音楽的な技術とセンス、そして類い希な美貌を併せ持ち、“女性版BON JOVI”と呼ばれた名バンドVIXEN。そんな彼女たちが“本物”だった事を証明するオリジナル録音が登場です。そんな本作に記録されているのは「1989年2月22日ノッティンガム公演」。その一部始終を伝える極上オーディエンス録音です。彼女たちは黄金時代に公式ライヴ盤を残さなかったわけですが、本作はその乾きを癒すのに絶好の歴史的決定盤なのです。決定盤たる所以はサウンド・クオリティや演奏にあるものの、実はむせ返る時代感も大事な要素のひとつ。その意味を説明するためにも、まずは当時のスケジュールからショウのポジションを確かめてみましょう。1988年《9月『VIXEN』発売》・10月30日-12月16日:北米#1(37公演)1989年・1月3日-2月24日:欧州(37公演)←★ココ★・2月28日-3月2日:日本(3公演)・3月18日:MTV SPRING BREAK・4月5日-8月5日:北米#2(79公演)・8月19日:ミルトンキーンズ公演 これが1988年/1989年のVIXEN。デビュー作『VIXEN』をリリースした彼女たちは全米ツアーを開始。その勢いを駆って欧州→日本へと進出していきました。本作のノッティンガム公演は、そんな「欧州」レッグの35公演目もあたるコンサートでした。この欧州ツアーは彼女たちにとって初めての海外であり初渡英。VIXENを初めて目撃した英国と、大洋を渡って世界の広さを知った彼女たちのパッションが交錯するライヴアルバムなのです。そんな歴史的な現場で記録された本作は、初期VIXENを代表する名録音中の名録音。何しろ、本作を手掛けたのはかの名匠“Crazy S.”氏。80年代中期/後期に極上録音を大量に残した英国の偉人ですが、本作はそのオリジナル・カセットからダイレクトにデジタル化された銘品なのです。実際、そのサウンドは驚異的。とにかく極太でド密着。録音した本人から譲られたオリジナル・マスターだから迷いはしませんが、距離感など微塵もなくガンガン迫ってくる芯と克明なディテールはサウンドボード並……と言いますか、そんじょそこらFM放送も蹴散らす凄まじさ。あまりにもパワフルなためにオープニング「Charmed Life」の序盤でオーバーピークになる瞬間もありますが、それも曲の中盤に差し掛かる頃には改善。その後は「まるでサウンドボード」を地で行くド級のダイレクト・サウンドが存分に楽しめるのです。そんなスーパー・サウンドで描かれるのは、初期だからこその激レア曲もたっぷりのフルショウ。ここでセットを整理しておきましょう。VIXEN(8曲)・Charmed Life/Love Made Me/Cruisin'/Cryin'/Edge Of A Broken Heart/Hell Raisers/I Want You To Rock Me/Give It Away その他(4曲)・未発表曲:Big Brother
・カバー:(Where Do You) Draw the Line/You Ought To Know By Now/Train Kept A Rollin' ……と、このようになっています。『VIXEN』の全12曲(CDボートラ含む)のうち8曲が大盤振る舞いされ、さらに後の『RARE VINTAGE』まで未発表だった「Big Brother」も披露されている。そして、それ以上に初期ムードを醸しているのが数々のカバー曲。バンドのデビュー期はオリジナル曲の認知が低いために有名なカバー曲で会場を盛り上げるのが常道で、そのセレクトがバンドの本質をえぐり出したりもする。後々、オリジナルと差し替えられていくカバーは初期の醍醐味でもあるのです。そして、VIXENの場合はタイニー・ブラッドショー(と言うかヤードバーズ)の「Train Kept A-Rollin’」や日本では八神純子の「パープルタウン」としても有名なレイ・ケネディの「You Ought To Know By Now」。さらにテッド・ニュージェント(作曲はブライアン・アダムス)の「(Where Do You) Draw the Line」を熱演していく。スタンダードだけではない選曲も、オリジナル以上に身体に馴染んだアグレッシヴな演奏も極上サウンドで楽しめるのです。そして、そんなセット以上に熱いのが現場感。言うまでもなく彼女たちは美貌輝く美女ぞろいなわけですが、演奏力も超一流。その実力を目の当たりにした英国キッズの熱狂がえらくリアルなのです。もちろん、最初からそれなりに盛り上がってはいるのですが、それもどこか物見遊山風。ド派手なルックスにお気楽に声援を送っている感じなのですが、1曲また1曲とタイトにビシビシと決めまくる演奏にぶちのめされ、その声援が本気になっていく。そしてパワフルなドラムソロ、テクニカルなベースソロを体験した辺りではすっかり虜になっているのです。分かりやすく言いますと、最初は「姉ちゃん達。いいぞー!」だった声援が「おぉ、こいつらスゲェ」に変わっていく。「I Want You To Rock Me」のコール&レスポンスの凄さと言ったら……。耳の肥えた英国野郎共を力ずくで納得させ、従えさせる。まるでハリウッドの娯楽映画のような見事なカタルシス。そんな現場を極上体験できるライヴアルバムなのです。ド級のサウンド・クオリティだけでも黄金時代VIXENを代表するライヴアルバムですが、さらに初期ならではのレア曲、歴史的なムードもたっぷりとパンパンに詰まった1枚です。
Live at Rock City, Nottingham, UK 22nd February 1989 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) (59:52)
1. Opening S.E.(Foxy Lady) 2. Charmed Life 3. Love Made Me 4. Cruisin' 5. (Where Do You) Draw the Line 6. Cryin' 7. Edge Of A Broken Heart 8. Hell Raisers 9. Roxy Petrucci Drum Solo 10. Share Pedersen Bass Solo 11. I Want You to Rock Me 12. You Ought To Know By Now
13. Give It Away 14. Train Kept A Rollin' 15. Big Brother Janet Gardner - Vocal Jan Kuehnemund - Guitar Share Pedersen - Bass Roxy Petrucci - Drums