85年の「ビハインド・ザ・サン・アメリカンツアー」セカンド・レグから、マサチューセッツ州ウースター公演を極上のステレオ・サウンドボード録音で完全収録した2CDです。85年ツアーと言えば、クラプトンがほぼアルコール中毒を克服し、精悍な姿で弾き捲ったことが印象に残るツアーでした。この音源は、かつて2010年に当店が直輸入タイトル「HUNGER BURNING」としてリリースしたものですが、当該タイトルはそのクオリティの高さから大好評を博し、早期に完売しました。元はPAアウトのソースで、2010年当時の音像はレンジが狭く、時代を感じさせるようなものでしたので、今回、2020年に相応しく徹底的にレンジを広げて聴きやすくリマスターしてのグレードアップ版のリリースとなります。非常にクリアでサウンド・バランスも良く、ステレオセパレートも文句なし。ジェイミー・オールデイカーのタム回しが右から左に流れるという素晴らしいミックスです。しかもPAアウトにはありがちなカット箇所や曲欠けもなく、完全収録ということで、万人にお奨めできるクオリティです。
【セットリストが変更されたセカンド・レグの魅力】この公演は、アメリカンツアーのセカンド・レグ5公演目に当たっていました。ここでこの年におけるこの公演のポジションを時系列で明らかにしておきましょう。・1985年2月28日~3月15日:イギリスを含むヨーロッパ・ツアー
この間、≪1985年3月1日:アルバム「BEHIND THE SUN」リリース≫・1985年4月9日~5月3日:全米ツアー、ファースト・レッグ ・1985年5月8日:米音楽ライブ番組 Late Night With David Letterman 出演・1985年6月21日~7月27日:全米ツアー、セカンド・レッグ ←★ココ★
・1985年10月5日~10月11日:6度目のジャパン・ツアー・1985年10月14日~11月6日:アラスカ、ロンドンを巡った後に短期ヨーロッパ・ツアー・198512月3日~23日:一応オフ、しかしこの間、バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ、スティング、ゲイリー・ブルッカー、
ダイアー・ストレイツらのコンサートに飛入りし、ステージに立つ 前年にレコーディングが完了し、3月1日にリリースされたアルバム「BEHIND THE SUN」を引っ提げ、このアルバムのプロモーションのために費やした一年でしたが、本公演は最大のマーケット、全米を回ったツアーの最終行程に当たっていました。意欲作をヒットさせるために、クラプトンが特にアメリカを重視して2回のツアーを組んでいたことがお判りいただけるでしょう。全米を、レグを分けて二度訪れたことにより、それぞれのレグが魅力に満ちたものとなっていました。セットリストに変化がついたのです。セカンド・レグではクリームの名曲White Roomを17年ぶりに取り上げたこと、BadgeとLet It Rainをメドレーでプレイしたことが特徴として挙げられます。前者のきっかけとなったのは、5月8日のアメリカのテレビ番組「デヴィッド・レターマン・ショウ」への出演でした。この番組の音楽ディレクターを務めていたポール・シャッファーからの熱望に応え、17年ぶりに番組のハウスバンドと共にWhite Roomをプレイしたのです(このハウスバンドには後にクラプトンをサポートするスティーヴ・ジョーダンがドラムで在籍していました)。この出来に満足したクラプトンがツアー・セカンド・レグからこの曲をセットインさせたという経緯があったのです。当該アルバムからの新曲披露は4曲でした(Same Old Blues、Tangled In Love、She's Waiting、Forever Man)。代表曲の中にあっても聴き劣りせず、いずれも素晴らしい演奏となっています。現在ではもうセットインすることが期待できないナンバーですので、新曲披露に燃えていた当時のクラプトンの心意気までも感じ取っていただけるでしょう。また、セカンドレグとしては、日程的にマーシー・レヴィのフィーチャリング・ナンバーShe Loves Youを最も早く聴くことのできる音源でもあります。マーシーの曲はこのタイミングでSomething Is Wrong With My Babyからこの曲に代わりました。クラプトンは、「僕は一旦ステージを離れるけど、マーシー・レヴィをフィーチャーします。」とアナウンスしていますので、クラプトンのプレイは聴けませんが、スローテンポにアレンジされたこのビートルズナンバーでは、クリス・スティントンのピアノとティム・レンウィックのコード分解のアルペジオプレイだけをバックに切々と歌うマーシーの上手さが際立っています。一方、ショーン・マーフィー(後にリトル・フィートのリードボーカルとして加入)のフィーチャリングナンバーSteppin' Outではクラプトンはステージに居残り、シャープなソロを決めています。こうしたバラエティに富んだセットにおいてもDouble Troubleというマイナーブルースを組んでいるところがクラプトンたる所以で、代表曲、新曲、ブルースと、バランスの取れた、クラプトンの魅力を余すところなく伝えるセットリストだったと言えるでしょう。
