90年代JETHRO TULLを代表してきた極上ステレオ・サウンドボードの大幅アップグレード・マスターが新発掘。衝撃のサウンドが登場です。その衝撃サウンドで描かれるのは「1990年9月1日ロンドン公演」。“ウェンブリー・スタジアム”でのショウを記録した超絶級ステレオ・サウンドボード録音です。“ウェンブリー・スタジアム”と言えば超大物だけがコンサートを開ける栄光の大会場ですが、彼らステージに立ったのは一度きり。思わぬ形でグラミー賞を受賞したことで注目を集めていた頃で、FLEETWOOD MACやホール&オーツ、RIVER CITY PEOPLEと共に行われたフェス形式のショウ(彼らはFLEETWOOD MACに次ぐ準トリ出演)でした。また、当時のJETHRO TULLは『ROCK ISLAND』時代。まずは、当時のスケジュールからショウのポジションを振り返ってみましょう。●1989年《8月21日『ROCK ISLAND』発売》・9月18日-10月16日:欧州#1(22公演)・10月23日-12月10日:北米(38公演)
●1990年・5月4日-28日:英国(19公演)・8月25日-9月2日:欧州#2(5公演)←★ココ★・9月8日-15日:ブラジル(6公演)・9月22日:ミルトン・キーンズ公演 これが1989年/1990年のJETHRO TULL。『ROCK ISLAND』に伴うワールド・ツアー本編は5月に一区切り。その後はヨーロッパの夏フェスや南米などの巨大イベントに参加していました。本作のウェンブリー公演は、その「欧州#2」の4公演目にあたるコンサートでした。そんなショウは以前から極上サウンドボードが残された事でも知られ、公式盤『IN CONCERT』『A LITTLE LIGHT MUSIC』等とともに90年代の最高峰として知られてきました。もちろん、本作もそのサウンドボード録音なのですが、その意義はまったく異なる。ごく最近に公開された流出マスターなのです。しかも、公開したのはリリースされて衝撃を振りまいているU.K.の『WILMINGTON 2012』と同じ人物。今回もU.K.と同じようにミックス卓からダイレクトに録音されたDATクローンから起こされているのです。U.K.を体験された方ならもう心を決められていると思いますが、あの衝撃が再び襲いかかる1枚なのです。まず何より驚くのは、その長さ。これまでのサウンドボードは「Aqualung」までの約1時間収録だったのですが、今回のマスターは、その後のアンコール「Locomotive Breath」「Seal Driver / Third Hooray Theme」「Cheerio」まで収録し、70分を超える。それでもフェス形式のショートセットではあるものの、これまでアンコールなしだったと思われていたショウが、本当はずっと長かった事が判明したのです。その長さを超える衝撃がサウンド。これがもう強烈極まりない。卓直結だけにウェンブリーを埋め尽くす大観衆の存在感はほとんど感じられないのですが、そんな事はどーでも良くなる演奏音が凄まじい。サウンドボードですから密着してるのは当たり前なものの、そのディテールが異常。脳にプラグを突っ込まれたようなギターのダイレクト感、完全にセパレートしたドラムの鮮やかさ、細やかなヴァイヴの振動さえ心地良いキーボードの美しさ。それぞれに凄いのですが、特に圧倒的なのはベースでしょうか。ゴリゴリとしたアタックの強靱さも鮮烈なら、そこから生まれる鳴りも豊かで黒光りするようなグルーヴがたっぷりと響く。卓直結サウンドボードの場合、ともすれば乱暴なミックスになることもままありますが、本作にはその心配さえない。実は、公開された時点で丁寧なマスタリング処理が行われており、低音の濁りや中高音とのバランス調整、ステレオ感の増強なども施されていた。そのセンスも「本職のオフィシャル・エンジニア?」と思うほどに傑出しており、すべての音域で楽器1つひとつが鮮明さを競い合うようにクッキリとしつつ、それらが決して混じり合うこともないのです。音質的にもミックス的にも「完全オフィシャル級」と呼びたいところですが、実はそれ以上。それは卓直結ならではの生々しさ。これまたすべての楽器に言えることですが、一番実感できるのはイアン・アンダーソンのヴォーカルとフルートでしょう。フルートの金管やマイクの金網を吹き抜ける“息の流れ”まで感じ取れるリアリティは圧倒的。しかも、単に芯が丸出しなだけではなく(あくまで現場PAに併せたレベルの)エフェクトも絶妙にかけられ、その極わずかなエコー感がアンサンブルとの均整を整え、音楽作品としての品格まで宿らせている。「このまま公式リリースできる」と言ってしまうのはカンタンですが、とてもそれで片付けたくはない至高の音世界なのです。そんな超絶サウンドで繰り広げられるショウもまた、素晴らしい。セットは栄光の歴史を総括するような幅広さ。デビュー作の「Serenade To A Cuckoo」から最新作『ROCK ISLAND』のタイトル・ナンバーまで各時代の名曲をセレクト。『AQUALUNG』と『THE BROADSWORD AND THE BEAST』のみ厚めではあるものの、それでも3曲止まりであり、満遍なくキャリアをさらっている。また、前述のように、この当時のメンバーでは2つの公式ライヴ作『IN CONCERT』『A LITTLE LIGHT MUSIC』も残されているわけですが、それとの被りも少ない。前者とは「Thick As A Brick」だけですし、後者とも4曲程度。本作1本で大会場の記念碑コンサートを味わえる最高の音楽作品ですが、さらに『IN CONCERT』『A LITTLE LIGHT MUSIC』と併せて“90年代の三部作”ともなる超極上の銘品なのです。とにかくJETHRO TULL久々の、そして究極的な超極上ステレオサウンドボード・アルバムです。既発が存在する分、サウンドボードが丸っきりなかったU.K.ほど仰天しない……かと思いきや、やはりこのクオリティを前にしたら平静でもいられない。こんな音源と突然出逢えてしまうからブートレッグは止められない。
Live at Wembley Stadium, London, UK 1st September 1990 STEREO SBD(UPGRADE & LONGER) (71:20)
1. Intro Carmina Burana 2. Thick As A Brick 3. Living In The Past 4. Steel Monkey 5. Serenade To A Cuckoo 6. Rock Island 7. Pussy Willow / Pibroch (inst.) 8. My God 9. Bouree 10. My God (reprise) 11. Fat Man 12. Too Old To Rock 'N' Roll, Too Young to Die
13. Aqualung 14. Locomotive Breath 15. Seal Driver / Third Hooray Theme 16. Cherrio
Ian Anderson - vocals, flute, guitar Martin Barre - guitars, mandolin Doane Perry - drums, percussions Dave Pegg - bass, vocals Martin Allcock - keyboards, acoustic guitar