『IV (SECURITY)』で新たな世界を切り拓いた1982年のピーター・ガブリエル。その現場を伝える傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1982年12月2日シカゴ公演」。その全貌を記録した極上オーディエンス録音です。1982年のピーターと言えば、第1回“WOMAD”を主催し、GENESISの限定再結成“SIX OF THE BEST”も実施。まずは、その辺の事情を理解するためにも、当時のスケジュールから振り返ってみましょう。1982年・7月16日+18日:第1回WOMAD(2公演)《9月6日『PETER GABRIEL IV(SECURITY)』発売》・10月2日:SIX OF THE BEST
・10月30日-12月19日:北米#1(41公演)←★ココ 1983年・2月4日+5日:サンレモ音楽祭《6月6日『PLAYS LIVE』発売》・6月30日-7月9日:欧州#1(8公演)・7月14日-8月17日:北米#2(24公演)・9月4日-10月28日:欧州#2(39公演) これが1982年/1983年のピーター・ガブリエル。“WOMAD”と“SIX OF THE BEST”の合間に『IV (SECURITY)』をリリースし、その約2ヶ月からワールド・ツアーを開始。本作のシカゴ公演は、その序盤である「北米#1」の27公演目にあたるコンサートでした。また、このツアーと言えば公式ライヴアルバム『PLAYS LIVE』こそが象徴ですが、あの伝統盤も「北米#1」の“12月3日-7日”の4公演から生まれたもの。本作はその前日という直近のライヴアルバムでもあるのです。このショウは以前から録音が知られていたのですが、本作は“A COVID-19 QUARANTINE RELEASE!”シリーズとして話題になっている初公開のマスター。ご存じの通り、現在は新型コロナのパンデミックによって世界的に外出規制の嵐が吹き荒れておりますが、在宅隔離生活を極上マスターで乗り切ろうという新発掘なのです(フィル・コリンズの傑作『CHICAGO 1982』も同時リリースとなりますが、これも“A COVID-19 QUARANTINE RELEASE!”シリーズの1つであり、ショウ自体も11日後で同じシカゴ公演という姉妹作です)。実際、そのサウンドはまさに「極上」を画に描いたよう。分類上「オーディエンス録音」と紹介しないわけにもいきませんが、聴いていると種別など忘れるダイレクト感が凄い。曲間のリアルな拍手やドラムの音色にオーディエンスらしさも感じられるのですが、それ以外にはほとんどない。ギターもベースもキーボードも極めて詳細でピーターのヴォーカルにしてもエコー成分が感じられない。えらくタイトで客録離れした名録音なのです。そんなサウンドで描かれるのは『PLAYS LIVE』とも似て非なるフルショウ。前述の通り、公式アルバムの前日ではあるのですが、セットも異なる。ここでは比較しながら整理してみましょう。・CAR(I):Solsbury Hill・SCRATCH(II):On the Air・MELT(III):Not One of Us/Family Snapshot/Intruder/I Don't Remember/Biko・SECURITY(IV):The Rhythm of the Heat/I Have the Touch/The Family and the Fishing Net/Shock the Monkey/
Lay Your Hands on Me(★)/San Jacinto/Kiss of Life(★)・その他:I Go Swimming ※注:「★」印は『PLAYS LIVE』では聴けない曲。……と、このようになっています。初期ソロ4枚からセレクトされつつ、軸となっているのは『MELT(III)』『SECURITY(IV)』の2作で、『SECURITY(IV)』からは「Wallflower」以外の全曲が盛り込まれる大盤振る舞い。特にカリプソやラテン・パーカッションも租借した「Kiss of Life」は『PLAYS LIVE』で聴けないだけでなく、このツアーでしか演奏されていない激レア曲でもあるのです。ワールド・ミュージックへ踏み出しつつ、独自の感性が尖っていたピーターの初期ソロ。『PLAYS LIVE』にも匹敵するショウを極上の現場サウンドでフル体験できてしまうライヴアルバムの大傑作です。本作自体が素晴らしい音楽差品であり、フィル・コリンズと併せ、元GENESISのカリスマ2人が交錯した“1982年の12月”に想いを馳せるのも格別。いかようにも楽しめる銘品。
Live at the U.I.C. Pavilion, Chicago, IL, USA 2nd December 1982 TRULY PERFECT SOUND
Disc 1(58:01) 1. The Rhythm of the Heat 2. I Have the Touch 3. MC 4. Not One of Us 5. MC 6. The Family and the Fishing Net 7. MC 8. Shock the Monkey 9. MC 10. Family Snapshot 11. Intruder 12. MC 13. I Go Swimming
Disc 2(53:50) 1. Lay Your Hands on Me 2. Solsbury Hill 3. Band Introduction 4. I Don't Remember 5. San Jacinto 6. On the Air 7. Kiss of Life 8. Biko Peter Gabriel - Vocals, Keyboards David Rhodes - Guitar, Backing Vocals Larry Fast - Keyboards
Tony Levin - Bass, Stick, Backing Vocals Jerry Marotta - Drums, Percussion, Backing Vocals