天才イングヴェイ・マルムスティーンのキャリアにおいて、特別すぎる輝きを放つ大名盤『ODYSSEY』。その来日公演を記録した名門キニーの大名盤が誕生。『ODYSSEY』ほど“マジック”と呼ぶのに相応しい名盤はないかも知れません。ネオクラシカルの創始者であるイングヴェイと、ポップ・センスとブルージーな歌声のジョー・リン・ターナーのコラボレーション。RAINBOWという下敷きがあったとは言え、本来ネオクラ向きではないポップな歌声と、本来ポップ向きではないネオクラ・ギターが絡み合い、アグレッシヴで厳格かつキャッチーで情感たっぷりなハードロックが生み出された。その妙味はジョン・サイクス時代のWHITESNAKEにも匹敵する奇跡の相性でした。そんなサウンドを熱烈に迎え、世界で最も深く愛したのは、ここ日本でした。本作は、そんな来日公演の最高傑作となるライヴアルバム。「1988年8月23日:横浜文化体育館」公演の極上オーディエンス録音です。何しろ、本作を記録したのは、かのキニー。日本ブートレッグ史そのものと言っても良い名門中の名門によるオリジナル・カセットからダイレクトにCD化された新名盤なのです。その気になるサウンドの前に、まずはショウのポジション。結局一度きりとなった奇跡のジャパン・ツアーだけに、当店では数々の傑作でアーカイヴ。そのコレクションも併せて日程で整理してみましょう。・8月16日:名古屋市公会堂 『FIRST ODYSSEY』・8月17日:大阪フェスティバルホール 『SPEED AT NIGHT』・8月18日:大阪フェスティバルホール 『LOST ODYSSEY』・8月20日:京都会館 『KYOTO 1988』・8月23日:横浜文化体育館 ←★本作★
・8月25日:日本武道館 『LIVE THE LEGEND』 以上、全6公演。インググヴェイはALCATRAZZの初来日から4年で日本武道館にも立ったわけですが、本作の横浜公園はその直前となるコンサートでした。このショウはオリジナル録音『LOST IN A DREAM』でレポートしたことがありますが、クオリティは雲泥の差。『LOST IN A DREAM』もパワフルな名録音ではありましたが、ホール鳴りで細部が曇り、やや不安定でもありました。本作も(キニーしては珍しく)スタンド席の録音なためにサウンドボード的なド密着感ではありませんが、その空気感はクリスタル・クリアに透き通り、ギターはおろかシンセの速弾きも1音1音までクッキリ。シンセのフレーズにイングヴェイが割り込んでも混じり合うことなく双方のラインが美しく浮かび上がるのです。もちろん、もう1人の主役ジョーにしても然り。その歌声は歌詞の1語1語まで聞き取れ、ヴィヴラートや声色の使い分けも鮮明に感じ取れる。まるで現代の録音機材で録音したような美しさ。さすがは“マジック”と呼ばれるキニーのスゴワザ録音です。しかも、本作は史上最長。キニー録音だけでも演奏のすべてを記録していましたが、「Far Beyond The Sun」「Dreaming(Tell Me)」の終了後にテープチェンジのカットがあり、終演後の場内BGM「Memories」は収録されていなかった。本作では、そうしたパートを『LOST IN A DREAM』で補完し、シームレスな完全フル録音を実現したのです。そのサウンドで描かれるのは、公式作『TRIAL BY FIRE』でも叶わなかった奇跡ツアーのフルショウ。ここで、そのセットを比較しながら整理してみましょう。
●RISING FORCE(2曲)・Far Beyond The Sun/Black Star ●TRILOGY(4曲)・Liar/Queen In Love/You Don't Remember, I'll Never Forget/Trilogy Suite Opus 5 ●ODYSSEY(8曲)・Rising Force/Deja Vu/Crystal Ball/Heaven Tonight/Dreaming(Tell Me)/Riot In The Dungeons
・TRIAL BY FIREで聴けない曲:Now Is The Time/Faster Than The Speed Of Light ●その他・TRIAL BY FIREで聴けない曲:I'll See The Light, Tonight『MARCHING OUT』/Adagio/Smoke On The Water ……と、このようになっています。『TRIAL BY FIRE』はライヴアルバムと映像で内容が異なっていますが、双方を併せてもフルショウではない。それに対して本作は、終始一貫のフル録音。そこでは聴けなかった名曲もたっぷりと楽しめる。また『ODYSSEY』ナンバーはその後のイングヴェイ/ジョーの双方で演奏してもいますので、その状況も確認しておきましょう。
●その後のイングヴェイ/ジョーのショウでも演奏(3曲)・Rising Force/Deja Vu/Dreaming(Tell Me) ●その後もイングヴェイは演奏(2曲)・Crystal Ball/Heaven Tonight ●双方とも、このツアーのみ(3曲)・Now Is The Time/Riot In The Dungeons/Faster Than The Speed Of Light
……と、このようになっています。イングヴェイもジョーも現役ですので今後も同じとは限りませんが、30年以上が経っているので恐らく変わらないでしょう。つまり、「Now Is The Time」「Faster Than The Speed Of Light」は『TRIAL BY FIRE』で聴けないだけでなく、両者のソロショウをかき集めても望めないわけです。さらにジョーが歌う「I'll See The Light, Tonight」も合わせ、このツアーだけの貴重な生演奏の数々をキニーのミラクル・サウンドで楽しめるのです。まさに奇跡。その後のイングヴェイは本来叙情派であるはずのヨラン・エドマンでさえハイトーン・シンガーとして扱うことしかできず、一方のジョーはイングヴェイほどパッションと閃き溢れる様式派ギタリストとは出逢わなかった。もしかしたら両者の最高傑作は『TRILOGY』『BENT OUT OF SHAPE』かも知れませんが、『ODYSSEY』は2人が組んだからこそ生まれた新世界だった。本作は、その特別なマジカルなフルショウを極上キニー・サウンドで味わえるライヴアルバムの大傑作なのです。
Live at Bunka Taiikukan, Yokohama, Japan 23rd August 1988 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1 (52:23)
1. Intro 2. Rising Force 3. Liar 4. Queen In Love 5. Deja Vu 6. You Don't Remember, I'll Never Forget incl. Street Of Dreams 7. Keyboard Solo 8. Crystal Ball 9. Adagio 10. Far Beyond The Sun 11. Bass Solo 12. Heaven Tonight
Disc 2 (58:54)
1. Now Is The Time 2. Drum Solo 3. I'll See The Light, Tonight 4. Trilogy Suite Opus 5 5. Guitar Solo 6. Dreaming(Tell Me) 7. Riot In The Dungeons 8. Faster Than The Speed Of Light 9. Black Star 10. Smoke On The Water
Yngwie J. Malmsteen - Guitars Joe Lynn Turner - Lead Vocals Jens Johansson - Keyboards Barry Dunaway - Bass, Vocals Anders Johansson - Drums