2020年に世界を駆け巡った“マイク・ミラードの大元マスター発掘”の報。今まさに次々と超極上の記録が次々と飛び出し、衝撃は刻を経るごとに薄れるどころか拡大の一途を辿っています。そんな新発掘コレクションから、また1つの秘宝が誕生。リンダ・ロンシュタットの超極上ライヴアルバムが登場です。そんな本作が記録されたのは「1990年10月22日コスタ・メサ公演」。その極上オーディエンス録音です。マイク・ミラードと言えば、何よりも70年代の録音で有名なのですが、本作は90年代の作品。彼自身は1994年に亡くなっておりますが、現在のリサーチでは1992年まで録音していた事が確認されており、本作はそんな後期コレクションの1つなのです。また、今回の大元マスター発掘では、既存録音のアップグレードも話題となっておりますが、同時にまったくの初登場録音も衝撃となっている。本作は後者で、これまで知られてこなかったミラード録音なのです。ミラード、ミラードと繰り返してしまいましたが、もっとも重要なのはショウそのもの。当時はアーロン・ネヴィルとの共演シングルが次々とヒットし、アルバム『CRY LIKE A RAINSTORM, HOWL LIKE THE WIND』も久々の(そして最後の)全米トップ10入りを果たしていた時期。まずは、そんな当時のスケジュールからポジションを振り返ってみましょう。
・3月17日:BAY AREA MUSIC AWARDS出演・6月6日:ハンプトン公演・8月9日-9月1日:北米#1(14公演)・9月11日-30日:北米#2(9公演)・10月9日-28日:北米#3(12公演)←★ココ★ これが1990年のリンダ。アルバムは1989年10月にリリースされつつ、ツアーが行われたのは翌1990年の8月から北米のみ。本作のコスタ・メサ公演は「北米#3」終盤のコンサートでした。そんなショウを真空パックした本作は極上……と、わざわざ言うのも躊躇われる。何しろ、あの伝説の録音家コレクションなのですから極上なのは当たり前。まっすぐ手元に届く芯の力強さも、クッキリとした輪郭や細やかなディテールも、距離感を感じないダイレクト感も、すべて揃っていて当然なのです。もちろん「まるでサウンドボード」と呼ぶタイプでもない。これは欠点ではなく、むしろ賛辞。気品まで漂わせる鳴りはどこまでも美しく、生々しい現場の歓喜がリアルこの上ないのです。ギターはピッキングのニュアンスまで感じられ、ベースのうねりやドラムの……いやいや、もう1つずつ語っても仕方がない。あえて特筆するなら、やはりリンダの歌声でしょうか。歌詞の1語のどころか1音節に込められた感情まで滲み出し、ヴィヴラートの細かな幅も歌いきって消えていく刹那のニュアンスまで鮮明。しかも、リアル。目の前で発せられた息づかいまで感じられ、その一方で会場の隅々まで広がっていく。まさに「肉声」と呼びたい現実感まで宿っているのです。そんなサウンドで描かれるのは、最後の全盛期とも言うべきフルショウ。ここでセットの内容も整理しておきましょう。クラシックス(13曲)・悪いあなた:When Will I Be Loved?/You're No Good
・哀しみのプリズナー:Heatwave・夢はひとつだけ:It's So Easy/Blue Bayou/Tumbling Dice/Poor Poor Pitiful Me・ミス・アメリカ:Ooh Baby Baby/Just One Look/Back In The U.S.A.・激愛:Hurt So Bad/I Can't Let Go・ゲット・クローサー:The Moon Is A Harsh Mistress
クライ・ライク・ア・レインストーム(9曲)・Still Within The Sound Of My Voice/Shattered/I Keep It Hid/Adios/Don't Know Much(★)/I Need You(★)/All My Life(★)/Trouble Again/Cry Like A Rainstorm ※注:「★」印はアーロン・ネヴィルとの共演曲。
……と、このようになっています。マルチ・プラチナムの大ヒット作『HEART LIKE A WHEEL(夢はひとつだけ)』『LIVING IN THE USA(ミス・アメリカ)』を厚めに代表曲の数々を披露しつつ、あくまでも軸は当時の最新作『CRY LIKE A RAINSTORM, HOWL LIKE THE WIND』。全12曲中9曲も大盤振る舞いし、しかも3曲「Don't Know Much」「I Need You」「All My Life」ではアルバムと同じくアーロン・ネヴィルが登場。素晴らしいデュエットを聴かせてくれるのです。そして、そのセットを綴るリンダの素晴らしい事と言ったら! 当時の彼女は44歳で、シンガーとして脂の乗りきった時期。たっぷりとした声量も、どこまでも伸びる張りも、セクシーな囁き声も、背筋が凍るほどに美しい。そんな歌声を、迫力も機微も見事に再現するミラード録音で味わえるとは……。衝撃が止まらない新発掘ミラード・コレクションの最新作となるリンダ・ロンシュタット編です。美しい曲、美しい歌声、そして美しいサウンド。常々、優れた音楽作品に必要な三要素としてご紹介しておりますが、ここまでの高みで1つのライヴアルバムに結実しようとは。録音に詳しい方にはミラードの初登場音源というだけで衝撃でしょうし、テーパーに興味のない方でも“音の魅力”そのものに心溶かされることでしょう。まさに「オーディエンスだからこその美」に包まれた銘品中の銘品。
Pacific Amphitheatre, Costa Mesa, CA, USA 22nd October 1990 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1 1. Intro 2. It's So Easy 3. When Will I Be Loved? 4. Blue Bayou 5. Tumbling Dice 6. Ooh Baby Baby 7. Just One Look 8. Hurts So Bad 9. I Can't Let Go 10. Still Within The Sound Of My Voice 11. The Moon Is A Harsh Mistress 12. Shattered 13. I Keep It Hid 14. Adios
Disc 2 1. MC Intro 2. Don't Know Much (with Aaron Neville) 3. I Need You (with Aaron Neville) 4. All My Life (with Aaron Neville) 5. Trouble Again 6. Cry Like A Rainstorm 7. You're No Good 8. Back In The USA 9. Poor Poor Pitiful 10. Heatwave