リリースしてきた名盤の中でも、リンダ・ロンシュタットの「LAY DOWN BESIDE ME」は面白い運命を辿った一枚です。2006年にリリースされた同レーベルの中でも最初期の一つ。それ以上に特筆すべきは、信じられないほどの音の良さ。「オンな音像」どころか、完全にサウンドボードと呼んで差しさわりない極上音源であり、それでいて録音の鮮度も異様なほどハイレベル。2006年当時、専門誌においても絶賛されましたし、何よりリンダのマニアから高い評価を受けたものです。とはいってもクラシックなロックのアーティストやバンドの音源でなかったこともあり、いくら音質が飛び抜けていたとしても、いわゆる「隠れたベストセラー」的なアイテムでありました。ところが、本タイトルに対する状況が昨年に一変します。今から一年前、現在まで続くマイク・ミラード音源の発掘ラッシュの予告編とも言うべき「LOS ANGELES 1977 MIKE MILLARD 1ST GEN」がリリースされました。当然ミラード録音ということで現在に至るまでベストセラーを続行中なのですが、それのリリース時「ミラード音源をも上回る驚異のオーディエンス」として「LAY DOWN BESIDE ME」を再プッシュしたところ、噂が噂を呼び「隠れたベストセラー」が一気に「大ベストセラー」へと昇格してしまい、挙句の果てにはSold Outになってしまったという。リリースしてきたアイテムの中でも、リリースから10年以上が経過し、このようなパターンでいきなり売り切れたアイテムというのは本作が初めて。皮肉なことに、ミラード音源というメジャーテーパーによる「比較対象」が登場したことで、改めて本音源の凄さが再評価されることになったのです。実際「LOS ANGELES 1977 MIKE MILLARD 1ST GEN」も素晴らしい音質な訳ですが、それよりもさらに近い音像、おまけに今日録音してきたのではないかと思えるほどに透き通った鮮度とクリアネスの高さは確かにミラード音源をも余裕で凌駕してしまった奇跡の録音。言い換えれば70年代の音源にありがちな「ビンテージ感」が皆無ということ。サウンドボード録音の近さとオーディエンス録音の臨場感という両方の長所を見事に兼ね備えた完ぺきなバランス。1976年によくぞここまで究極的なオーディエンス録音が残されていたものだと本当に感心させられます。こうして2006年のリリース当時よりも人気が爆発してしまった「LAY DOWN BESIDE ME」ですが、先の状況から突然のSold Outとなってしまったことで、今や再発の声が止まない大人気アイテムにもなってしまいました。これほど際立った録音であれば、再発した上で常に入手できるスタンダード・アイテムであるべきなのも当然。そこで昨年からの人気盤が皆様のリクエストにお応えして再登場と相成りました。2006年のリリース時においては、あまりの高音質ぶりと安定度から一切のイコライズを加えることもなく、音源をそのままCD化していた訳ですが、あれから15年近い歳月が経過してテクノロジーは進化。今回の再リリースに当たっては、この完璧な録音にも少しだけ調整を加えています。それは当日のステージにおいて硬めな質感で鳴っていたバスドラの音を緩和したこと。特にライブ序盤の曲ではその硬質な鳴りが顕著でしたので、これを抑えることで聞き心地の良さが増しました。それは「That’ll Be The Day」や「Willin’」辺りに顕著で、ヘッドフォンで聞くとなおさら違いが分かるかと。それにしてもこの録音は本当に凄い。リンダの歌声からして完全にサウンドボード・レベルですので、不朽の名作「Desperado」を始めとしたバンドの音数が少ない曲だと彼女の息遣いすら聞こえてしまう。それでいて演奏の輪郭も完ぺきで、ライブ序盤にご愛敬ながらワディ・ワクテルのギターがミストーンを発する場面まで克明に聞こえてしまう。おまけに当日のボストンの空気感まで生々しく伝わってくる。もはやオフィシャルですら再現不可能では?と思えるほど究極的なリンダ絶頂期のライブの記録。マニアはもちろん、すべての音楽ファンのオーディエンス録音の入門としても自信を持って推せるウルトラ・レコーディングが待望の再発!
Live at Boston Music Hall, Boston, MA, USA 6th December 1976 ULTIMATE SOUND*UPGRADE(76:42)
1. Lose Again 2. That'll Be The Day 3. Love Has No Pride 4. Silver Threads And Golden Needles 5. Willin' 6. It Doesn't Matter Anymore 7. When Will I Be Loved 8. Crazy 9. Tattler 10. Lo Siento Mi Vida 11. Love Is A Rose 12. Hasten Down The Wind 13. Tracks Of My Tears 14. Down So Low
15. Someone To Lay Down Beside Me 16. Introductions 17. You're No Good 18. Heart Like A Wheel 19. Desperado 20. Tumbling Dice
Linda Ronstadt - Vocals Dan Dugmore - Guitar, Pedal Steel Guitar, Violin, Banjo Waddy Wachtel - Guitar, Vocals Kenny Edwards - Bass, Vocals, Harp Andrew Gold - Guitar, Vocals Brock Walsh - Keyboards Michael Botts - Drums