1996年8月最初の二週間、オアシスは栄光の中にいました。あのネブワースと始めとした一連の野外コンサートが行われたのです。もちろんネブワースが「this is history!」なレジェンダリーなギグなのは言うまでもありませんが、前後に行われた野外マンモス・コンサートもまた素晴らしい名演揃いでした。ネブワースのようにラジオ放送が実現した訳でも、あるいはプロショット映像が存在する訳でもないので見過ごされがちなのですが、マニアであれば一聴の価値ある素晴らしい一日が8月7日のストックホルム。その日付を見れば解るように、ネブワースの前に行われたビッグ・コンサートがこのストックホルムだったのです。その模様はオーディエンス録音にて記録されており、世紀の大イベントを目前に控え、グループが準備万端かつ絶好調なステージを見せつけてくれた一日でもある。実際、ギャラガー兄弟のテンションは異様なほど高く、特にリアムは曲間でやたらと喋っており、盛り上がりすぎて一人で絶叫する場面もちらほら。ネブワース、中でも二日目のような収録や放送の予定も入っていないせいか、その時よりもテンションが高く、リアムが自由奔放に歌いまくっている姿が今となっては眩しいほど。これほどまでワイルドに歌い上げているにもかかわらず、リアムの声が最後まで絶好調というのも素晴らしい。ネブワースと違って連続公演のスケジュールでなかったことも吉と出たのでしょう。そんな飛ばしまくりの弟を横に、ノエルも相当にハイテンション。リアムほどではないにせよ、彼も曲間のMCを随所で叫んでいる。この酔いしれるような熱狂から一か月もしない内にシカゴで全ての曲を自分が歌わなければならない羽目になるとは。1996年夏の名演を捉えたオーディエンス録音ですが、音像もそこそこ近くに録れている。それよりも大きな規模の野外コンサート特有な音像の揺れがもたらす不安定さがいかんともしがたく、ライブ前半ではそれが顕著だったのが惜しまれます。しかし英語圏外でのショーだったことが幸いし、オアシスのコンサートにありがちな観客の大合唱が控えめで演奏をふさいでしまうような環境ではなかった。おかげでオアシス絶頂期のオーディエンス録音としては驚くほどに聞きやすいのです。その代わり「Morning Glory」など、テンポの速い曲が始まると手拍子が巻き起こるのですが、これも大抵は曲の一番が終わる前に収まってくれるのがこれまた不幸中の幸い。先にも言ったように音が時として風に流されてしまう不安定さは惜しまれますが、それ以外の場面になると演奏が意外なほど大きく捉えられており、例えば「My Big Mouth」や「It's Gettin' Better (Man!!)」(この曲のエンディングで電池交換によるカットが入ります)などはここで初めて聞かされる新曲であったことから手拍子もあっという間に止んでしまい(苦笑)それでいて音像もかなり安定したオンな度合いから聞きやすい。おまけにこの曲が終わった後のリアムのテンションがキレッキレ。このように安定度に欠ける個所のあるオーディエンス録音ではありますが、全体的には十分に楽しめる貴重な音源だと言えるでしょう。それに何よりも演奏が抜群に素晴らしい。シカゴから数週間前、これほどまで栄光に満ち溢れたショーを行っていた資料としても価値は十分。
Sjohistoriska Museet, Stockholm, Sweden 7th August 1996 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND
Disc 1 (52:24) 01. The Swamp Song 02. Columbia 03. Acquiesce 04. Supersonic 05. Hello 06. Some Might Say 07. Roll With It 08. Slide Away 09. Morning Glory 10. Round Are Way / Up In The Sky 11. Cigarettes & Alcohol 12. applause
Disc 2 (60:55) 01. Applause 02. Whatever 03. Cast No Shadow 04. Wonderwall 05. The Masterplan 06. Don't Look Back In Anger 07. My Big Mouth 08. It's Gettin' Better (Man!!) 09. Live Forever 10. Encore Break 11. Champagne Supernova 12. I Am The Walrus