王道ファンタジーの世界に還ってきたDIO、ヨルン・ランデを迎えた幻ラインナップのイングヴェイ、“女性版ロニー”とも呼ばれたDORO。様式メタルきっての歌神が一同に会したビッグなライヴセットが登場です。そんな本作に刻まれているのは「2000年11月25日デンバー公演」。出演3組を完全収録した極上オーディエンス録音です。90年代にはヘヴィ路線をひた走っていたDIOですが、2000年当時はクレイグ・ゴールディを呼び戻してメロディック&ロマンティック路線に回帰。その“MAGICA TOUR”の北米レックでは一部でイングヴェイとDOROをスペシャル・ゲストに迎え、3組による合同ツアーが実現しました。本作は、その現場を真空パックした4枚組なのです。しかも、本作は同じテーパーによる極上録音をさらに細心マスタリングで磨き込んだもの。原音は『ALL WE ARE』として発掘されたものなのですが、そのサウンドはまさに極上。スネアの音色等に(ほのかな)オーディンスらしさも感じるのでサウンドボードと間違えはしませんが、これが80年代だったらサウンドボードとして流通していたのは間違いない。とにかく間近でド直近。ギターにもヴォーカルにも距離感がまるで感じられず、極太な芯が脳みその直接ねじ込まれる。客録では弱みになりがちなベースもくっきりとしており、聴いているとオーディエンス録音ということを忘れてしまう極上ぶりなのです。そして、本作はさらにその原音をブラッシュ・アップ。元々は力強い芯に肉厚な鳴りがコーティングするタイプでしたが、本作はその鳴りを整理。艶やかな美しさはそのままに輪郭や微細部のディテールも克明に感じられ、無音の闇は一層深い。もともとサウンドボード的な録音の可能性を可能な限り引き出した鮮やかサウンドに生まれ変わっているのです。そんなサウンドが3組のフルショウを貫いてしまうから凄い。それでは、ここからは各バンドを個別にご紹介していきましょう。
【DISC 1:メタル回帰した『CALLING THE WILD』時代のDORO】まず一番手に登場するのは“女声のロニー”と称されたドロ・ペッシュ率いるDORO。彼女も90年代はポップロック路線でしたが、力作『CALLING THE WILD』でヘヴィメタルの世界に回帰。同じく原点回帰したDIOに呼応するようにツアーに参加しました。一番手だけに、持ち時間は約31分と短めではあるのですが、これで当日の全曲。そこにメタリックな名曲をギュウ詰めされており、セットはWARLOCKの名作『TRIUMPH AND AGONY』と原点回帰な新作『CALLING THE WILD』の2枚が軸……と言いますか、それ以外は「Burning The Witches」だけ。徹底的にドロのメタル・サイドを矢継ぎ早に叩きつけてくるのです。しかも、その鋼鉄の意志は歌声からもハッキリと感じられる。“女声のロニー”と言われた力強いヴォーカリゼーションとコブシの効いた自在なヴィヴラートが全開。言ってはいけない「雄々しい」という表現がピタリとハマッてしまう見事な歌声を目の目感覚で味わえるでのす。
【DISC 2:ヨルンを迎えた幻のYNGWIE MALMSTEEN】“女声ロニー”に続くのは、“ロニーの後継者”とも目されていたヨルン・ランデが歌うイングヴェイ・マルムスティーン。さまざまシンガーと組んできた彼のキャリアでもヨルンは最強・最適と思われたのですが、残念ながら作品を残すことなくケンカ別れ。そんな幻時代のショウを極上サウンドで体験できてしまうのです。実際、その歌声は超・強力。ヨルンと言えば、ロニー追悼の“HIGH VOLTAGE 2010”でHEAVEN & HELLのシンガーを務め、トニー・アイオミに「ロニーに生き写し」とまで言われたシンガー。リスナー側からするとそこまでロニーに似ているわけではなく、むしろTHE SNAKESの「カヴァデールのソックリさん」なイメージが強かったりするのですが、パワフルで自在な歌いっぷりはロニーに近いのも確かでした。そんなヨルンとイングヴェイの合体は、まさに様式ネオクラの理想郷。約52分のステージでヨルンの歌入りは「Rising Force」「Crucify」「Masquerade」「I’ll See The Light Tonight」の4曲だけ(もったいない……)だったりもするのですが、その1曲1曲が「もしロニーやカヴァデールがイングヴェイが組んでいたら?」を疑似体験させてくれる。もっと場数を踏み、スタジオ作品も作ってくれていたら……そんな20年前の悔しさが甦ってくるショウでもあるのです。
【DISC 3-4:レア曲満載のDIO】そんな“女声版”や“後継者”を従えて堂々のヘッドライナーを務めるのは正真正銘、本物の伝説。ロニー・ジェイムズ・ディオ率いるDIOです。ここまでも極上サウンドではありましたが、さすがメインアクトは音が良い。スネアに感じられたオーディエンスらしさも払拭され、本当にサウンドボードのような「超」付きの極上サウンドに進化しています。そして、そのフルショウこそが凄い。当時は『MAGICA』の通し演奏(「Turn to Stone」「Otherworld」を省略しているので完全再現ではありません)が目玉だったわけですが、本作でもしっかり味わえる。それ以上に美味しいのが他の曲。先日も極上サウンドボード『HOLLYWOOD 2000(Shades 1167)』をご紹介したばかりですが、あの傑作もアンコールは1曲のみで、フルショウではあいませんでした。それに対し、本作は開演から終演までの完全収録。ここで、DIOセットも整理しておきましょう。
