「FOREST HILLS 1984」はエルヴィス・コステロの前座と言う状況の中、完璧なオーディエンス録音にてソロ活動絶頂期のニック・ロウを捉えた驚きの音源として大好評を博しています。いわばこの時のアルバム・リリースが日本で玄人好みなミュージシャンという地位を築いたのは間違いなく、だからこそ1980年代のロウのライブ音源を聞きたいというマニアのリクエストが絶えないのは当然かと。そこで今回リリースするのはフォーレスト・ヒルズから半年後、ドイツのブレーメンでのラジオ・ライブ。となればサウンドボード録音なのは当たり前、ステレオで完璧なクオリティ。それ以上に驚かされるのはフォーレスト・ヒルズから半年、ロウと彼のバンド、カウボーイ・アウトフィットのライブサウンドの変貌。あの時はアルバム「NICK LOWE AND HIS COWBOY OUTFIT」のスマッシュヒットを受け、ニューオリンズを意識した快活なサウンドを鳴らしていたのに対し、ここではベーシックでストレートなロック・サウンドへと進化しているのです。にもかかわらず、当時レコーディング中だった名作「ROSE OF ENGLAND」があれほど(日本人好みな)ポップさへと仕上がったのですから、ロウやカウボーイ・アウトフィットが持っていた懐の深さを思い知らされるばかり。実際リリース前だった「ROSE OF~」からカバー曲「Seven Nights To Rock」が既に演奏されているのですが、アルバムバージョンよりもソリッドに演奏されているのに驚き。あのロカビリーの軽快さ全開なバージョンも良いのですが、ここでのストレートな演奏がまた実に魅力的。反対に「Hope To God I’m Right」と「Lucky Dog」は見事にアルバムの予告編的な演奏となっており、どちらも新曲ということからロウ以下、タイトで気合の入りまくった演奏が素晴らしい。もちろんフォーレスト・ヒルズの時と同様、ここでもポール・キャラックが二曲でリードボーカルをとっていますが、これらもその時と比べて明らかにソリッドでストレートな演奏へと進化している。1985年と言えばもはや音楽界はシンセ・ポップが全盛を極めた時期。にもかかわらず、ここまでストレートでシンプルなライブサウンドをロウ達が奏でていたことには驚かされます。それが進化して傑作「ROSE OF ENGLAND」のポップかつタイトにまとまったサウンドに結実したのだと思うと、ここでのライブはその過度期を捉えた貴重音源だとも言えるでしょう。いかにもラジオ放送らしく、ラストの「Half a Boy and Half a Man」が一分ちょっとでフェイドアウトなのは惜しまれますが、84年を代表する同曲が不完全なのは大したダメージではない。むしろ85年を迎え、傑作アルバムをモノにする直前の新曲群の演奏と全体を通してのサウンドの大きな変化にこそ価値がある。傑作アルバム「ROSE OF~」と同様コンパクトにまとまった最高のラジオ・ライブ。そのアルバムの芽生えを完璧な音質で捉えたドキュメントでもある。今回のリリースに際しては、少し下がっていたピッチをきっちりアジャストし、より完璧なサウンドボード・アルバムに仕上げました。これはニック・ロウ・マニアに掛け値なしに推したい一枚です。
Live at Schauburg, Bremen, Germany 27th February 1985 STEREO SBD (53:01)
01. The Rose Of England 02. Tempted 03. Little By Little 04. Cruel To Be Kind 05. Threw Away The Rose 06. Seven Nights To Rock 07. Maureen 08. I Knew The Bride 09. I Need You 10. Hope To God I’m Right 11. Lucky Dog 12. How Long Is This Being Going On?
13. Crackin‘ Up 14. Burnin’ 15. Half A Boy And Half A Man FM Broadcast Recording STEREO SOUNDBOARD RECORDING
NICK LOWE & HIS COWBOY OUTFIT Nick Lowe - bass, vocals Paul Carrack - keyboards, vocals Martin Belmont - guitar Bobby Irwin - drums