名盤『月に吠える』のデモ・トラック集を超高音質ステレオ・サウンドボード録音で収録。アルバム全曲だけでなく、欧州盤の「Spiders」やシングルB面曲「One Up the 'B' Side」も含め、『月に吠える』セッション全曲の別バージョンが楽しめます。かつて同コンセプトのラフミックス集が出回ったこともありましたが、本作は一部のテイクは重複しつつも、より初期。ミックス違いではなく、ほとんどがテイクも丸ごと違うデモ・トラックです。再生して驚くのは、そのクオリティ。デモというと思いついたリフをテレコで録音した物やトレード経由でぐしゃぐしゃになった物も多いのですが、本作はまったく違う。完全にスタジオのサウンドボード卓から録音されており、しかもダビング痕がまったく見られない。内容が荒っぽいので「オフィシャル級」と呼んで良いのか分かりませんが、それこそ、このままデラックス・エディションのボーナス・ディスクにできるサウンド。幾多のバンドの無数のデモを扱って参りましたが、その中でも間違いなく最上級のクオリティなのです。そして、そのサウンドで描かれる「別バージョンの月に吠える」こそが素晴らしい。初期デモとは言っても練習風景などではなく、全曲ともかなり出来上がっている。「Slow Down」「One Up The "B" Side」「Guitar Practice」の3曲はインストですが、他はすべてオジーの仮歌入り。その「Slow Down」にしても、本番前のカラオケかと思うほどの完成度です。もちろん、すべて曲として楽しめるものの、正規トラックとはかなり違うからこそ面白い。それも「どこが違うのか分からない」と探すレベルではなく、パッと聴いてまるで違う。リズム隊はスタジオ・ライヴのように生々しく、ギターもすぐ目の前で生演奏しているかのよう。オジーの仮歌に至っては歌詞も仮なら声がひっくり返ってもお構いなしです。しかも、製作過程が透けるところが良い。例えば「Bark At The Moon」。ギターソロ前半も入っていない段階ですが、面白いのはエンディング・ソロ。正規版ではジェイクの歴史的なギターソロが炸裂するわけですが、この段階ではあの閃光フレーズを弾いているのはドン・エイリーのシンセ。あのクラシカルなソロ・フレーズはドンが考案し、それをジェイクがなぞって完成した……その裏舞台が超極上サウンドボードで確かめられるのです。「Now You See It (Now You Don’t)」も面白い。イントロでオジーが演奏を静止する様子も生々しいのですが、さらにそのイントロがアルバムと完全に違う。ちょっとプログレッシヴ風でもあるイントロで、思わず、何の曲?となるほど新鮮なアレンジなのです。そんなアルバム全曲+2曲に加え、最後に収録されている「Guitar Practice」も素晴らしい。ジェイクが「Bark At The Moon」のエンディング・ソロを独りで練習しているもの。最初はゆっくりと弾いてフレーズを確認し、少しずつテンポを上げ……ない。二度目にはいきなり本番さながらの閃光テンポであのフレーズを炸裂させているのです。震える弦が目に浮かぶほど生々しい独奏。それこそ「ジェイク版のDee」と呼びたい絶品の名テイクです。80年代ヘヴィ・メタルの頂点『月に吠える』の出発点を最高レベルのサウンドボードで、どうぞお楽しみください!!
Recorded at Ridge Farm Studios, Rusper, England in 1983 STEREO SBD (49:58)
1. Bark At The Moon 2. You're No Different 3. Now You See It (Now You Don't) 4. Rock 'N' Roll Rebel 5. Centre Of Eternity 6. So Tired 7. Slow Down 8. Waiting For Darkness 9. Spiders 10. One Up The "B" Side 11. Guitar Practice (Bark At The Moon)
Ozzy Osbourne - Vocals Jake E. Lee - Guitar Bob Daisley - Bass Tommy Aldridge - Drums Don Airey - Keyboards STEREO SOUNDBOARD RECORDING