再現パートの前(DISC 3:5曲)・HOLY DIVER:Invisible/Stand Up And Shout/Don't Talk To Strangers(★)・DREAM EVIL:Sunset Superman/All The Fools Sailed Away
再現パート(DISC 3)・MAGICA:Magica Theme/Lord Of The Last Day/Fever Dreams/Feed My Head/Eriel/Challis/As Long As It's Not About Love/Losing My Insanity 再現パートの後(DISC 4:8曲+α)・RANBOW:Man On The Silver Mountain(★)/Long Live Rock 'n' Roll(★)
・BLACK SABBATH:Heaven And Hell(★)/The Mob Rules(★)・HOLY DIVER:Holy Diver/Rainbow In The Dark(★)/Gypsy・THE LAST IN LINE:The Last In Line(★)/We Rock(★)※注:「★」印は極上サウンドボード『HOLLYWOOD 2000』で聴けない曲。 ……と、このようになっています。定番をメインに『HOLLYWOOD 2000』で聴けなかった名曲が盛りだくさん。もちろん、貴重な「Sunset Superman」「All The Fools Sailed Away」や「Invisible」「Gypsy」といった復活曲もたっぷりと楽しめます。以上、全3組を3時間15分に渡って完全収録した極上ライヴセットです。晩年にはさすがのロニーにも衰えが隠しきれませんでしたが、本作では全盛期と何ら変わらない美声。さらに幻のヨルン・ランデ&イングヴェイや、録音自体が貴重なDOROまで楽しめる。情念のシンガーが勢揃いした一夜をフル体験できる美味しすぎる4枚組なのです。ロニーを頂点として生まれた様式美HR/HMの理想郷。
Live at Ogden Theatre, Denver, USA 25th November 2000 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE)
Disc 1 (31:01) DORO 1. I Rule The Ruins 2. Burning The Witches 3. White Wedding 4. East Meets West 5. Kiss Me Like A Cobra 6. Metal Tango 7. Burn It Up8. All We Are
Disc 2 (51:28) YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE 1. Intro. 2. Rising Force 3. Crucify 4. Guitar Solo/Paganini/Adagio/Far Beyond The Sun 5. Masquerade 6. Trilogy Suite OP: 5 7. Red House 8. Bach(B1067: Badinerie)/Guitar Solo 9. Band Introduction 10. I'll See The Light Tonight
11. Evil Eye Yngwie Malmsteen - Guitar, Vocals Jorn Lande - Vocal Mats Oloussan - Keyboards Randy Coven - Bass John Macaluso - Drums
DIO Disc 3 (66:14) 1. Sunset Superman 2. Invisible 3. Drums Solo 4. Stand Up And Shout 5. Don't Talk To Strangers 6. All The Fools Sailed Away 7. Magica Theme / Lord Of The Last Day 8. Fever Dreams 9. Feed My Head 10. Eriel 11. Guitar Solo 12. Challis
13. As Long As It's Not About Love 14. Losing My Insanity
Disc 4 (46:44) 1. Holy Diver 2. Heaven And Hell 3. Rainbow In The Dark 4. The Last In Line 5. Man On The Silver Mountain/Long Live Rock 'n' Roll 6. The Mob Rules 7. Gypsy 8. We Rock Ronnie James Dio - Vocals Jimmy Bain - Bass Craig Goldie - Guitars Simon Wright - Drums
Scott Warren - Keyboards