2014年4月7日~12日に開催された豪華客船ツアー"CRUISE TO THE EDGE 2014"より、U.K.の初日ステージ(9日)を完全収録・演奏最高・音質極上の三拍子揃ったウルトラ・クオリティにてプたタイトルの登場です! 収録音の透明感、パンチ、レンジの広さと深さはもうサウンドボード級と言える録音となっておりますが、中でもベースに関してはまるで目の前で演奏しているかの様な近い音像で捉えられており、ウエットンのファンには堪らない一枚となっています。また今年のU.K.で特徴的なのは、ドラムにヴァージナル・ドナティが再び参加している事でしょう。彼は昨年のCRUISE TO THE EDGE "2013"を最後にバンドを離れたテリーの後任としてU.K.に一時加入していた(※2013年4月19日~27日の北米公演・計6回)人物ですが、大きく話題になったのは2010年のポートノイ脱退に伴うDREAM THEATERの後任ドラマー選考時に、結果的に選ばれたマイク・マンジーニと最終選考を熾烈に競った人物として御記憶の方も多いと思います。エディもそんな彼のドラムを気に入っていた様で、去年2013年7月20日に告知された次回のCRUISE TO THE EDGE 2014(※つまり本作収録の公演)におけるU.K.の予定メンバー発表時では既にドナティの名をアナウンスしており、今回それが告知通りに実現した形となっています。またそれはエディとウエットンを奮起させる重要な要素ともなっており、そのフレッシュなドラム・アプローチにこのオリジナルの2人が随所で熱演している様子が極上の音質で記録されているのです。Disc-1冒頭、ヴァイオリンのノイジーなインプロから立ち上ってくる1曲目は何と「Starless」。ドナティを擁して初めて行われた去年の4月公演でもショウの中盤でプレイしていましたが、これをオープニング・ナンバーに持ってきた事にまず驚かされるでしょう。勿論「Starlessからショウを始めた!」と話題にされる事も計算していた様に読めますが、しかしその本心は現行U.K.の演奏力を、皆がよく知っている人気の難曲でまず確かめて貰いたいという狙いがあったのではないでしょうか。そもそも演奏面に不安があるならまずセレクトしない楽曲ですし、実際これがなかなかの好演奏となっていて、近くて透明感のある「Starless」がいきなり飛び出してくることに冒頭からニンマリされるでしょう。「In The Dead Of Night」はこの日も強いドライヴ感に充ちた演奏で、パンチを伴いながら耳へ伝わってくる演奏音の奥行きと迫力は素晴らしいものがあります。ここではウエットンの大きく伸びる歌唱も魅力で、バリバリと鳴るあのベース音や中間部で絡んでくる抑制の効いたギターなど、その劇的な演奏と音像に耳を奪われること請け合いです。「By The Light Of Day」に移行すると太くて芯のあるウエットンの歌唱力が浮き彫りになりますが、その後ろで微細に鳴るキーボードや細かく動くシンバルといった弱音とのボリューム対比が心憎いほどよく録れておりますので、この様子も是非御注目戴きたいと思います。「Thirty Years」は本録音の実力が如何なく発揮されており、低音から高音だけでなく、弱音から強音に至る幅広い音域の中を音符が飛び交う様子が克明に捉えられています。例えばベースレスで進む序盤では細やかな動きを見せるギターとシンバル・タムの動きがしっかり追えますし、曲想が一転すると同時に入ってくるベース(※3分57秒付近)にはより強いアタック感が一音一音に備わり、その後ろで高らかに歌い始めるキーボードやギターの旋律は高音域の豊かさを見事な音色で伝えており、それらハーモニーが縦横無尽に交差する様子に思わず息を呑む筈です。終曲手前ではウエットンらしい力強いベースラインが際立つ箇所もあり(※7分39秒~54秒付近)、ここも隠れた聴きどころでしょう。Disc-2はショウ後半です。「Time To Kill」では序盤で様々な音色が渾然と動き廻っていますが、それぞれがしっかりした輪郭を伴う音で再生されてゆく解像度の高さに御注目下さい。ここでもドスの効いたベースが大変近い音で聞こえますが、同時にウエットンの力強い熱唱も大きなトピックスとなっており、彼のファンには堪らないシーンとなっています。「Nevermore」はオリジナルの曲の良さが更に進化した名演で、恐らく音楽的にこの日一番の充実度を感じられるシーンでしょう。曲の前半でスポットが当たるピアノとギターの対話は音の連なりが一粒ずつ分かるほど明瞭に捉えられており、終曲前一旦曲想がぼやける印象的なシーンでもその音楽的変化の不思議さを微弱な音まで完璧に記録しております。昨年の日本公演で史上初めてセット入りを果たした難曲「Mental Medication」はさすがに演奏し難そうなシーンが目立ちますが、しかしここで注目したいのはエディのブレの無い旋律を頼りに他の3人が奮闘している点です。他の演奏曲と違って楽曲解釈の対比が各自で克明に浮き出ている点にこそ、この日のこの曲の面白さが隠れています。「The Only Thing She Needs」はドナティの実力がよく出ており、テリー以外にこれだけ楽曲を底辺から華やかに盛り立てられるドラマーはなかなか居ないと実感されるのではないでしょうか。それだけにエディとウエットンも他の曲以上に気持ち良くビートに乗って鮮烈な演奏を連発している様子が多々記録されています。尚、この日は出演バンドの時間が押していた関係で、当初は演奏される予定だった「Caesar's Palace Blues」 と「Forever Until Sunday」が演奏されませんでしが(※11日は演奏されましたが、代わりに「Mental Medication」が外されました)、しかしそうであったが故に微妙に短めの珍しいショウ構成となっており、これもまた本タイトルのユニークなポイントとなっています。テリーが去ってもU.K.はまだ終わっていません。むしろバトンがドナティに渡された事によってバンドの歴史が未知の領域に踏み込みつつある様子がこれを聴けばしっかり伝わってくるでしょう。
Live at Pantheon Theater, MSC Divina, Docked at Cozumel, Mexico 9th April 2014 ULTIMATE SOUND
Disc 1 (39:15) 1. Violin Intro 2. Starless 3. In The Dead Of Night 4. By The Light Of Day 5. Presto Vivace And Reprise 6. Thirty Years Disc 2 (46:15) 1. Alaska 2. Time To Kill 3. Nevermore 4. Mental Medication 5. Carrying No Cross 6. Band Introductions 7. The Only Thing She Needs
John Wetton - Bass, Vocals Eddie Jobson - Keyboards, Violin Virgil Donati - Drums Alex Machacek - Guitar