参謀ピート・ウェイを失いつつ、メロディアスな隠れ名盤『MAKING CONTACT』を創り上げた1983年のUFO。その貴重なフルライヴを体験できるオリジナル録音が登場です。そんな本作に記録されているのは「1983年3月27日レスター公演」。その一部始終を収めた絶品オーディエンス録音です。1982年にWASTED結成のためにピートが脱退したUFOは、『MAKING CONTACT』のツアー後に崩壊。5月に予定されていた来日公演も実現せずに終わりました。まずは、その事情を思い起こすためにも、当時のスケジュールからショウのポジションを確かめてみましょう。
1982年《6月:ピート・ウェイ脱退》・10月7日:サンディエゴ公演 1983年・1月18日-2月14日:欧州#1(16公演)《2月14日『MAKING CONTACT』発売》・2月17日-3月17日:欧州#2(23公演)・3月21日-4月15日:英国(25公演)←★ココ★《4月:UFO崩壊》これがピート脱退から解散までの歩み。ピートを失った彼らは、専任ベーシスト不在のまま『MAKING CONTACT』を製作。ビリー・シーンをサポートに迎えてツアーを開始します。しかし、その途中でビリーからポール・グレイにスイッチ。春の英国ツアー中に解散を決断します。ビリーからグレイへの交代したタイミングは“1983年2月”とも言われていますが、ツアー日程が詰まっており、詳細は不明。ともあれ、最後の「英国」ツアーはグレイであり、本作のレスター公演はその7公演目にあたるコンサートでした。そんな崩壊間際の現場で録音された本作は、絶品のオーディエンス録音。実は本作をモノにしたのは、かの名匠“Crazy S.”氏。そのオリジナル・カセットからダイレクトにCD化された銘品なのです。1983年というと“Crazy S.”コレクションでも初期にあたるのですが、すでに録音技術は傑出しており、独特なクリアさがたまらない。同時リリースの『NORWICH 1985』ほどびっくりするダイレクト感ではないものの、透き通った空間を貫く芯は手応えたっぷりでディテールも詳細。鳴りの艶やかさやビビることのない安定感も絶品です。そして、そのサウンドで描かれるのは、ポール・チャップマン時代の総決算となるフルショウ。チャップマン時代と言えば、オフィシャルの発掘ライヴアルバム『REGENERATOR』が有名ですので、比較しながらセットを整理してみましょう。
シェンカー時代(6曲)・PHENOMENON:Rock Bottom(★)/Doctor Doctor(★)・LIGHTS OUT:Love to Love/Too Hot to Handle/Lights Out・OBSESSION:Only You Can Rock Me チャップマン時代(9曲)・NO PLACE TO RUN:No Place to Run/Mystery Train
・THE WILD, THE WILLING AND THE INNOCENT:Couldn't Get It Right(★)/Long Gone・MECHANIX:We Belong to the Night/Let It Rain・MAKING CONTACT:When It's Time to Rock(★)/Blinded by a Lie(★)/Diesel in the Dust(★)
※注:「★」印は公式『REGENERATOR』でも聴けない曲。 ……と、このようになっています。『REGENERATOR』は1つ前の“MECHANIX TOUR”なのでセットが異なるのも当然で、本作にはニール・カーター色が強く出た『MAKING CONTACT』ナンバーもたっぷり。その他のレパートリーにしても貴重。後のUFOはあまりチャップマン時代の曲をやらないせいもあり、「No Place to Run」「Let It Rain」「Couldn't Get It Right」「When It's Time to Rock」「Diesel in the Dust」と、このツアーが最後となったレパートリーが盛りだくさんなのです。そんなセットを綴るパフォーマンスが素晴らしいのなんの。マイケル・シェンカーのような泣き泣きのメロディが溢れ出すわけではありませんが、フィル・モグのブリティッシュ・ヴォイスは脂が乗りきっており、それがグルーヴィでキャッチーな80年代ナンバーに映える映える。実際、英国でもっともチャートアクションの良かったスタジオ作は『MECHANIX』の全英8位であり、唯一のシルバー・ディスクを獲得したのは『NO PLACE TO RUN』でした。そうした英国人好みの名盤レパートリーを次々と繰り出すライヴは非常に熱いのです。そして、『MAKING CONTACT』。ニール・カーターというとゲイリー・ムーアの片腕的なイメージですが、彼のセンスが最も反映された名盤であり、メロディアスに洗練されたサウンドはポップ化の一歩手前で踏ん張りつつ、フィルの叙情感をこの上なく醸し出してくれる。その魅力はステージでも健在で、他のどの時期とも違う美しいアクセントになっているのです。隠れ名盤を生み出しつつ、崩壊への道を辿ってしまった1983年のUFO。その後、幾度となく再始動と再結成を繰り返すわけですが、結成以来の流れはここで一度絶たれました。そんな崩壊直前ながら……いえ、そんな時代だからこその美味しいレア曲満載なフルショウを名手サウンドで楽しめるライヴアルバムです。コレクションとしても貴重ではありますが、何よりも80年代UFOが素晴らしい。
Live at De Montfort Hall, Leicester, UK 27th March 1983 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(from Original Masters)
Disc 1(43:42) 1. Intro 2. When It's Time to Rock 3. Blinded by a Lie 4. We Belong to the Night 5. Let It Rain 6. No Place to Run 7. Only You Can Rock Me 8. Love to Love 9. Couldn't Get It Right
Disc 2(58:00) 1.Long Gone 2. Diesel in the Dust 3. Too Hot to Handle 4. Lights Out 5. Mystery Train 6. Rock Bottom 7. Doctor Doctor Phil Mogg - vocals Paul Chapman - guitars, bass Neil Carter - keyboards, bass, backing vocals Andy Parker - drums Paul Gray - Bass