1970年ZEPライブ音源の中でブルーベリー・ヒルと並ぶ名演中の名演であると同時に、同年のライブ活動における千秋楽にもなったマディソン・スクエア・ガーデン。9月19日のショーは都合二回のステージが行われています。アメリカで大きなスターダムを獲得し、前年のような一日二回興行からは既に卒業していたのですが、当初6月に予定されていたMSG公演が、かのバス・フェスティバル出演を優先してキャンセルしてしまっため、アメリカのファンへのお詫びを兼ねて行われたのがこの日だったという。それら二回のステージはどちらもオーディエンス録音が存在し、両方の音源をベストな形で封じ込めたのが2017年リリースの「MADISON SQUARE GARDEN 1970」でしょう。非常にナチュラルな状態で二つの音源をCD化していたこと、そして何より演奏内容が抜群であったことから、2年ほど前にSold Outとなって久しいタイトル。「DESTROYER」がそうであったように、これもまたZEPライブ音源におけるエバーグリーンの一つとして、常に流通させておくべき存在ではないでしょうか。よって再発を望む声も当然ながら寄せられていたと同時に、Sold Outの直後から再発が検討されていました。それも1970年ZEPの強烈なステージを捉えた名音源ときた。こうなると単なる再発では芸がない。そこで「DESTROYER」の再発と同様、今回もリリース前に音源の徹底的な洗い直しを行いました。まずはファースト・ショー。メイン・ソースとなった「recorder 2」の「Thank You」間奏から曲の終盤にかけて頻発していたドロップアウトなどは修正不可能(「recorder 1」でこのパートが録音されなかったのが無念)ですが、ライブ終盤、「Whole Lotta Love」前でのプラントのMCから「recorder 1」に切り替わってから耳障りだった周期的な「ザーザー」という左チャンネル寄りのノイズを緩和。もちろんこの問題自体をイコライズにてもみ消すことは可能ですが、それをやってしまうと音質が変化してしまいますで、ここではノイズのバランスを緻密に調整することで不安定さを抑えた形で聞きやすくさせています。演奏の方は白熱のセカンド・ショーが控えていたことから、それと比べると押さえ気味なショーという先入観を持たれがちで、確かに70年アメリカ・ツアーの平均点といった出来に映ります。ところがどっこい、その平均点そのものが高いというのが70年ZEPの凄まじさ。プラントの声はオープニングから絶好調スクリーム炸裂ですし、それに輪をかけてペイジのプレイが乗りに乗っている。「recorder 2」はそんなペイジのギターを大きめなバランスで捉えてくれているのが魅力。70年ZEPと言えばライブが始まってすぐに「Dazed And Confused」を始めるというセットリストが特徴ですが、そこでペイジが聞かせるプレイが正に弾きまくり、という言葉がぴったり当てはまる壮絶なもの。もう指がスラスラ動いているという感じで、彼のギターがオンをオンなバランスで捉えてくれていることから、なおさら卓越したギター・プレイが楽しめるのです。そして有名な「What Is And What Should Never Be」の前における、ジミ・ヘンドリックス急死の報を告げるプラントの悲痛なMC。6月のキャンセルからZEPを待ちわびていたMSGのオーディエンスは本当に熱狂的なのですが、ここばかりは静まり返ってプラントのMCを聞き入っている。それでも気を取り直して演奏に戻ったZEPは二回目があることを踏まえ、やや短めにステージを切り上げるのですが、それでもアンコールに応えて演奏された「Communication Breakdown」は爆裂ぶりが凄まじく、曲調が似ていてインクルードさせるにはぴったりなゲス・フーの「American Woman」が登場(とはいってもプラントが曲名を発しただけですが)するのは約二週間前のホノルル公演に次いだ貴重な場面でした。セカンド・ショーに関しては21世紀初頭におけるZEPライブの大発掘音源の一つでした。同じ時期に4月のフェニックスも発掘されるなど、あの頃は1970年ライブの発掘が続いたことが懐かしく感じられます。それまでベールに包まれていた70年MSGセカンド・ショーのベールを剥がしてくれただけでなく、演奏内容が非常に素晴らしいことからアイテムがこぞってリリースされたものでした。こちらの音源に関しても「MADISON SQUARE GARDEN 1970」がベストとされていましたが、これまた再発に関しては音源を一から見直し。そこで判明したのは、元がモノラル録音だったにもかかわらず、過去にリリースされてきたほとんどのタイトルが疑似ステレオっぽく聞こえる妙な音の広がりと、ヘッドフォンで聞くと一目瞭然な定位のふらつきを抱えていたのです。これはテープデッキのヘッドのアジマスずれから来るような不安定さに近い状態でした。