ミッジ・ユーロを迎えた『VIENNA』でブレイクを果たした1980年のULTRAVOX。その現場を伝える傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1980円10月4日アボンデール公演」。その一部始終を記録した超極上オーディエンス録音です。本作最大のポイントは極上にも程があるサウンド・クオリティにあるのですが、その前にショウのポジション。このツアーからは名門キニーの大傑作『HAMMERSMITH ODEON 1980』をご紹介したこともありますので、当時のスケジュールからそれぞれの位置関係を確かめておきましょう。
1979年《4月:ミッジ・ユーロ加入》・11月2日:リバプール公演・11月19日-12月30日:北米#1(5公演)1980年・1月4日:サンフランシスコ公演・2月1日:ロンドン公演・2月23日-3月20日:北米#2(38公演)・7月5日:リバプール公演《7月11日『VIENNA』発売》
・8月1日-27日:英国#1(22公演)・9月15日-11月8日:北米#3(15公演)←★ココ★・12月4日-13日:英国#2(9公演) ←『HAMMERSMITH ODEON 1980』 これがミッジ加入から1980年までの歩み。『HAMMERSMITH ODEON 1980』は1980年最後のショウを記録したライヴアルバムだったわけですが、本作はその約2ヶ月前。『VIENNA』を引っさげて全米制覇に乗り出した「北米#3」5公演目にあたるコンサートでした。そんなショウで記録された本作は、まさに驚きの極上サウンド。なにが凄いって、距離感ゼロのダイレクト感と超繊細なディテール。本音を言うと「これが本当にオーディエンス!?」と信じられないくらいです。ギターは引っ掻くようなアタック音も超克明ですし、ベースのグルーヴもぶっとければ、シンセの鳴りにも空気感がない。ヘッドフォンで顕微鏡的に聴き込むとスネアの音色が少しオーディエンスっぽい気もしますが、これくらいの音色ならFM放送でも普通にありますし……。曲間になってやけにリアルな喝采や超リアルな現場ムードや拍手が飛び出し、「確かにオーディエンス録音……なんだな」と戸惑いながらようやく納得する感じ。「80年代にしては」の枕詞も必要なく、現代感覚でも「まるでサウンドボード」と呼ばざるを得ない超極上サウンドなのです。丸っきりサウンドボードな音世界で描かれるショウは、『VIENNA』で切り拓かれた新世界。80年代初期の彼らと言えば、オフィシャルの発掘ライヴアルバム『BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT』も有名ですので、比較しながらセットを整理してみましょう。ジョン・フォックス時代(3曲)・HA!-HA!-HA!:Hiroshima Mon Amour(★)
・SYSTEMS OF ROMANCE:Quiet Men(★)/Slow Motion(★)VIENNA(9曲)・Astradyne/New Europeans/Passing Strangers/Mr. X/Western Promise(★)/Vienna/All Stood Still/Sleepwalk/Private Lives(★)その他(2曲)・Face To Face(★)/Kings Lead Hat(★)
※注:「★」印は『BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT』にない曲。……と、このようになっています。ぶっちゃけた話が『HAMMERSMITH ODEON 1980』と同じセレクトだったりもするのですが、曲順は大きく異なる。キニー録音が前作の「Quiet Men」でスタートしていたのに対し、本作では新曲「Astradyne」で幕開け。その後も『VIENNA』を畳みかけ続け、(同じセレクトでありながら)一層フレッシュな感覚が強調されたショウなのです。そして、そのセットを綴るパフォーマンスにしても然り。大洋を渡ってから6公演目という事もあってか、エンジンは十分に暖まりつつもツアー疲れは一切なし。ミッジのギターのチューニングがところどころ狂っていたりもするのですが、それでもお構いなしに弾き倒す勢いが凄い。もちろん、歌声も力強く、ビリー・カーリーもシンセもキラキラと輝き、リズム隊もタイトにビシビシと決まっている。歴史を振り返ってみると彼らは全米を屈服させるには至らなかったわけですが、その見えない壁に果敢に挑んでいく熱演ぶりがやけに眩しいライヴアルバムでもあるのです。とにもかくにも、ド肝を抜く極上サウンドで開花したばかりのULTRAVOXをフル体験できる。コレに尽きます。80年代のオーディエンス録音にこれほどの音が記録できたのか……そんな畏怖さえも感じさせるライヴアルバムの大傑作。
Live at Ole Man River's, Avondale, LA, USA 4th October 1980 ULTIMATE SOUND (79:30)
1. Warszawa (Intro) 2. Astradyne 3. New Europeans 4. Passing Strangers 5. Quiet Men 6. Face To Face 7. Mr.X 8. Western Promise 9. Vienna 10. Slow Motion 11. Hiroshima Mon Amour 12. All Stood Still 13. Sleepwalk 14. Private Lives 15. Kings Lead Hat 16. Space Oddity (Outro)
Midge Ure - Vocal, Guitar, Keyboards Chris Cross - Bass Warren Cann - Drums, Electronic Percussion Billy Currie - Keyboards, Violin, Viola