20年以上前にリリースされながら音の悪さと随所にみたれた音飛び等、更にはあまりの高額な価格でマニアから失望を受けた音源が今回、海外マニア自ら24ビットデジタル・リマスターを施したノイズレス、ピッチ修正、ダイナミック・レンジも拡大し「これが半世紀も前のオーディエンス録音なのか!!」とファンが驚嘆する奇跡の音源で初めてディスク2枚に記録した決定版が遂に登場しました。1970年のマイルスは、1月から3月3日までニューヨークのスタジオでレコーディングに励んでおり3月6日、7日とニューヨークのフィルモア・イーストに登場しました。その後はスタジオとフィルモア・イースト&ウエストに出演を繰り返し7月7日にセントラル・パークでのライブ、7月18日にはテレビ番組「ディック・キャベット・ショー」に僅か7分間ですが出演し(放送日時は7月22日)元気な姿を全米に知らしめました。更に8月にはイギリスに渡り伝説となっている「ワイト島ミュージックフェスティバル」で約38分間に渡るステージでファンを魅了しました。年末近くになりアメリカに戻ったマイルスは11月17日にはフィラデルフィアのクラブ「エレクトリック・ファクトリ」に出演、その後はワシントンDCの「セラー・ドアー」に出演するという多忙な1年となっていました。しかし、実際11月から12月の間にマイルスは数回のライブを行っていたことが資料のよって把握されてきました。今回、リリースされた音源は12月にニュージャージー、ピーターズバーグでのライブと言われており過去のテープでは経年劣化が激しく耳障りなヒスノイズや「ホンキー・トンク」での音抜け等の致命的欠陥音源でした。しかし、多数のマイルス・リマスターを手掛けている海外有名マニアが元テープをデジタル・クリーニングしノイズも殆ど感じられない音に甦えさせることに成功しました。ディスク1の3曲目に収録されている楽曲に関して中山康樹氏は「ホワット・アイ・セイ」と記述していますが、世界的有名なマイルス研究科家のピーター・ルーシン氏は「Untitled Original 701004」と命名し、またもうひとりのマイルス研究家でもあるエンリコ・マーリン氏は「Untitled #4」と命名しています。実際に本盤の高音質で細部まで聴いてみますと「ホワット・アイ・セイ」とは異なった楽曲とお判り頂けます。最後に公演地においてもピーター・ルーシン氏は多分・・・とし実際にはピーターズバーグではなく11月14日のリンストン大学のアレクサンダーホールでのライブ、11月21日のシラキュース大学のクルース講堂でのライブ、そして11月25日のサフォークコミュニティカレッジのブルックヘブンジム公演のどれかの可能性もあると彼は述べています。圧倒的なマイルスのパフォーマンスに刺激を受けキース・ジャレットを筆頭としたバック・メンバーの過激で危険な演奏こそ1970年ライブの醍醐味と言えるのではないでしょうか。
ライブ・アット・ピーターズバーグ、ニュージャージー December, 1970
Disc 1 1.Directions 2.Honky Tonk 3.Untitled Original 701004 4.Sanctuary 5.It's About That Time Disc 2 1.Funky Tonk 2.Bitches Brew 3.What I Say 4,Theme マイルス・デイビス(tpt) ゲイリー・バーツ(as, ss) キース・ジャレット(keyb) マイケル・ヘンダーソン(b)
ジャック・デジョネット(dr) アイアート・モレイラ(perc)