ギター界……いえ、ロック史に巨大な足跡を残した偉人エディ・ヴァン・ヘイレン。そんな彼の生涯最後のステージを永久保存するサウンドボード・アルバムが登場です。そんな本作に刻まれているのは「2015年10月4日ロサンゼルス公演」。そのALDサウンドボード録音です。「ALDサウンドボード」なる言葉が聞き慣れない方もいらっしゃるかも知れませんが、まずはショウのポジションから。VAN HALEN最後の活動はデヴィッド・リー・ロスとの再結成だったわけですが、それも9年間に及ぶ一時代でした。もちろん、私たちにとっては遺作『TOKYO DOME LIVE IN CONCERT』にもなった来日公演こそが思い出深いわけですが、それも含め、まずは活動全景を振り返ってみましょう 2007年《2月2日:デイヴ・リー・ロス復帰を公表》・9月27日-12月30日:北米#1(40公演)2008年・1月22日-2月20日:北米#2(15公演)・4月17日-7月3日:北米#3(22公演)2012年《4年後》《『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』発売》
・1月5日-6月26日:北米#4(53公演)2013年・4月20日:シドニー公演・6月18日-26日:日本(4公演)・7月20日+24日:北米#5(2公演)2015年《2年後》・7月5日-10月4日:北米#6(41公演)←★ココ★ これがVAN HALEN最後の9年間。来日公演は『A DIFFERENT KIND OF
TRUTH』に伴うワールドツアーの一環でしたが、その後に2年間のオフを挟んだ2015年にもツアーが実施。その千秋楽であったロサンゼルス公演がエディ最後のステージだったわけです。そのラスト・ショウは、奇跡的にもALDサウンドボードで残されました。ALD(Assistive Listening Device)とは、ライヴや講演スピーチ等で聞き取りづらい音をハッキリ届けるためのライン音声。特にコンサート会場では聴覚障害の方のために設置されており、そうした設備のある会場ではイヤホンからサウンドボード音声が録音できるのです。そして、本作の現場となった“ハリウッド・ボウル”もそうしたALD設備のある会場。文字通り、距離ゼロ完全ド密着なサウンドボード音声で記録されたのです。そんな本作は、まさにエディのギターと一体化できるシンクロ率120%の銘品。元来、ALSサウンドボードは現場で聴くことを想定しており、臨場感やコンサートの雰囲気を再現する意図は皆無(実際に臨場しているのですから当然です)でして、ただひたすら生演奏が芯も丸出しに流れ出す。その空間ゼロ感覚は密着を超えて楽器と脳が完全シンクロし、ドラムは皮の跳ね返り感まで肌感覚ならヴォーカルはマイクの編み目を通る呼気の流れまで超リアル。もちろん、ギターやベースは振動する弦が脳裏に浮かび、頭そのものがPA再生機になったような没入感に襲われるのです。しかも、本作はその最高峰となるもの。このALD音源はエディの訃報と共に全世界を震撼させているわけですが、その現場用サウンドはIEMsのようでもあり、家庭用オーディオには不向きでもありました。そこで、本作は細心マスタリングでブラッシュ・アップ。レンジが狭くヌケの良くなかったバランスを整え、グッと突き抜ける爽快感とダイナミズムを両立。あくまでも原音の持つド直結感を最大限にキープしつつ、音楽作品としての聴き応えも追究したライヴアルバムに仕上がっているのです。そんな超一体感サウンドで描かれるのは、感無量のフルショウ。何しろ、隅から隅まで希代の大天才が奏でる最後の生演奏なのですから……。正直なところ、一期一会なノートの連続にはレア曲もへったくれもないのですが、その重みは歴史的でもある。記録の意味でも、セットを整理しておきましょう。・炎の導火線:Runnin' With The Devil/Feel Your Love Tonight(★)/Ice Cream Man/Ain't Talkin' 'Bout Love/You Really Got Me
・伝説の爆撃機:Light Up The Sky(★)/Somebody Get Me A Doctor/Dance The Night Away/Beautiful Girls/Women In Love・暗黒の掟:Romeo Delight/Everybody Wants Some!!・戒厳令:"Dirty Movies"(★)/Unchained・ダイヴァーダウン:Little Guitars(★)
・1984:Drop Dead Legs(★)/I'll Wait/Hot For Teacher/Panama/Jump・ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース:She's The Woman ※:「★」印は公式ライヴアルバム『TOKYO DOME LIVE IN CONCERT』で聴けない曲。……と、このようになっています。ラストツアーには他にめぼしい長尺サウンドボードがないだけに『TOKYO DOME LIVE IN CONCERT』では聴けないレパートリーも気になりますが、それ以上に1曲1曲、1フレーズ1フレーズ、1音1音がメモリアルで記念碑。その重みがダイレクトに脳内で紡がれていくライヴアルバムなのです。ツアー千秋楽だからこその開放感と達成感に満ちたフルショウが駆け抜け、最後はコーラス用マイクから叫ぶエディの「Thank you, very much!!」で幕を閉じる本作。ド密着でありながら大歓声も遠いALDサウンドボードだからこそ、ささやかな一声まで耳元で感じ取れるのです。彼らのデビューから42年間の万感が吹き出す最後の「Thank you」。永久に輝きを失わない本作であなたの胸にも刻み、永遠のヒーローに同じ言葉を贈っていただけたら幸いです。
Live at Hollywood Bowl, Los Angeles, CA, USA 4th October 2015 (ALD)
Disc 1 (57:41) 1. Intro 2. Light Up the Sky 3. Runnin' With the Devil 4. Romeo Delight 5. Everybody Wants Some!! 6. Drop Dead Legs 7. Feel Your Love Tonight 8. Somebody Get Me a Doctor 9. She's the Woman 10. I'll Wait 11. Drum Solo 12. Little Guitars
13. Dance the Night Away (with Smoke on the Water & Jamie's Cryin)
Disc 2 (61:10) 1. Beautiful Girls 2. Women in Love... 3. Hot for Teacher 4. "Dirty Movies" 5. Dave's Rap 6. Ice Cream Man 7. Unchained 8. Ain't Talkin' 'bout Love 9. Guitar Solo (with'Little Guitars, Mean Street, Spanish Fly, Eruption & Cathedral) 10. You Really Got Me
11. Panama 12. Jump David Lee Roth - lead vocals Eddie Van Halen - guitar, backing vocals Wolfgang Van Halen - bass, backing vocals Alex Van Halen -drums,percussion