2大名盤『永遠の序曲』『暗黒への曳航』がマルチ・プラチナムに輝き、一大全盛を極めていた1978年のKANSAS。ヨーロッパまで進出した現場を伝える傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1978年3月23日パリ公演」。その極上オーディエンス録音です。当時のKANSASはまさに絶頂期。その模様は伝統の大名盤『TWO FOR THE SHOW』ともなっているわけですが、あの素晴らしき“POINT OF KNOW RETURN TOUR”を現場で体験できてしまうライヴアルバムなのです。本作最大のポイントは極上にも程があるクオリティにあるわけですが、ますはショウのポジション。大成功の風を全身に浴びたワールドツアーの全体像から振り返ってみましょう。
1977年《7月『暗黒への曳航』完成》・8月5日-9月4日:北米#1(8公演)《10月11日『暗黒への曳航』発売》・10月21日-12月31日:北米#2a(34公演)1978年・1月1日-23日:北米#2b(11公演)・3月7日-27日:欧州(14公演) ←★ココ★・6月23日-8月26日:北米#3(40公演)《10月『TWO FOR THE SHOW』発売》
これが『暗黒への曳航』から1978年までの歩み。ほとんどが本拠地である北米ツアーでしたが、その合間にヨーロッパへも進出。本作のパリ公演は、そんな「欧州」レッグ12公演目にあたるコンサートでした。当時の大ヒットぶりからすると14公演はやや小ぶりにも思えますが、実はこの時が彼らにとって初の欧州ツアー。かつてフィル・イハートに衝撃を与えたプログレッシヴ・ロックの故郷へやってきた刹那を活写するライヴアルバムなのです。そんなショウで記録された本作は、絶大なダイレクト感が鮮烈。とにかく芯がオンでホール鳴りがない。「少ない」ではなく、ヘッドフォンで耳を澄ませても反響が感じられないのです。現場はあくまで屋内アリーナなのですが、聞こえてくる音からは反響ゼロ&完全無風の野外フェスとしか思えません。そのイメージをさらに強めているのが妙に遠いオーディエンス・ノイズ。曲簡易鳴れば喝采は聞こえるものの、それが不思議なほど遠く、間近演奏音とあまりにも不釣り合い。さらに加えると、鮮度も絶品。今回公開されたのは1stジェネらしく、ダビング痕がほとんどない。そのため、ささやかなヴィブラートのヒダまで瑞々しく、長く長く伸びた長音の消えゆく端までキレイに残されている。音色的にサウンドボードと間違えるタイプでもないのですが、鮮やかさと細やかさ、そして直球感はそんじょそこらのサウンドボードよりも美しく感じる美録音なのです。その美音で描かれるのは、まさに『TWO FOR THE SHOW』の現場体験とも言うべきショウ。ここでは伝統盤と比較しながらセットを整理してみましょう。・ファーストアルバム:Belexes(★)・ソング・フォー・アメリカ:Down The Road(★)・永遠の序曲:Carry On My Wayward Son/Cheyenne Anthem(★)/Miracles Out Of Nowhere(★)/Magnum Opus/Howling At The Moon
・暗黒への曳航:Point Of No Return/Paradox/Closet Chronicles/Dust In The Wind/Portrait (He Knew)/Sparks Of The Tempest(★)・その他:メドレー(Mysteries & Mayhem/Lamplight Symphony/The Wall)※注:「★」印は公式『TWO FOR THE SHOW(のオリジナル盤)』では聴けない曲。……と、このようになっています。1978年の『TWO FOR THE SHOW』オリジナル版では聴けないレパートリーが5曲も山盛り。『TWO FOR THE SHOW』自体も2008年の30周年盤で2時間半に拡大されていますが、有り難いものの正直膨大すぎて「実際のコンサートを再現」とも違っていました。それに対し、本作は正真正銘の1回の通しコンサート。自然な流れも、1曲1曲を積み重ねていくことで醸成されていく現場の熱気もリアルなのです。しかも先述した通り、このツアーは彼らにとって初めてのヨーロッパ。本場に殴り込みをかけるような気合いの入った演奏が素晴らしく、壮大な曲想を鉄壁のアンサンブルで描いていくドラマティシズムが凄いのです。1978年と言えば、本場イギリスでのプログレッシヴロック・ムーヴメントは消滅寸前でした。しかし大陸ヨーロッパではまだまだ健在であり、新大陸では今まさにプログレハードが燃え上がろうという時代。そんな刹那にアメリカからヨーロッパへ逆侵攻していったKANSAS。その最先端を極上サウンドで体験できてしまうライヴアルバムの大傑作です。本作はシンプルに優れた音楽アルバムでもありますが、そこに込められた熱演は全盛期KANSASの粋であり、シーンの最先端。それを超極上サウンドで楽しめる2枚組。
Pavillon de Paris, Paris, France 23rd March 1978 PERFECT SOUND
Disc 1(35:53) 1. Carry On My Wayward Son 2. Down The Road 3. Point Of No Return 4. Paradox 5. Closet Chronicles 6. Mysteries & Mayhem/Lamplight Symphony/The Wall
Disc 2(46:12) 1. MC 2. Dust In The Wind 3. Cheyenne Anthem 4. Miracles Out Of Nowhere 5. Portrait (He Knew) 6. Sparks Of The Tempest 7. Belexes 8. Magnum Opus/Howling At The Moon
Phil Ehart - Drums & Percussions Dave Hope - Bass Kerry Livgren - Guitars, Keyboards, Vocals Robby Steinhardt - Violin, Vocals Steve Walsh - Keyboards, Vocals Richard Williams - Guitars