【上手さが際立つクラプトンの歌とアグレッシヴなギターソロの波状攻撃】このツアーでのクラプトンは、飛躍的に歌が上手くなったように感じられます。自信に満ち、堂々とした歌いっぷりは、男の色気をも感じさせるものです。どうぞじっくり耳を傾けてください。さらにギターソロがこれまでになくアグレッシヴで、速いパッセージを畳み掛けるパターンが幾度も出てきます。これが非常にスリリング!オープニングではシャープなスライドプレイを決めた2曲に続き、I Shot The Sheriffの後奏のソロで早くも本調子をアピールし、続くSame Old Bluesで一気にテンションを高めています。White Roomのソロでは、常套としてクリーム時代のように後のツアー行程では使用していたワウワウ・ペダルをこの日は使っていないというところが意外でもあり、面白いところです。ワウの効果で聴かせるのではなく、フレーズの妙で聴かせる、そんな感じです。そういう意味ではレアなテイクと言えるでしょう。Tangled In Love、Badge、Let It Rainでは、高速スローハンド奏法が炸裂しています。そんな中にあって、ド・ブルースのDouble Troubleではブラッキーがこれでもかと泣き捲っています。このプレイを聴くと、やはりクラプトンはブルース・ギタリストなのだなと実感します。Laylaの後奏のソロも気合の入った熱いものです。この頃のLaylaのソロはこんなに力を入れて弾いていたんだと実感できるいいテイクになっています。アンコールは2曲。かっこいいとしか言いようがないForever Man、メンバー全員にソロが回されるFurther On Up The Roadまで、エンジン全開で走り切ったクラプトンの姿に清々しさを感じていただけるでしょう。
【この時期だけの一流バックメン】バックメンには、83年ツアーの流れからスタックスの名ベーシスト、ドナルド・ダック・ダンとタルサ・トップスのジェイミー・オールデイカーという、クラプトンの歴代バンドの中でも最強のリズム・セクションと言っていい二人が在籍していた時期でした。どうぞ、この時期のみクラプトンをサポートした故ドナルド・ダック・ダンの弾むベースプレイと、手数が多く、ダイナミックな故ジェイミー・オールデイカーのドラミングと共に、メンバー紹介でクラプトンを紹介するダック・ダンのユニークなコメントもお楽しみください(クラプトンはダック・ダンとは本当にウマが合ったようで、83年に自身のレーベルを立ち上げた際には「ダック・レコード」と名付けたほどでした)。さらには後に「ギルモア・ピンク・フロイド」をサポートするイギリス古参のギタリスト、ティム・レンウィックのプレイが聴ける唯一のツアーでもあります。まったくミストーンのない手堅い彼のプレイも聴きどころとなっています。彼の個性溢れるプレイはI Shot The SheriffとWhite RoomでのオブリガートやBadge、Cocaineのセカンドソロ、Forever Manの締めのソロで聴くことができます。そして忘れてならないのが、現在もクラプトンをサポートしているクリス・スティントンです。冒頭のピアノによるプロローグからピアノはもちろんのこと、オルガン、シンセサイザーと大活躍です。35年前にも二人の絆は固かった。ブラッキー・ストラトの響き渡るトーンとともに、彼らのサポートぶりも聴き込んでいただきたい素晴らしいステージです。
The Centrum, Worcester, MA, USA 26th June 1985 STEREO SBD(UPGRADE)*REMASTER
Disc 1 (48:38) 1. Opening 2. Tulsa Time 3. Motherless Children 4. I Shot The Sheriff 5. Same Old Blues 6. Tangled In Love 7. White Room 8. Steppin' Out 9. Wonderful Tonight
Disc 2 (57:22) 1. She's Waiting 2. She Loves You 3. Badge 4. Let It Rain 5. Double Trouble 6. Cocaine 7. Layla 8. Forever Man 9. Member Introduction 10. Further On Up The Road
Eric Clapton ? guitar / vocals Tim Renwick - guitar Chris Stainton - keyboards Donald 'Duck' Dunn - bass Jamie Oldaker - drums Marcy Levy - backing vocals Shaun Murphy - backing vocals