『90125』の大ヒットで一躍時代の寵児となった1984年のYES。そんな“90125 TOUR”。その新たなるマスターピースが誕生です。そんな本作に記録されているのは「1984年6月21日ケルン公演」。その全貌を伝える極上オーディエンス録音です。アルバム『90125』とシングル『Owner of a Lonely Heart』は1983年の秋にリリースされて各国のチャートを席巻したわけですが、その勢いを駆ってツアーが開始されたのは年の改まった1984年になってから。まずは、一気に一大全盛を取り戻したワールド・ツアーの全体像からショウのポジションを確かめてみましょう。
1984年・2月28日-5月15日:北米#1(62公演)・6月11日-7月26日:欧州(32公演)←★ココ★・8月9日-10月1日:北米#2(41公演)1985年・1月17日-2月9日:南米(6公演)《11月7日『9012LIVE: THE SOLOS』発売》これが1984年/1985年のYES。特に1984年は1年間で130公演を超える巨大なツアーを実施。これは『サードアルバム』『こわれもの』でブレイクした1971年以来となる大規模なものでした。本作のケルン公演は、そのド真ん中にあたる「欧州」ツアー8公演目にあたるコンサートでした。このツアーは公式盤『9012LIVE: THE SOLOS』にも残されているわけですが、そこで採用されたバルセロナ公演の3回前でもありました。そんなショウで記録された本作は、最近になって発掘された新録音。実のところ、ケルン公演はこれまで記録のないショウだったのですが、本作によって知られざるショウが体験できるようになったのです。しかも、力強くオンな芯が飛び込むド直球録音。鳴りには80年代らしいヴィンテージ感もあるのですが、距離を感じないダイレクト感や細やかなディテールは「FM放送?」と思うほど。スカスカになりがちなスネアも密度タップリならYESの命であるクリス・スクワイアのベース・ランニングもゴリッゴリ。細やかな技を絶え間なく繰り出すトレヴァー・ラビンのギターはピッキング・ニュアンスのレベルです。実のところ、オーディエンス録音として公開されたマスターなので客録だとは思うのですが、聴き進めるうちに「本当にオーディエンス?」と自信がなくなってくる。各人のソロ・コーナーになって観客の話し声が聞こえて「やっぱり客録か」と納得する……そんな次元の録音なのです。そんなダイレクト・サウンドで描かれるのは、中途半端だった公式作『9012LIVE』『9012LIVE: THE SOLOS』を拡張したようなフルショウ。ここでは2つの公式作と比較しながらセットを整理してみましょう。クラシックス(7曲)・サードアルバム:Yours Is No Disgrace(★)/I've Seen All Good People/Starship Trooper
・こわれもの:Long Distance Runaround(★)/Roundabout・危機:And You and I(★)・リレイヤー:Soon その他(8曲+α)・ロンリーハート:Cinema/Leave It/Hold On/Hearts(★)/Changes/Make It Easy/Owner of a Lonely Heart/It Can Happen/City of Love
・ソロ等:Si/Solly's Beard/Whitefish/Amazing Grace ※注:「★」印は『9012LIVE』『9012LIVE: THE SOLOS』でも聴けない曲。……と、このようになっています。“90125 TOUR”に精通された方ならご存じとは思いますが、実は2つの公式作『9012LIVE』『9012LIVE: THE SOLOS』は、併せてもフルショウにはほど遠い 。本作は、そんな両作では聴けないレパートリーも含めてフルショウを楽しめるわけですが、特に美味しいのは70年代の名曲群。「Yours Is No Disgrace」や「Long Distance Runaround」「And You and I」など、ラビンのギターでシャープに生まれ変わった大曲たちを味わえる。しかも、単にアレンジが違うだけではなく、ジョン・アンダーソンの歌声やクリスのベースにしても大成功の風を全身に受け、新しいオーディエンスに対面するフレッシュな勢いが滲んでいるのです。当時、「恐竜」とさえ言われたプログレッシヴ・ロックの代表格でありながら新時代のオーディエンスも魅了した”90125 YES”。単にポップなヒット曲に恵まれただけではなく、大胆な冒険心があったからこそ成功を収め、過去の名曲群にも新たなる生命を吹き込むことができた。そんなフルショウをオーディエンス離れした極上サウンドで体験できる新名盤。
Live at Sporthalle, Koln, Germany 21st June 1984 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1(76:24) 1. Cinema 2. Leave It 3. Yours Is No Disgrace 4. Hold On 5. Hearts 6. I've Seen All Good People 7. Si 8. Solly's Beard 9. Changes 10. And You and I 11. Soon 12. Make It Easy 13. Owner of a Lonely Heart
Disc 2(57:47) 1. It Can Happen 2. Long Distance Runaround 3. Whitefish / Amazing Grace 4. City of Love 5. Starship Trooper 6. Roundabout Jon Anderson - Vocals Trevor Rabin - Guitars Chris Squire - Bass Tony Kaye - Keyboards Alan White - Drums