンドとしてチープトリックを紹介してる(まだ1票も来てない)
21. Cheap Trick - Hot Love 22. Outro/Time Signal 23. News 福田総理と園田官房長官らのソビエト漁業交渉。あまり今と変わってないのが面白い。