そこで今回は改めて音源をモノラル化させたことで、音源がもっていた本来のソリッドでウォーミーな状態を蘇らせたのです。このリアル・モノラルな状態へと復活したことで、演奏の輪郭もシャキッとした極めてスピーカー映えするソリッドな音質となっています。これに関しては、是非とも大音量で鳴らしてたっぷりとその感触をつかんでいただきたいもの。そして際立つのがセカンド・ショーでの凄まじいZEPの演奏ぶり。ジミヘン急逝という悲報から気を取り直し、1970年最後のステージを素晴らしいものにしようという気迫がみなぎっている。オープニング「Immigrant Song」から「Heartbreaker」にかけての雪崩れ込みからしてエンジン全開であり、特にプラントのスクリームがここでも強烈。またこの年を通してペイジとボンゾがリズム主体インプロ駆け引きの場としていた「Bring It On Home」の自由な展開は、翌年からエスカレートし始める彼らの「リズム遊び」の芽生えを感じさせるもの。しかし音源が発掘された当初から話題となったのは何と言っても「Whole Lotta Love」以降の大爆裂プレイ。それのイントロからしてジェフ・ベック・グループの「Rice Pudding」リフから幕を開け、二週間前のLAフォーラムでもやっていた、デビュー前ビートルズでおなじみ「Some Other Guy」からプラントが突如「The Train Kept A Rollin」を歌い出し、すかさずバンドがついてくるという意外すぎな展開は何度聞いても鳥肌モノ。この勢いを借りての「Out On The Tiles」もLAに次ぐ二つ目のライブ・バージョンとして極めて貴重なだけでなく、70年のプラントでなければ歌えないであろうスクリーミングとバックの三人によるパワー・リフが迫力満点。ここまでも千秋楽に相応しい盛り上がりでしたが、とどめとばかりにバスフェスの時以来の単体ロックンロール・メドレーが、しかも今回は「Girl Can't Help It」からスタート。そしてまさかの「How Many More Times」の途中で歌われた「Blueberry Hill」はLAフォーラムの時よりもスクリームを多用して歌い切るプラント。こうした壮絶な演奏も、今までおざなりにされてきた音の不安定さを解消したことで、さらに鮮烈に伝わってきます。しっとりとした雰囲気の(それでも絶好調な)ファースト・ショー、ZEPが持てる力のすべてを出し切ったセカンド・ショー。(音処理に関して)Afternoon Show 位相修正 プチノイズ除去 胸いっぱい以降は左chでザーザーいうノイジーな箇所一部、片chでMono化
Evening Show 位相修正 元が変なパン処理された音源であり(既発もエレマジ以外は殆どで変なパン処理されてたはず) 元々の録音はモノラルなはずなので、元のリアルモノラルに戻しました。よって、格段に聞きやすくなってます。
Live at Madison Square Garden, New York, NY, USA 19th September 1970 Afternoon & Evening Shows
Afternoon Show Disc 1 (68:39) 01. Introduction 02. Immigrant Song 03. Heartbreaker 04. Dazed And Confused 05. Bring It On Home 06. That's The Way 07. Bron-Yr-Aur 08. Since I've Been Loving You 09. Organ Solo 10. Thank You
Disc 2 (43:26) 01. MC 02. What Is and What Should Never Be 03. Moby Dick 04. Whole Lotta Love 05. Communication Breakdown
Evening Show Disc 3 (70:27) 01. Introduction 02. Immigrant Song 03. Heartbreaker 04. Dazed And Confused 05. Bring It On Home 06. That's The Way 07. Bron-Yr-Aur 08. Since I've Been Loving You 09. Organ Solo 10. Thank You
Disc 4 (74:36) 01. What Is And What Should Never Be 02. Moby Dick 03. Whole Lotta Love 04. Out On The Tiles 05. Communication Breakdown 06. The Girl Can't help It / I'm Talking About You / Twenty Flight Rock 07. How Many More Times