オジー・オズボーンが「BLIZZARD OF OZZ」で鮮烈なソロ・デビューを飾った1980年秋の全英ツアーより、ツアー6日目に当たるロンドン"ハマースミス・オデオン"公演が、初登場となる高音質オーディエンス・マスターを用い、リリースです!度重なる奇行と過度のアルコール及びドラッグ癖から'79年春にBLACK SABBATHを解雇(彼の自伝によれば4月27日の金曜日だった、との事)されたオジーは茫然自失した状態に陥り、その後数ヶ月間は活動を起す事はありませんでした。同じ頃BLACK SABBATHのマネージメントを担当していたのはドン・アーデンでしたが、その娘シャロンが(父親への反発心もあって)SABBATHを解雇され落ち込んでいたオジーに接近し、ソロ・キャリアのスタートを持ち掛けます。ドン・アーデンもオジーのソロに興味を持ち、JETレコード傘下にあったゲイリー・ムーアとの合流を企画したり、"SON OF SABBATH"というバンドを始めてはどうかと提案しますが、オジーはいずれも前向きにならず、シャロンの主導で新たなオジーのソロ・キャリア準備が進められるようになります。'79年9月になると、(後にSLAUGHTERで活動するベースの)ダナ・ストラムの紹介でランディ・ローズと運命的な出会いを果たし、さらに元RAINBOWのボブ・ディズリーが加わって、'79年11月頃からイギリスでアルバム製作に向けた作曲を始めます。'80年3月には元URIAH HEEPのリー・カースレイクがドラムとして加入し、レコーディングを開始。5月にはアルバム「BLIZZARD OF OZZ」が完成します。彼らは"THE LAW"という仮のバンド名で2,3回のシークレット・ギグを行った後、9月12日のグラスゴー公演から本格的なツアーをスタートします。そしてバンドがステージに馴染んだ6公演目で、本音源に収録された初のロンドン公演を迎えたのでした。この当時のオジーのオーディエンス録音と言えば、クレイジーな程に盛り上がる会場の熱気を反映し、大抵の場合で入力が大きいノイジーなサウンドが支配的。しかし本音源では'80年ツアー音源でも間違いなく上位と断言できる、非常に安定した録音が実現しています。オープニングの「I Don't Know」から優れた見通しに加えて、割れや歪みがあまり気にならない聴き易いサウンドでライヴを楽しめるのは、ファンにとって嬉しいの一言。ベースはやや引っ込み加減にも感じますが、オジーのヴォーカルとランディのギターは明瞭な輪郭で聴き取れます。リーとボブのリズムは飛び抜けた派手さこそないものの、ランディのクラシカルな色合いを損なう事無く支えており、アルバム「BLIZZARD OF OZZ」のサウンドをライヴのステージ上でしっかりと再現しています。この'80年だけの演奏となった「Looking At You, Looking At Me」では、ランディの流れるようなソロを包むような観客の拍手がライヴ・テープならではの味わいを湛えます。観客とステージが一体となった臨場感は「Crazy Train」でも存分に味わえ、特に同曲のイントロで聴ける手拍子の広がりは、オーディエンス録音の良さを実感させます。初のロンドン公演とあってオジー、ランディともにモチベーションが高く、彼らのエネルギッシュなプレイはライヴの随所で光るものを感じさせます。ランディのソロはすでに各曲でオンリーワンの魅力を放っており、ワイルドでありながら構築美のある「Crazy Train」のプレイ、「Goodbye To Romance」の細やかで聴き手の心に染み入るトーンなど、いずれも素晴らしいの一言です。オジーはランディを得た事で「もう一度やってやる」という野心のようなものを感じさせ、「Crazy Train」や「No Bone Movies」ではパワフルな歌を聴かせてくれます。両者のエネルギーがぶつかる「Mr. Crowley」は間違いなくライヴのハイライト。オジーの耳につく印象的な声とランディの美しいギターソロの対比は非常に色鮮やかです。トミー・アルドリッジとルディ・サーゾを迎えた、翌年以降の爆発するようなバンド・サウンドではありませんが、この時期ならではのしっとりとした湿り気すら感じるヨーロピアン・テイストの強い演奏は、公式ライヴ「TRIBUTE」等を聴き込んだ人ほど興味深いはずです(続く「Revelation (Mother Earth)」では曲頭にテープチェンジの欠落が見られたため、同日の別ソースで補填しています)。SABBATHナンバーの「Iron Man」ではオーディエンスのリアクションが殊のほか大きく、当時のイギリスのファンが持つ"SABBATH=オジー"のイメージが伝わります。メドレー展開する「Children Of The Grave」ではソロの組み立てが'81年と異なっており、ここも聴き所でしょう。ショウを締めくくる「Steal Away (The Night)」に「Paranoid」までバンドのエネルギー全く衰えません。終演後の鳴り止まない拍手と歓声が、オジーの帰還を歓迎するファンの気持ちを雄弁に物語っています!この'80年イギリスツアーでのロンドン"ハマースミス・オデオン"公演は、本音源の9月20日に加えて、昨年「NIGHT OF BLIZZARD」(Shades)としてリリースされた10月26日の、合計2公演が行われています。1ヶ月間のツアーを経て、より熟れたバンドアンサンブルを聴かせた後者に対し、本音源は始まったばかりのバンドならではの勢いと初期ゆえの手探り感が共存しており、互いの演奏を比較しても面白いです。ショウの全編で約66分間という演奏はアメリカツアー以降と較べて短めですが、本録音はアンコールの「Paranoid」まで聴き手に濃い密度でライヴを堪能させてくれます。オジーの'80年ライヴはまだまだ不明な点が多いですが、本作は当時のライヴを明らかにする重要な一本となるでしょう。
Live at Hammersmith Odeon, London, UK 20th September 1980 TRULY AMAZING SOUND
1. Carl Orff: Carmina Burana 2. I Don't Know 3. Looking At You, Looking At Me 4. Crazy Train 5. Goodbye To Romance 6. No Bone Movies 7. Mr. Crowley 8. Suicide Solution 9. Guitar Solo/Suicide Solution(Reprise) 10. Drum Solo 11. Revelation (Mother Earth)
12. Iron Man 13. Children Of The Grave 14. Steal Away (The Night) 15. Paranoid Ozzy Osbourne - Vocal Randy Rhoads - Guitar Bob Daisley - Bass Lee Kerslake - Drums Lindsey Bridgewater - Keyboards