歴史的大名盤『MASTER OF PUPPETS』を引っさげ、クリフ・バートンと共に世界を蹂躙していた1986年のMETALLICA。その極上サウンドボードが登場です。そんな本作に収められているのは「1986年5月29日オークレア公演」。その準オフィシャル・サウンドボード録音です。「準オフィシャル」とは、やや見慣れない書き出しをしてしまいましたが、本作はいわゆる「ハーフ・オフィシャル」……では、ありません。一般的な区分に直しますと「放送サウンドボード」。ネット/衛星ラジオ局“SiriusXM”が放送したステレオ・サウンドボード録音です。では、何が「準オフィシャル」なのか。それは放送自体がメンバーの完全監修だったからです。そもそも、この番組が放送されたのは“2017年12月8日”のこと。その1月前には『MASTER OF PUPPETS』のデラックスBOXセットが発売されており、そのプロモーションだったわけです。あの巨大BOXには膨大なサウンドボード音源も収録されていたわけですが、本作はその「アウトテイク版」とでも言うべきもの。BOXには収録されず、プロモーションに回された公式サウンドボードなのです。しかも、この番組は当のラーズ・ウルリッヒとジェイムズ・ヘットフィールドも出演。本作の冒頭でもラーズ自身が(例の調子で:笑)しっかりと解説しているのです。当然の事ながら、そんな「準公式サウンドボード」は放送直後から話題を呼び、『EAU CLAIRE 1986』として大ヒット。瞬く間に完売・廃盤となってしまいました。もちろん、貴重なクリフ時代サウンドボード、それもオフィシャルお墨付きの極上モノを廃盤のままにしておくことはできない。いつでも、誰でも手に出来なくてはいけない。そこで、今一度ブラッシュアップを試みての再登場となったのです。そんな本作に吹き込まれているのは、まさに暴虐スラッシュ・メタルの極北。実のところ、“DAMAGE, INC. TOUR”はクリフの死だけでなく、ジェイムズが骨折してジョン・マーシャルがギターをサポートした時期もある。ここで、当時のスケジュールからショウのポジションを確かめておきましょう。《3月3日『MASTER OF PUPPETS』発売》・3月27日-6月21日:北米#1(58公演)←★ココ★・7月5日+6日:欧州#1(2公演)・7月11日-25日:北米#2a(11公演)《7月26日:ジェイムズ負傷》・7月27日-8月3日:北米#2b(6公演)・9月10日-25日:欧州#2(12公演)
《9月26日:ジェイムズ復帰》・9月26日:ストックホルム公演《9月27日:クリフ死去》 これが『MASTER OF PUPPETS』リリースからクリフが亡くなるまでの歩み。ジェイムズが骨折したのは7月の後半で、その後の「北米#2b」「欧州#2」ではマーシャルがヘルプ。ジェイムズがギターでも復帰したストックホルム公演が奇しくもクリフ生前最後のショウとなってしまいました。本作のオークレア公演は、そんな数々の不幸が起きる前。「北米#1」の42公演目にあたるコンサートでした。そんなショウを記録した本作は、クオリティもまさに「準公式」。『MASTER OF PUPPETS』も無加工でワイルドな卓直結サウンドボードが収録されていましたが、本作も酷似。暴虐なまでのスラッシュ・メタルが超ド直結で脳みその流し込まれる。リフのエッジはどこまでも鋭く、爆走するラーズのビートも超ビビッド。もちろん無論、天才クリフ・バートンの「(Anesthesia) Pulling Teeth」も土足で脳みそに上がり込んでくる。実のところ、再登場に際してリマスターも試みたのですが、オフィシャルの仕上がりがあまりにもビビッド。公式BOXのサブテキストという意味合いからも大きく変えることはできませんでした。冒頭ラーズの語りパートを本編と感触を揃え、ヘッドフォンでも分かりづらいわずかなノイズのトリートメントのみ(放送では「Seek & Destroy」終盤の約2分半が録音漏れのままでしたので、5月23日タルサ公演の公式SBD〈以前は24日ケープジラード公演とされた音源です〉で補完。シームレスに楽しめるようにいたしました)。正直なところ、前回盤『EAU CLAIRE 1986』をお持ちの方にはお薦めしにくいのですが、それくらい究極の決定盤サウンドでもあるのです。そして、そのサウンドで描かれるのは猛攻スラッシュ・パラダイス。前述した『MASTER OF PUPPETS』BOXはクリフ時代サウンドボード3種が目玉でしたので、比較しながらセットも整理しておきましょう。・KILL ‘EM ALL:Seek & Destroy/(Anesthesia) Pulling Teeth(★)/Whiplash(★)
・RIDE THE LIGHTNING:For Whom The Bell Tolls/Fade To Black(★)/Creeping Death・MASTER OF PUPPETS:Battery/Master Of Puppets/Welcome Home(Sanitarium)/The Thing That Should Not Be(★)/Damage Inc.・カバー:Am I Evil?
※:「★」印は公式BOXのイースト・ラザフォード公演/ハンプトン公演のSBDでは聴けない曲。……と、このようになっています。BOXで最長だったシカゴ公演(2LP)には敵いませんが、1CDずつで収録されたイースト・ラザフォード公演/ハンプトン公演では聴けないナンバーもしっかり4曲。特に美味しいのはクリフのベースが唸る「(Anesthesia) Pulling Teeth」と究極アンセム「Whiplash」でしょう。前者は「Damage Inc.」へと雪崩れ込むのが最高にスリリングですし、後者は破綻寸前のアンサンブルを取り繕うそぶりもなく大爆走。糞ったれ!な初期衝動がギャリギャリとした音塊になって脳みそをブン殴ってくる激烈パフォーマンスなのです。オフィシャルBOX『MASTER OF PUPPETS』をお持ちの方には、あの超大作を完璧にする補完盤として。お持ちでない方には、お試し盤として。そして、BOXとは無関係でも究極の暴虐スラッシュ・アルバムとして。いかにように聴いても超絶なる「準オフィシャル」なステレオサウンドボード・アルバム。
Live at Old Mill Expo Center, Eau Claire, WI. USA 29th May 1986 STEREO SBD(UPGRADE) (64:40)
1. Introduction 2. Battery 3. Master of Puppets 4. For Whom The Bell Tolls 5. Welcome Home (Sanitarium) 6. The Thing That Should Not Be 7. (Anesthesia) Pulling Teeth 8. Damage Inc. 9. Fade to Black 10. Seek & Destroy 11. Creeping Death 12. Am I Evil? 13. Whiplash
STEREO SOUNDBOARD RECORDING James Hetfield - Guitar, Vocal Lars Ulrich - Drums Cliff Burton - Bass Kirk Hammett - Guitar