ヨーロッパ各地で行われた一連のウォームアップを済ませたオアシスは7月に入ると伝説のフィンズベリー・パーク三夜連続公演を行う訳ですが、その前に母国イギリス・エリアで行われたコンサートが7月2日のハル・アリーナ。2002年の大一番フィンズベリー・パークを前に行われた最後のギグがこの日ですので、正に最後の仕上げともいえる重要な一夜となったのです。フィンズベリー・パークの前のギグというだけでもマニアが注目するには十分な価値を持っている歴史的音源となる訳ですが、このコンサートを捉えたオーディエンス録音の聞き心地は素晴らしいものがある。演奏には奥行きというか距離感があり、その点では万人向けなクオリティとまではいかない。しかしマニアなら問題なく楽しめてしまうレベルでもあり、この奥行きのある音像がむしろ聞きやすく感じてしまうのでは。何しろフィンズベリー・パークを直前に控えたギグですので会場の盛り上がりも素晴らしく、リリースされたばかりの「HEATHEN CHEMISTRY」収録曲に対しても熱狂的なまでに合唱が起きている。しかし合唱が演奏を覆いつくすことはなく、奥行きのある音像なのにオアシスの演奏がちゃんと通って聞こえる点がポイント。中でもリアム・ギャラガーの声がイイ感じのバランスで捉えられており、先の大一番を前に彼が絶好調である様がしっかりと伝わってくる。もうリアムの声の調子よさとテンションの高さは相当なもので、見事なまでにフィンズベリー・パークを予見させてくれるというもの。実際にリアムはオープニング「Hello」からして一聴して理解できるレベルでエンジン全開であって、その勢いが「Hung In A Bad Place」で早くもピークを迎えてしまうという凄まじさ。それでいて「you got me!」と叫ぶ場面になるとまだぎこちなさが残っているのがツアー序盤ならでは。その後もほとんどの曲をハイテンションに歌いあげており、つくづく特別な時期であったことを思い知らされます。そんな飛ばしまくる弟に負けじとノエル・ギャラガーも元気いっぱいで、「She's Electric」を始める前のMCの饒舌さ、あるいは「Don't Look Back In Anger」をこれまた一聴して解るほどに上機嫌な様子で歌い、そこからコーラスを観客に嬉々と合唱させている様子も伝わってくる。奔放なリアムに余裕たっぷりなノエルというギャラガー兄弟二人の長所が完全に機能したからこその名演だと呼べるかもしれません。例えば当時の新曲である「Stop Crying Your Heart Out」でリアムが勢い余って歌い損じてしまってもノエルがしっかりフォローして歌いつなぐ。正にこの日のオアシスのエンジン全開ぶりを物語るようなハプニングまで微笑ましい。あのフィンズベリー・パーク直前だからこそのハイパーなステージをマニアに楽しんでいただきたく、同じように絶好調だったベルリンのギグのリリースに打ってつけなCD。この隠れた名演を収めた貴重音源をお見逃しなく!
Live at Hull Arena, Hull, UK 2nd July 2002 TRULY AMAZING SOUND
Disc 1 (47:41) 01. Fuckin In The Bushes 02. Hello 03. The Hindu Times 04. Hung In A Bad Place 05. Go Let It Out 06. Columbia 07. Morning Glory 08. Stop Crying Your Heart Out 09. Little by Little 10. D'You Know What I Mean ?
Disc 2 (51:29) 01. Cigarettes & Alcohol 02. Live Forever 03. Better Man 04. She's Electric 05. Born On A Different Cloud 06. Acquiesce 07. Force Of Nature 08. Don't Look Back In Anger 09. Some Might Say 10. My Generation