3年連続で来日が実現したロック・ミュージックの職人ニック・ロウ。その現場を伝えてくれる最新のオリジナル録音が登場です。そんな本作に収められているのは「2019年8月14日:夜公演」。昨年と同じく、今年の日本公演も東京・大阪で“1日×2公演”のペースだったわけですが、本作は“2日目の夜”にあたる。まずは、今回の来日日程でショウのポジションを確かめておきましょう。・8月13日:東京(夕公演)・8月13日:東京(夜公演)・8月14日:東京(夕公演)・8月14日:東京(夜公演)←★ココ★・8月15日:大阪(夕公演)・8月15日:大阪(夜公演)
以上、全6公演。本作は4回あった東京公演のラスト・ステージでもありました。そんなショウを記録した本作は、実に地味深い傑作オーディエンス録音。何よりも素晴らしいのは、ニックを間近に感じるプライベート感と姿が眼に浮かぶリアリティ。現場は約300人収容のクラブ規模の会場なのですが、そのスケール感が音に現れており、すぐそこにギターを抱えたニックを感じる。歌声にほんのり鳴りも感じるオーディエンス録音には違いないのですが、それが距離感と言うよりも密室感を演出している。ライヴの現場に立ち会うと「本物がそこにいるんだ」と感じるものですが、まさにその感覚がスピーカーから流れ出るのです。しかも、それがシンプルなギターの弾き語りだからこそ際立つ。ギターはピッキング・ニュアンスも繊細ならカッティングの力の入り具合まで克明に聞こえ、歌声は歌詞の1語1語に込められたイントネーションの表現力さえ豊かに感じられる。シンプルだからこそ鳴りが楽器同士の混じり合いを起こさず、美しいメロディに降り注ぐような美しさを与えている。ニックのショウと言えば演奏はもちろんのことMCのユーモアも楽しいものですが、親しみ感の漂う現場のムードまで正確に描き出してくれるのです。そんなサウンドで描かれるのは、長いキャリアでニックが残してきた名曲たち。ここで、その幅広い名曲コレクションを整理してみましょう。●LABOUR OF LUST(2曲)・Without Love、Cruel to Be Kind●AT MY AGE(2曲)・People Change、Long Limbed Girl●THE OLD MAGIC(3曲)・Stoplight Roses、Somebody Cares for Me、House for Sale●TOKYO BAY / CRYING INSIDE(2曲)・Tokyo Bay、Heartbreaker
●LOVE STARVATION / TROMBONE(3曲)・Love Starvation、Blue on Blue、Trombone ●その他(11曲)・Peace, Love and Understanding(THE NEW FAVOURITES OF)、Heart(NICK THE KNIFE)、Ragin' Eyes(THE ABOMINABLE SHOWMAN)、I Knew The Bride(THE ROSE OF ENGLAND)、What's Shakin' on the Hill(PARTY OF ONE)、I Live on a Battlefield(THE IMPOSSIBLE BIRD)、Lay It On Me Baby(新曲)・On A Far Celestial Shore(メイヴィス・ステイプルズ提供曲)、Alison(エルヴィス・コステロ)……と、このようになっています。まずポイントとなるのが広さ。何曲か演奏する軸のアルバムもいくつかありますが、それも2曲程度であり、やや多めに3曲選ばれているのも『THE OLD MAGIC』だけ。しかも、ショウの約半分がバラバラな時期から選ばれ、キャリアを満遍なく俯瞰しているのです。もちろん、その中にはBRINSLEY SCHWARZ時代の「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love and Understanding」や「Cruel to Be Kind」といった初期の曲もあれば、『AT MY AGE』『TOKYO BAY』といった比較的最近のレパートリーもたっぷり。今年リリースされたEP『LOVE STARVATION / TROMBONE』からは「Raincoat in the River」以外の全曲が演奏されますし、書かれたばかりの新曲「Lay It On Me Baby」まで歌ってくれる。さらにはメイヴィス・ステイプルズに提供した「On A Far Celestial Shore」やニックがプロデュースを手掛けたエルヴィス・コステロの「Alison」といった縁の名曲も披露する。まさにキャリアの集大成となるショウなのです。ロック史を彩ってきた名曲群と地味深い歌声。それをプライベート感いっぱいのサウンドで味わい尽くせるライヴアルバムの大傑作です。素晴らしいメロディが約80分ギリギリに詰まった音楽の宝箱。
Tokyo, Japan 14th August 2019: 2nd Stage TRULY AMAZING SOUND(from Original Masters) (79:49)
1. Intro 2. People Change 3. Stoplight Roses 4. Love Starvation 5. Long Limbed Girl 6. Ragin' Eyes 7. What's Shakin' on the Hill 8. Lay It On Me Baby 9. Heartbreaker 10. Without Love 11. Somebody Cares for Me 12. Tokyo Bay 13. Blue on Blue 14. I Live on a Battlefield
15. Cruel to Be Kind 16. On A Far Celestial Shore 17. Heart 18. House for Sale 19. Trombone 20. I Knew The Bride 21. (What's So Funny 'Bout) Peace, Love and Understanding 22. Alison