数か月前に1973年デトロイトの「Recorder 2」が発掘され、「Recorder 1」とカップリングされた集大成「DETROIT 1973」がリリースされたのは記憶に新しいところですが、今度は何とデトロイト二日目の「Recorder 2」がひょっこり登場して世界中のマニアを騒然とさせています。この日は今までショウ終盤を捉えたサウンドボード録音しか存在せず、その全貌は謎に包まれていました。これを「Recorder 1」と称しますが、こちらは「Moby Dick」からの録音でしたので、以前リリースされた「HOUSTON & DENVER 1973: JOHN BONHAM'S MASTER CASSETTES」と同様、ボンゾからの依頼で終盤パートのみカセットでPAアウト録音された公算が大きい音源でした。しかし今回はオーディエンス録音による「Recorder 2」が発掘され、遂に1973年デトロイト二日目の全貌が明らかとなったのです。この貴重な音源はジェネレーションこそ不明とのことですが、45年以上眠っていたとは思えないほど状態が良く、非常にマイルドな質感。初日の二種類の音源と比べると地味な印象を受ける音質ではありますが、それでも新発掘音源としては驚くほど聞きやすい。やや奥行きを感じさせる音像ながら、それでいてロバート・プラントの声はかなり大きなバランスで捉えてくれているのも聞きやすさの秘密。彼の歌声と比べて各人の楽器の音が奥まった印象を受けますが、これもショーが進むにつれて改善。後で詳しく述べますが、この日はとにかく演奏が素晴らしいので、その屋台骨であるジョンジーのベースラインもちゃんと聞こえてくるのがエライ。もっともビンテージなカセット録音らしくヒスノイズが漂っているのですが、元の音質がマイルドなのでそれも嫌味に響かないところがまたいい。実際その音質には一切手を加える必要がないと判断、今回のリリースに際しては音圧を上げた程度であり、イコライズは一切加えませんでした。さらにはこの手の音源にありがちなピッチの狂いが皆無という点にも驚かされます。こうして遂に全貌が明らかになったデトロイト二日目ですが、オープニング「Rock And Roll」はロバートが前日よりも不調である様子が伺えます。それこそシカゴ初日を彷彿させそうなほど。そんなボーカリストとは対照的に楽器隊は前日よりさらに好調で、各人しっかり、丁寧に演奏しようとしている。ジミーが「Rock And~」ギターソロを締めくくる際にいつもと違ったカッティングでまとめているところなどは余裕たっぷり。また「Over The Hills And Far Away」のソロなどは正に丁寧に弾けている感じ。ロバートも「Since I've Been Loving You」や「No Quarter」といった尺が長めの曲で喉が休めたのは明らかで、「The Song Remains The Same」からは本領発揮とばかりに力強く歌ってくれる。こうして全員のエンジンが前回となった中で披露された「Dazed And Confused」はもう最高。ボンゾは当初から煽ったり仕掛けたりとウズウズしていたようで、「San Francisco」パートではハードに攻めてきたかと思えば、ボウイング・セクションが近づくにつれて一転して朴訥とした一打を重々しく叩く。その緩急自在ぶりからして数か月前のヨーロッパを彷彿とさせてくれます。ところがボウイングが終わってバンドが戻るところで珍しいことにプレイヤー三人の息が合わず、聞いていてずっこけてしまうような間が18分辺りで発生。しかしここから三人の奮起ぶりが凄まじい。ボンゾが待ってましたとばかりに煽ると、ジミーも負けじと早弾きで応酬。そんな二人のスリリングすぎる駆け引きをしっかりと支えるジョンジーの音もよく聞こえる。ちなみに21分のところで微弱なカットが生じています。ここまでのスリリングな駆け引きがまた73ヨーロッパに匹敵する見事なものだったのですが、最後の歌パートが終わってからがまた長い。73アメリカで最後がここまで引き延ばされたテイクは他にないはず。明らかにプレイヤー三人が「もう少しやろう」と合図した様子が目に浮かぶような展開で、最後はボンゾが大暴れして30分を超える壮絶な演奏が終了。73アメリカの「Dazed And Confused」セカンド・レグでは間違いなくこの日がベストでしょう。調子を取り戻したプラントが最後まで熱唱してみせる「Stairway To Heaven」も素晴らしい演奏。この曲や「Dazed And~」がPAアウトからのカセットに捉えられなかったのが惜しまれるほど。とはいえ今回のオーディエンス録音はこれらの曲になるといよいよ聞きやすくなってくるので、スリリングな駆け引きのダイナミックさやプラントの熱唱がアリーナに響き渡る様はPAアウトの「Recorder 1」からは到底伝わってこないもの。今回の音源の独特な魅力こそが演奏の迫力をリアルに感じさせてくれるのです。こうしてデトロイト二日目を通して聞いてみれば、プラントがショー序盤で発したMC「昨日はとっても良かったけど、今日はもっと良くなる」一日であったことを痛感させられます。それが今まで出回っていたショウ後半のみの「Recorder 1」からは全く伝わって来なかったということも明らかに。だからこそ前日以上に満足な演奏ができた余裕がなせる業として、最後に「Dancing Days」がこの日に限って特別に披露されたのでしょう。PAアウト録音では演奏序盤のみで終わっていましたが、今回の音源で完全版を聞いてみると、これからロバートが力強く歌い上げる…という手前だったことが解ります。そこで四枚目のディスクにはおなじみ「Recorder 1」を収録しましたが、本曲の欠損部を今回の「Recorder 2」にて補填し、最後まで聞けるよう仕立ててみせました。世界中のマニアの間で話題の新発掘音源をベストの状態で収録はもちろん、「Recorder 1」まで網羅したデトロイト二日目の決定版。何より演奏が抜群に素晴らしい…これは名演!こんなに長く、良質で安定したマスターが47年間眠っていたとは・・・驚きの一枚。
Cobo Hall, Detroit, MI, USA 13th July 1973 ★素晴らしい音質です。
Disc 1 (65:14) 1. Intro 2. Rock And Roll 3. Celebration Day 4. Black Dog 5. Over The Hills And Far Away 6. Misty Mountain Hop 7. Since I've Been Loving You 8. No Quarter 9. The Song Remains The Same 10. The Rain Song
Disc 2 (46:40) 1. MC 2. Dazed And Confused 3. Stairway To Heaven
Disc 3 (57:52) 1. MC 2. Moby Dick ★20:00 - 20:21 SBD補填 3. Heartbreaker 4. Whole Lotta Love 5. Dancing Days
Disc 4 (57:52) ●SBD音源 SOUNDBOARD RECORDING 1. MC 2. Moby Dick 3. Heartbreaker 4. Whole Lotta Love 5. Dancing Days ★1:23 - 最後まで AUD補填