ZEP栄光の1971年はリターン・トゥ・ザ・クラブと名打たれた小会場ツアーからスタートしています。人気が爆発して既にLAフォーラムやマディソン・スクエア・ガーデンにまで上り詰めた彼らが原点回帰と母国のファンへの感謝を込めて行った、所謂「クラブ廻り」ツアーでした。5月から7月にかけてのヨーロッパの音源が希少であることは今回のミラノ公演のリリースが物語っていますが、このクラブ・ツアーに関しても音源が乏しい。ライブの場所が大会場でないということが災いしたのでしょう。しかし幸いなことに、ツアー初日のベルファストに関してはオーディエンス録音が存在しています。おまけにツアー初日ということは、これが歴史的名盤「IV」収録曲の初披露、中でも不朽の名曲「天国への階段」のライブ初演という非常に歴史的な一日でもある。極めて重要な一日ですので、21世紀を迎えるといくつものアイテムが登場したもの。ところが、それらは頻発するカットを補うべく同じ71年でも全然違う時期のライブ(=イプスイッチ)音源が強引に補填された一方でピッチの狂いは放置プレイ、とどめは目玉の「天国への階段」でのカットに加えてテープの劣化による奇妙な音の発生という、音源の貴重さを通り越してマニア泣かせなアイテムがいくつも登場してしまいました。それでも話題を呼んだのは、一重に「天国への階段」初演が聞けたということに他なりません。カットが頻発するという問題以外にも、「Moby Dick」(これも途中からの録音)以降になると音が歪んで聞き辛くなるという問題も挙げられます。それでもなお一聴の価値がある音源であるという点に関しては、「天国への階段」初演だけに留まりません。この音源で数少ない無傷な状態での収録かつ、これまたライブ初演となった「Black Dog」がとにかく強烈。驚いたことに、プラントが完全に「IV」アルバムバージョンのメロディ、つまりスクリーム全開で歌っているということ。71年は同曲が高いメロディラインで歌われた唯一の年としてマニアに愛されていますが、ここまでアルバムと同じメロディで歌い上げてみせているのが本当に珍しい。これもライブ初演ということに加え、この年最初のライブであったということが大きいのでは。ここでの壮絶なプラントのスクリームを聞いてしまうと、あの928や929ですら抑え気味に歌っているかのように映ってしまうほど。先の理由から「Whole Lotta Love」以降は歪みが生じて聞き辛い箇所も多いのですが、それでもプラントのスクリームが強烈な様はしっかりと伝わってきます。その雰囲気の中で歌われた、これまたライブ初演の「Rock And Roll」でもプラントは当たり前のようにハイピッチで歌い上げている。この歴史的だが難ありなオーディエンス録音は幸いにも近年になってマスターカセットが発掘。カットの頻発は今回も変わりませんでしたが、往年のアイテムのような雑で脈略のない別音源編集、さらにはテープ劣化による笛のような奇妙な音も払拭され、格段に聞きやすくなりました。それでもまだマニア向けなレベルであることに変わりはありませんが、衝撃的ですらあるプラントの全開スクリームと「IV」収録曲の歴史的なライブ初演というドキュメント!
Live at Ulster Hall, Belfast, Ireland 5th March 1971
Disc 1(54:31) 1. Immigrant Song 2. Heartbreaker 3. Since I've Been Loving You 4. Black Dog ★初演 5. Dazed and Confused 6. Stairway to Heaven★初演 7. Going to California★初演 8. What Is and What Should Never Be
Disc 2(49:26) 1. Moby Dick 2. Whole Lotta Love (medley incl. Let That Boy Boogie, Bottle Up and Go, Long Distance Call) 3. Communication Breakdown 4. Rock And Roll★初演 5. Bring It On Home