ニック・ロウのライブ映像を完璧なプロショット映像にて収録したDVD「LIVE FROM FIRST AVENUE 2019」は予想をはるかに上回る好評を博しており、彼の根強い人気ぶりを再認識させられました。それと同時に最新映像も素晴らしいが、彼のビンテージなライブ音源も出してもらえないか…というマニアからの声も寄せられることになったのです。中でも彼のソロ活動が日本で注目を浴び、熱心なマニアを獲得する時期となった80年代のステージは特に聞いてみたい…というもの。そこで今回は1984年の極上ライブ音源がリリースされるのですが、この年の彼は名作「NICK LOWE AND HIS COWBOY OUTFIT」をリリースし注目を浴びていた時期。よってライブもアルバム同様にバックバンド、カウボーイ・アウトフィットを従えています。本グループはスクイーズを抜けたポール・キャラック、グラハム・パーカーのルーマーを抜けたマーティン・ベルモント、そしてロウとは長い付き合いだったドラマーの故ボビー・アーウィンという精鋭で結成されたバンド。それだけにバックのタイトで勢いに溢れた演奏だけでも一聴の価値がある。そうして今回リリースされる8月のフォーレスト・ヒルズ・テニス・スタジアムでのライブは盟友エルヴィス・コステロの前座を務めた際のステージであり、45分ほどの長さの中、いかにも彼らのステージらしくサクサクと演奏が進みます。それにしても特筆すべきはその驚異的な音質。音源提供者が「サウンドボード」との但し付きで送ってきたほどオンな音像。彼が勘違いしてしまったほど極上クオリティのオーディエンス録音だったのです。何しろ圧巻な近さ。曲間の歓声のおかげでこれがオーディンスだと気付かせてくれるほど。もう一つ魅力的なのはロウやグループの実にいきいきとした演奏ぶり。中でも当時の新曲であった「Half a Boy and Half a Man」のリアルタイムならではのキラキラとした演奏は本当に魅力的。おまけにキャラックも「How Long (has this been going on?)」とスクイーズ時代の「Tempted」でリードボーカルをとっています。これら楽しい演奏を前に、観客も大いに盛り上がっており、極めつけはアンコールまでもらって「You’ll Never Get Me Up in One of Those」が演奏されるという、とても前座のステージだとは思えないいほどの熱狂が楽しい。確かに80年代以降のロウの活動が大ヒットとは無縁だったのは事実ですが、それでも自動な活動が実を結んでファンを確実に獲得していた時期。ましてや「NICK LOWE AND HIS COWBOY OUTFIT」の時期となればライブ演奏が悪い訳がない。そもそも1980年代から90年代にかけてロウのライブアルバムがリリースされることはなく、アンダーグラウンド界でもコアマニアの間でひっそりと流通していた彼のライブ音源。それだけに80年代におけるピークの一つともいえる時期のステージを最高の音質で捉えた今回のリリースはマニア感涙モノであること間違いなし。現在のいぶし銀全開なロウのステージも素晴らしいですが、彼のソロ・キャリアがエンジン全開となっていた時期はやはり格別。一曲目とアンコールがそれぞれ不完全収録な点は惜しまれますが、それが気にならなくなるほどの高音質で捉えてくれたオーディエンス・アルバム。あっという間に聞き終えてしまう至福の45分間をどうぞ。
Live at Forest Hills Tennis Stadium, Queens, NY, USA 18th August 1984 TRULY PERFECT SOUND (46:43)
01. Stick It Where the Sun Don't Shine 02. Saint Beneath the Paint 03. Marie Provost 04. I Knew the Bride (When She Used to Rock 'n' Roll) 05. Tempted 06. Cracking Up 07. Ragin' Eyes 08. Half a Boy and Half a Man 09. I Need You 10. How Long 11. Burning
12. You'll Never Get Me Up in One of Those
Nick Lowe & His Cowboy Outfit Nick Lowe - bass, guitar, vocals Paul Carrack - keyboards, vocals Martin Belmont - guitar Bobby Irwin - drums