ZEP1977年ツアーのパフォーマンスの“動”が先週リリースされてあっという間にSold Outとなってしまった「LISTEN TO THIS EDDIE」がだとすれは“静”というべきは4月27日のリッチフィールド公演を収めた「DESTROYER」ではないでしょうか。77年ツアーにおいては長いこと唯一のサウンドボード録音であったことから、数えきれないほどのアイテムを生み出してきた超スタンダード。それでも近年は「DESTROYER FIRST GEN REELS」が決定盤とされ、これもまた短期間にてSold Outした名作でした。もちろん定番中の定番音源ですから、その再発を望む声はSold Out直後から寄せられていたのも当然かと。しかし今回登場する新たな「DESTROYER」。それは「FIRST GEN REELS」(以下、既発盤と称します)の単なる再発ではありません。今回も10年前にネット上に現れたファースト・ジェネレーション・バージョン(「Weedwacker」なる人物がアップロードしたもの)が元になっているのですが、既発盤においては「Moby Dick (Over The Top)」とジミー・ペイジのギター・ソロにおいてステージの演出上、音が左右に激しくパンされる箇所が何故か緩和されてしまい、ほとんどモノラルに近い状態となってしまっていたのです。元々PAアウトからのサウンドボード録音の場合、ミキサーが意図的に音を左右に振り分ければステレオとなるのですが、基本ステージで音が鳴らされることを前提としているのでステレオ分離でミキシングされることはほとんどありません。例えばエリック・クラプトンの76年ツアーやローリング・ストーンズの78年パサイックなどでライブ全体がPAアウトからのサウンドボードでステレオに仕立てられた状態の音源が存在しますが、そうした状態は例外と言うべきでしょう。よって「DESTROYER」といえば基本はモノラルなのですが、先に挙げた二曲になるとステレオとなる箇所が現れるのが正解。実際にCD黎明期に当時の「DESTROYER」のベストであったスコルピオ盤がリリースされた際など、ショップにはジミーのソロの箇所を挙げて「ステレオ出力の証明!」などと喧伝されていたものでした。確かに彼がテルミンを使ったフレーズを鳴らせば、まるでグルグル回るかの如く音が左右を飛び交ったものです。それをヘッドフォンで聞くと何ともこそばゆい思いをしたのが懐かしい。こうして元々が音質に秀でた「DESTROYER」ではありましたが、21世紀を迎えるとそのレベルは極められた感があります。ところが音質的には登りつめた一方でアコースティック・セットに謎めいたジェネ違いコピーの差し替えの起きたタイトルがあったり、あるいはベストタイトルとされた既発盤のように、例のステレオにパンする箇所でパンが始まらないなど、どのアイテムも何かしら欠点を抱えていたのは惜しまれるところでした。特にスコルピオ盤時代から音が左右に飛び交うステレオ感に慣れていたマニアからすると、最近の「DESTROYER」は何で音がパンしないのだろう…と思われのでは。そこで今回はあの眩暈がしそうなほどのステレオ演出もオリジナルな状態で収録しつつ、過去のアイテムで散見された欠点もしっかりとアジャスト。ライブ終盤におけるピッチの変動がそれに当たります。これがおざなりにされていたアイテムも多く、さらに緻密なレストアを敢行、取りこぼしのない「DESTROYER」へとじっくり仕上げました。そして未だに「DESTROYER」が1977年ツアーの定番であり続けるのは、サウンドボード録音というメリットだけに留まらない。確かに21世紀に入って77年ツアーから他の公演のPAアウトによるサウンドボードの発掘が相次いだ際、その地位が揺らぎそうになった時期もあったのですが、いざZEPのライブ音源が出尽くしてみれば、やはりツアー前半の典型的な一日をしっかりとドキュメントしてくれていた音源であることが判明。ZEP初心者など「LISTEN TO THIS EDDIE」のキレキレ・パフォーマンスがサウンドボード録音で聞けると期待してみたところ、そのギャップに戸惑ったものです。しかしここで聞かれる演奏こそが77年ZEPの通常営業であり、ましてやツアー前半の典型的な一日だったという。むしろ77年ツアーは演奏が肥大して聞き疲れする日もある。しかし「DESTROYER」の日はいい感じにツアー序盤のどっしりとした演奏が捉えられており、それでいて手堅さも兼ね備えているのが聞きやすさの秘訣。こうした中でもボンゾはオープニングからエンディングまで一貫して絶好調であり、LAの時のように一人で暴走しないのがいい。それにペイジも演奏が進むにつれてどんどん調子を上げていて、アンコールの「Trampled Underfoot」などは正に名演。だからこそ、冒頭に申しましたように“動”のエディーに対して「DESTROYER」は“静”という訳です。今も昔も変わらない1977年ツアーを代表するPAアウトからのサウンドボード録音。定番音源のファースト・ジェネレーションから丁寧にレストアしリリース。ここ10年くらいのベスト音源「WEEDWACKER」の1ST GENを最新リマスター。何度も出るライブですが、必ずなにかしらの汚点があり、決定的なタイトルは一切ありませんでした。今回下記以外には余計なことはほとんどしてません。(★★間違いなく、過去最良の「DESTROYER」です。)1. 位相修正 2. ピッチ修正 3. 音量の最小限の調整(僅かにリミッターかけて音量かせいでます) 4. 左右の音量バランスの違和感のない程度の調整。 5. 左右の周波数帯域バランス・チェック 6. プチノイズの除去(ほんの1-2ヶ所) 既発ではMoby Dick と Guitar Soloで、左右に振られるところがセンター寄せミックスになっていたので(あまり左右に振られてない)、故にステレオ感がなくなっていたが、今回のは、マスター通り、左右にパンされてます。
Live at Richfield Coliseum, Richfield, OH, USA 27th April 1977
Disc 1 (59:44)
1. The Song Remains The Same ★カットイン 2. Sick Again 3. Nobody's Fault But Mine 4. In My Time Of Dying 5. Since I've Been Loving You 6. No Quarter ★5:10カット
Disc 2 (44:52)
1. MC 2. Ten Years Gone 3. The Battle Of Evermore 4. Going To California 5. Black Country Woman 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. White Summer ★0:29カット 8. Black Mountain Side 9. Kashmir
Disc 3 (61:48)
1. MC 2. Moby Dick ★10:37付近~14:25付近 既発では本来時々パン処理されるはずが、終始センター定位ぽくなっており、パンされなくなってる。★本盤は左右にパンされている。 3. Guitar Solo ★10:09カット ★2:45付近~5:13付近間 時々左右にパン処理されるが既発ではセンター定位ぽくなっておりパンしない。★本盤は左右にパンされている。4. Achilles Last Stand 5. Stairway To Heaven 6. Rock And Roll★カットイン 7. Trampled Underfoot SOUNDOBOARD RECORDING