
「GOIN' BACK TO THE ROOTS」。このタイトルを聞いただけでピーンと来たあなたはストーンズ・マニア。1972年アメリカ・ツアーにおける名盤の一つ。69年と違い、72年ツアーからはオーディエンス録音の良質LPタイトルがあまりリリースされませんでした。TMOQ系列が出した「BURNING AT THE HOLLYWOOD PALLADIUM 1972」と「GET YOUR ROCKS OFF」はどちらも内容はともかく、音質面では不満が残るクオリティだった。一方ライバルであるContra Band Musicはそれらを凌駕するクオリティのアルバムをリリース。それが「GOIN' BACK TO THE ROOTS」(以下「GBTTR」と称します)でした。
最初に申しましたように「GBTTR」はContra Band Musicからのリリースだった訳ですが、何故かライバルだったレーベルRubber Dubberの名前やデザインを騙ったスタンプ・カバーにてリリースされています。Rubber Dubberと言えばストーンズのエッセン公演「EUROPEAN TOUR 1970」やブルーベリー・ヒルと同じ日の別録音として有名な「LIVE AT LOS ANGELES FORUM 9-4-70」といった名盤をリリース。しかし彼らは1971年に摘発されそうになったことから活動を停止。おまけに検挙されることを恐れたRubber Dubberはその際にレコードのスタンパーやマスターテープの一切を破棄。そのせいでレーベルが出したアルバムはどれも当時のLPでしか聞けない貴重音源となってしまいました。それだけに「GBTTR」がRubber Dubberを騙ってリリースされた際にも、本家からのリリースでないことはすぐに見破られてしまったのです。さらに「GBTTR」のマトリクスには「CATCH ME IF YOU CAN(捕まえられるなら捕まえてみろ)」という挑発的なメッセージが刻まれていたという。このことからも解るように、あえてRubber Dubberを名乗った上でそのようなメッセージまで発信してみせたのには、「俺たちはRubber Dubberの二の舞にはならない」という自信があったのかもしれません。こうしてひねくれたパッケージでリリースされた「GBTTR」ですが、それと同時にアメリカ・ツアーでのミックの姿を捉えた写真を元にした白黒スリックのパッケージでもリリースされています。一般的にはこちらの方が良く知られているところかと。そしてレーベルにもミックやキースの写真を使うなど、この時代のブートレグとしては驚くほど凝った作りとなっている点も特筆に値します。当時としては非常に良好な音質であったことに加え、パッケージにいくつかのバリエーションが存在している(スタンパーまで何度も作り直されている)ことが物語っているように、好評を受けて何度もプレスされたのでした。フォーマットがLP一枚ですのでコンサートを完全収録するのは土台無理な話なのですが、その制限の中でツボを押さえた選曲でまとめているという点もポイントが高い。 現在「GBTTR」の名の下でリリースされたCDはほとんどが同日の別音源を使用しています。そちらのオーディエンス録音はキースのギターの音が大きくて荒々しい、骨太なクオリティ。そして何よりLPと違って当日の全曲を収録しているという大きな魅力があった。ところがトータルな音質に関してはLPの方が明らかに上。72年7月5日ノーフォーク当日の空気をたっぷりと吸い込んだ上、すぐさまビニール盤に刻み込まれてリリースされた録音の鮮度は実に素晴らしい。クリアネスと程よい距離感も魅力であり、先の別音源よりも演奏全体のバランスにも優れている。それだけに「不完全だとしても、あのLPの音をCDで聞きたい…」という願いがマニアから寄せられるのは当然のこと。この名盤は一度だけLPからCD化されたことがありましたが、それも今や20年以上前。おまけにスクラッチノイズも壮大に入ってしまっており、リリース当初から評判が悪かった。そこで最新のテクノロジーを駆使し、Contra Band LP(あるいは偽Rubber Dubber)久々のCD化を敢行。Contra Bandは基本的に盤質が悪いというジレンマが見受けられるのですが、それゆえに生じるスクラッチノイズを徹底的に削除。それでいて原盤が持つ絶妙の聞き心地を保つことに細心の注意を注いだ上でのCD化。とどめはヴァージニアでのショーであることをアピールしたかったのでしょう、LPでは「Sweet Virginia」から始まっていましたが、今回は実際のセットリストに沿った曲順へと正しています。そして72年アメリカ・ツアーの美味しいところを一枚のLPへ見事にまとめた編集と、何よりこの日の絶好調なミック・テイラーのプレイを楽しむのなら、やはりこちらの方がいい。この日のテイラーは本当に冴えわたっていて、オープニングの「Brown Sugar」からして壮絶。特に演奏後半になると「弾きすぎじゃね?」とツッコミを入れたくなるレベル。しょっぱなから彼がこの調子ですので、「Gimme Shelter」の間奏ではヨーロッパ73も真っ青な流麗フレーズが炸裂。さらに「You Can’t Always Get What You Want」や「Jumping Jack Flash」になると、もはや芸術と呼びたくなるほどの超絶フレーズを連発。一方でバンド全体がいつもよりルーズな調子で演奏する「Bye Bye Johnny」もいい。今回同時リリース「フィラスぺ」で頂点を迎えた72年ツアーの7月という絶頂期の始まりがこの日なのかもしれません、そうした演奏の素晴らしさを古びたLPでなく安定の限定プレスCDにてじっくりと味わえるビンテージ・オーディエンス・アルバム。これぞマニアが聞きたかった「音」ではないでしょうか。このLPの音源は未だにテープが発掘されておらず、もはや見つかる可能性も低いので、これはもう間違いなく、本音源の決定盤!!間違いなく、ファン必聴・必携の一枚です!!
The Scope, Norfolk, Virginia, USA 5th July 1972 Taken from the original LP "Goin' Back to the Roots American Tour - July 1972" (Rubber Dubber Rec., 08A1 BADAV / 08B1 KYO) (46:19)
1. Brown Sugar 2. Rocks Off 3. Gimme Shelter 4. Happy 5. Tumbling Dice 6. Sweet Virginia 7. You Can't Always Get What You Want 8. Band Introductions 9. Bye Bye Johnny 10. Rip This Joint 11. Jumping Jack Flash 12. Street Fighting Man