今回はニック・ロウ1984年のステージを捉えたスーパークオリティ・オーディエンスだけでなく、比較的最近(とはいっても15年以上前!)の音源も同時にリリースいたします。こちらは2002年フィラデルフィアでのソロ弾き語りライブ。ロウは前年にアルバム「THE CONVINCER」をリリースして地道にライブ活動を続けたのですが、そうした時期を象徴するかのように、この弾き語りライブでもオープニングは同アルバムの「There Will Never Be Any Peace (Until God Is Seated at the Conference Table)」からスタート。その前のアナウンスでも「ワンダフル・ニューアルバム」と紹介されていました。先のアルバムがリリースされたのは前年の11月ですので、同曲を弾き語るロウの様子は明らかに力が入っている。そんな調子まで伝わってくるのは、一重にこの音源がPAアウトからのデジタル・サウンドボード録音だからでしょう。当然ながら音質は完璧であり、彼の息遣いまで聞こえてきそうなほど。PAアウトからのデジタル録音の場合、バンド演奏だとクリアネスばかりが押し出されてライブの臨場感というものが希薄になりやすい。ところが弾き語りでは音数の少なさが吉と出てシンプルな演奏のリアリティを伝えるのにうってつけ。それでいてステージで一曲一曲をじっくりと歌い上げてくれるロウの様子をドキュメントしてくれるという点で、デジタルによるPAアウトのサウンドボード録音は申し分のないもの。演奏時間自体はフォーレスト・ヒルズの時と同じく45分程度のステージなのですが、だからこそ音質の良さと相まった聞きやすさは抜群。何と言っても驚かされるのは、ここでロウが聞かせる歌に対して観客が見せた熱狂的な反応。PAアウトからのサウンドボードにもかかわらず盛り上がりが伝わってくるくらいだから、いかにイイ感じの一夜であったのかを思い知らされます。それもそのはず、この日は先のニューアルバムからの曲はもちろん、「Cruel To Be Kind」に「What's So Funny 'Bout Peace, Love and Understanding?」といったロウのクラシックも弾き語りにて披露してくれている。今年の夏の来日でもこれらの曲は弾き語りで聞かれましたが、何しろ今回は最高のサウンドボード。さらに85年の名盤「ROSE OF ENGLAND」でカバーさされていた盟友ジョン・ハイアットの名曲「She Don't Love Nobody」まで弾き語りで楽しめてしまう。元々ライブアルバムから縁遠かったロウも21世紀に入って二作ほどリリースしていますが、それらはどちらもバンドを従えたステージを収録したものでした。しかし今回は全編がアコースティック弾き語りでサウンドボードという、世界中のニック・ロウ・マニアが待ち望んでいたであろうライブ音源が遂にUXBRIDGEレーベルからリリース。まだ若さすら漂っていた1984年フォーレスト・ヒルズが動のバンド・ライブだとすれば、2002年のこちらは円熟味をたたえた、正に静のソロ・ステージ。シンプルだがロウの歌の良さがくっきりと浮き立つクリアネス。これはもう聞き惚れずにはいられない、最高のサウンドボード・アルバムです!
Live at Penn's Landing, Philadelphia, PA, USA 20th July 2002 SBD (46:54)
1. Intro 2. There Will Never Be Any Peace (Until God Is Seated At The Conference Table) 3. Soulful Wind 4. What's Shaking On The Hill 5. Has She Got A Friend ? 6. Lately I’ve Let Things Slide 7. Faithless Lover 8. Everyday 9. Cruel To Be Kind 10. Man That I’ve Become
11. She Don't Love Nobody 12. I'm Coming Home 13. You Inspire Me 14. Without Love 15. I Knew The Bride 16. What's So Funny 'Bout Peace, Love and Understanding?
SOUNDBOARD RECORDING