本作に収められているのは「1989年11月25日:東京ドーム公演」。完全に別のオーディエンス録音です。実は、本作を記録したのも名手。東京ドームでは2日連続公演となっており、2日目はCD『LOVE RESCUE ME』としてもご紹介している。本作は、そんな傑作と「同じ録音家による初日編」なのです。実際、本作もまたドーム離れした名録音。本編2CDに比べると鳴りが厚めではありますが、それは本編がえらく輪郭がクッキリとしているからこそ。本作の演奏音も空気感を割って届く力強さがあり、ヴォーカルは歌詞の1語1語までキチンと聴き取れ、ドーム録音ではスポイルされがちなベースもしっかりとセパレート。鋭いアタック音もグルーヴを生み出すヴァイヴもタップリと楽しめるのです。それはスペクタクル。遠く遠くに広がる大歓声の海がめちゃくちゃ広大で、そのうねりがボノの一挙手一投足に反応して蠢きまくる。誤解のないように念押ししますと、本作は大歓声にまみれて演奏が聴きづらい録音では(まったく!)ありません。骨太な演奏音と力強いボノの歌声がすべてを制圧している。しかし、そんなステージ音を下から炙るような群衆の熱狂もはっきりと感じ取れるのです。「Where The Streets Have No Name」でボノが「押忍、東京!」と叫ぶ瞬間の沸騰ぶりと言ったら……。さらに、演奏自体もスペクタクル。U2と言えば独特な爽やかで広大な音づくりが特徴ですが、それがドームの空間を満たして一層巨大に迫る。全編で効果を感じられますが、例えば「With Or Without You」。シンセが美しい世界を紡ぐ中でえらくクッキリとしたベースが曲を進め、ボノの切々としたヴォーカルが絡んでいく。その世界の広さがメロディの高揚感をグイグイと引き上げ、全身を包み込んでくるのです。そして、そのメロディに胸を熱くした大歓声が波となってステージへと押し寄せていく……。オーディエンス録音はサウンドボードがないライヴを聴くための代用品と考えられてしまうこともありますが、そうではない。極上のオーディエンス録音はオフィシャルやサウンドボードでは決して味わえない現場の3次元感覚やスケール感を伝え、音楽そのものさえスケールアップさせてしまう。本作はその見本。U2の音楽自体がオーディエンス録音に似合うと証明する音の証拠品なのです。世界を手中に収めたU2を目の当たりにした1989年の11月。あれから30年、遂に『THE JOSHUA TREE』完全再現を実体験する時が来ました。★こちらはスタンド席録音ですが、これもまた必聴の素晴らしい録音。
Live at Tokyo Dome, Tokyo, Japan 25th November 1989 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1
1. Opening 2. Where The Streets Have No Name 3. I Will Follow 4. I Still Haven't Found What I'm Looking For 5. MLK 6. With Or Without You 7. God Part II 8. Desire 9. All Along The Watchtower 10. All I Want Is You
11. Van Diemen's Land 12. The Star Spangled Banner/Bullet The Blue Sky 13. Running To Stand Still 14. People Get Ready
Disc 2
1. Angel Of Harlem 2. When Love Comes To Town with B.B. King 3. Love Rescue Me with B.B. King 4. Pride (In The Name Of Love) 5. 40